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少し前の話になるが、まだ字も書けない幼い子供が、アマゾンの音声アシスタント「アレクサ」にクリスマスプレゼントをお願いし、突然たくさんのおもちゃが送られてくるトラブルがアメリカで発生したという。(2019/12/24放送 テレビ東京系列「Newsモーニングサテライト」)

番組では、プレゼントが大量に送られた様子をSNSにアップした場面が映し出され、現代ならではのちょっとほほえましい様子として伝えられていた。しかし、実際にこのような場面に遭遇したら途方に暮れてしまうだろう。子供がいる家庭では確認コードによる認証を設定するなど、トラブル防止を呼び掛けていると紹介されていた。

日本では子供がスマートスピーカーにクリスマスプレゼントをおねだりしたという話は聞いたことがない。しかし、スマートスピーカーがより普及し、それを通して買い物する機会が増えてきたら、十分起こりえる話だ。そしてスマートスピーカーに限らず、未成年者がネット上の買い物や課金を誤って行った場合、法的にはどうなるのだろう? 今回はそれを考えてみたい。

■未成年者が誤って行った注文は取り消しできる?
子供が知らない間にネット通販等で大量の注文をしてしまったとしても、未成年者がやったことであれば取り消しができるのではないかと考える人は多いだろう。確かに法律上、未成年者が親権者の同意を得ずに行った契約は取り消すことができるとされている。しかし、話はそう単純に終わらないこともある。

子供が知らない間に親のスマートフォンでゲームをして、多額の課金をしてしまった……というトラブルはよくある話だ。

このようなケースで、子供が勝手にやったことだからとすんなり取り消しができるかと思いきや、取り消しの可否をめぐってトラブルとなることがある。例えば子供が自分の年齢を偽っていたときだ。

■成人と偽っての契約はトラブルに発展しやすい
ゲームを始める際、生年月日を入力させられることがある。その際に成人と偽っていたらどうなるだろうか。

法律上、成人として一人で契約ができるかのように装って契約をしたときは、注文等の取り消しはできないとされている。ゲーム内で自らを成人と偽っていた場合「未成年者であることを隠して、成人であると偽って取引をした」として、アプリ提供事業者が取り消しを認めないことがあるのだ。

最終的に取り消しが認められるかどうかは、未成年であることを偽ったかも含め、事案ごとに判断されることになる。

「○○のようなケースでは絶対に取り消しが認められる」といった画一的な処理基準があるわけではないので、トラブルが早期に収束するかどうかは、相手方次第になってしまうので要注意だ。

■トラブルに巻き込まれないために
では、このようなトラブルに巻き込まれないようにするためにはどうすればよいのか? まずは事前に対策を取っておくことが大切だ。

スマートフォンやスマートスピーカーなどの機器には多くの場合、未成年が誤って注文や課金を行わないよう、制限する機能がついている。

たとえばスマートフォンの場合、アップル製品では「ペアレントコントロール」というものがあり、アプリのダウンロードやアプリ内課金をする際には暗証番号を入力するように設定できる。グーグルプレイでもアプリ購入の際は暗証番号を入力する設定に変更しておくなど対策ができる。

今回取り上げたスマートスピーカーの例でいえば、アマゾンの提供するアレクサでは、音声ショッピングの機能を無効化したり、ショッピングのたびに確認コードの入力を求められる設定で対策が可能だ。

今後スマートスピーカーでの取引が増えていけば、未成年者による不正利用の件数も増加するだろう。そうなれば厳格な年齢確認などを行うようになるかもしれないが、年齢を偽って取引をした場合、ケースによっては契約の取り消しは認めないという事業者が出てくるかもしれない。

便利な機能を使いこなすには、トラブルとならないような工夫を事前に検討しておく必要がある。

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