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コロナ禍に突入してすでに1年が経過し、顧客先に訪問できない状況が続く。否応なしに、営業でリモートツールを活用せざるを得なくなった営業マンも多いだろう。

リモート営業のメリットを最大限に活かしつつ、デメリットによるダメージを最小限にとどめるには、リモートでのやり取りに向いていること、不向きなことを把握しておく必要がある。それぞれどんな場面か?

「リモート営業の極意 外資系トップセールスが教える"会わなくてもバンバン売る"技術(