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2021年1月7日に2度目の緊急事態宣言が発令されて、多くの人が外出自粛し、不安な毎日を送っていることでしょう。

私たちが新型コロナと本格的に向き合うようになった2020年2月から1年ほど経ち、ウイルスについて様々なことがわかってきました。

そのことから考えると残念ながら、新型コロナウイルスを日本中から撲滅させること、完全に「終息」させることはできないでしょう。

一方、ある一定の状態に落ち着くという意味の「収束」の状態にすることは可能だと考えます。

新型コロナウイルスの「収束」に明確な基準はありませんが、季節性インフルエンザのように感染者の増減があり、死亡者が増える時期はあるものの、医療崩壊の危険を伴うことがないため緊急事態宣言を出す必要もなく、経済活動を大きく抑制することなく日常生活を送ることができる状態とします。

筆者は新宿で開業医をしています。新宿では2020年4月の緊急事態宣言から、近隣のオフィスや飲食店でリモートワークや時短営業が行われ、現在うちの病院でも患者数がコロナ前の5割ほどに落ち込んでいます。

果たして、新型コロナは、いつ収束して、いつになったら元の生活に戻ることができるのでしょうか。開業医という立場から、このコロナが収束する時期について考えたいと思います。

■2021年春で収束に向かうと予想
現段階において、テレビなどのマスメディアで、いつ新型コロナが収束するのか議論されることはほとんどありません。

緊急事態宣言が出ているときは、テレビなどのマスメディアも自粛を促すためにも、悲観的なシナリオを中心に報道しがち、報道せざるを得ないということもあるかもしれせんが、連日恐怖を感じる報道ばかりで、家に閉じ籠っている多くの人のために、もう少し楽観的なシナリオも含め、多様な意見も報道されてもよいでしょう。

今後の見通しについては専門家の間でも様々な意見があり、異なる意見を否定するつもりはありませんが、私は、日本国内の新型コロナウイルスは、「2021年春で収束に向かう」と予想しています。その理由は大きく2つあります。

(1)流行の時期がインフルエンザと類似していると考えられるから
インフルエンザウイルスや、新型コロナウイルスではない従来のコロナは毎年冬の時期に大流行を起こします。

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(引用:インフルエンザの流行状況(東京都 2020-2021年シーズン)1 定点医療機関当たり患者報告数  2021年1月10日(第1週)まで 東京都感染症情報センター)

毎年1月中旬から2月上旬くらいまでにピークを迎え、急に下がっていくという特徴があります。現場感覚でいえば、3月になり暖かくなると、インフルエンザだけでなく発熱患者はかなり減ってきます。

例年、1月は12月、2月よりも平均気温が低く、1月下旬から2月上旬にかけて最も気温が下がります。

インフルエンザのピークと概ね一致しており、平均気温の低下とインフルエンザの流行には相関関係があるといえます。

従来のコロナウイルスに関してのデータはありませんが、新型コロナウイルスにおいても、1月中旬から2月中旬頃にかけてピークを迎える可能性が高いです。

今の段階でインフルエンザと同じと断言できるのか?と考える人も多いと思いますが、少なくとも12月から感染者が増え始めた状況は、新型コロナウイルスにインフルエンザと同じ傾向がある可能性を示しています。

インフルエンザや従来のコロナと同じように、気温や湿度などの気候要因により2月末までには実効再生産数(1人の感染者が直接感染させる平均人数)は下がるはずです。

2021年2月末からワクチン接種が始まり、夏から秋にかけて多くの人にワクチンが行き渡ることにより、実効再生産数が下がるだけでなく、感染してしまった場合でも重症化率も下がることにより重症者数も減り、医療崩壊を起こすレベルまでの重症者が増えることがなくなることでしょう。

(2)ワクチンの接種が進むと考えられるから
2つめに、ワクチンの接種が開始される見通しであることです。ただ、新たに問題になっているのが変異種の存在です。変異してしまったらせっかく作ったワクチンも無駄になるのではないか?と不安を感じている人もいると思います。しかし、変異種に対してワクチンの効果が劣ったとしても効果がゼロになるわけではないといわれています(参考・コロナ変異種にも効果か ワクチンで抗体獲得(米ファイザー) 時事ドットコムニュース 2021/01/09)。

インフルエンザウイルスも変異を繰り返していますが、インフルエンザワクチンと流行している型が完全には一致していなくても、一定の効果を発揮しています。

また、多くの人がワクチンを打つことを拒否してしまえば、ワクチンは普及しないのではないか?とワクチンの普及を疑問視する声もあります。

たしかに、作られたばかりのワクチンですから、効果や副作用については時間の経過と共にわかってくることもあるでしょうが、アメリカやヨーロッパなどで先行した何千万人が打った後に打つことになり、その分データが集まった状況で接種することができます。

インフルエンザ予防接種は、3000万人分前後製造されて、2500万人分前後が実際に使用されています。

インフルエンザワクチンは、1回あたり4000円前後の費用(自治体により補助があることも)がかかりますが、新型コロナワクチンは、無料であることも接種の追い風になります。

日本人は同調圧力が強いといわれる国民性もあり、大人数で集まるときに、自分だけワクチンを接種していなかったら参加しにくい、万が一ワクチン接種していない自分からクラスターを発生させてしまったら申し訳ないので、本当はあまり打ちたくないけど接種せざるを得ないという心理もあるかもしれません。

もし、ワクチンを打った人であれば、大人数で集まってもかまわないという方針になれば、希望者もより増えていくことでしょう。

アメリカなどでも、いかに多くの人にワクチン接種してもらえばよいのか、試行錯誤しています。

日本でもテレビや新聞などのマスコミがワクチンの安全性をどのように報道するのか、気になるところです。

少なくとも、重症化率の高い、致死率の高い基礎疾患のある高齢者は、医療機関で働く医療従事者、介護施設で働く介護従事者の多くは接種することになるでしょう。

■2021年春以降のコロナ対応の予測
では2021年春に患者数が減った後、新型コロナはどのような流れで収束するのかも、予想しておきましょう。

そのカギとなる一つが、2類相当以上から5類相当への引き下げです。感染症法では、感染症を最も危険度の高い1類から相対的に危険度の低い5類までに分類しています。1類はエボラ出血熱やペスト、2類は結核、SARS、MERS、5類は季節性インフルエンザです。現在、新型コロナは2類感染症相当以上の指定感染症となっています。

日本には世界で最も多い160万の病床がありますが、新型コロナに対応できる病床数は3万、全体の2%ほどしかありません。海外の国々では、日本の数十倍の感染者数がいながら、医療崩壊を起こしていません。

当然、そのような海外の国々でも、日本と同じように感染症の分類で2類相当以上のような厳しい措置をしていません。

2021年の夏から秋にかけてワクチンが国民の多数に接種されたことを理由に、現在の2類相当以上から5類相当に引き下げる可能性があります。

賛否両論がありますが、5類相当に引き下げをおこなうことにより、高度な医療資源のある大病院だけでなく、中小病院も新型コロナ患者を受け入れやすくなります。

とはいっても、中小病院でも新型コロナ患者で適切な医療を受けることができるのか?不安を感じる人もいるでしょう。

医療関係者であれば誰でも知っていることですが、インフルエンザウイルスや肺炎球菌などの肺炎重症患者は、大病院の感染症や呼吸器内科が専門の医師だけが治療するのではなく、中小病院の感染症や呼吸器内科が専門でない内科の医師も問題なく治療していました。実際、肺炎患者の多くが中小病院で亡くなってきました。

発生から1年以上経過して、新型コロナウイルスの治療法もわかってきており、大病院の専門の医師がインターネット上で情報発信しており、専門でない内科の医師にも共有されつつあります。

夏や秋であれば、感染症が流行しやすい冬よりも病床に余裕があり、中小病院でも受け入れやすいでしょう。

仮に、5類相当に引き下げなかったとしても、2回目の緊急事態宣言を発令せざるを得なくなってしまったことを教訓に、民間病院への受け入れ要請、コロナ専用病院を新たに作るなどしてコロナに対応できる病床を増やし、医療崩壊しない体制を構築して、2021年~2022年の冬に備えることになることでしょう。

また例年、インフルエンザ予防接種は10月から始まり、11月末くらいまでに接種することが推奨されていますが、新型コロナウイルスも同じように、流行が始まる前に毎年新型コロナ予防接種がおこなわれるに違いありません。

■成功体験が現状の対策のままで問題ないと錯覚させてしまった
それにしても政府は2020年~2021年冬にかけての重症者の増加、それに伴う医療崩壊を予見していなかったのでしょうか?

経済を強制的に止める緊急事態宣言をできるだけ出したくなかったでしょうし、分科会のメンバーも冬の気候要因による患者数の増加、それに伴う医療崩壊を想定できなかったとは思えません。

政府は、2020年4月の緊急事態宣言よる一種の成功体験が、現状の対策のままで問題ない、2020年冬を乗り越えることができると錯覚させてしまったのかもしれません。

詳しい事情はわかりかねますが、なぜ2回目の緊急事態宣言が発令されてしまうまでの状況になってしまったのか、今後検証されることになるでしょう。

2021年1月、2月は重症患者が増え、自粛を続けなくてはいけない状況が続くでしょうが、新型コロナをどうにか乗り越えていきましょう。

※本稿は個人的な予想および意見であり、クリニック等とは関係なく、いかなる損害が生じても、責任は負いかねます。

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■著書『新型コロナを乗り越える』
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蓮池林太郎 医師・新宿駅前クリニック院長

【プロフィール】
1981年生まれ。医師、作家。帝京大学医学部卒業。病院勤務を経て、2009年新宿駅前クリニックを開設。医療法人社団SEC理事長、新宿駅前クリニック院長。医者としてのキャリアとインターネット分野の知識を掛け合わせ、ホームページ、ウェブメディア、書籍などを通じて、クリニック開業、病院選び、生き方、婚活など独自の視点から情報発信を行っている。

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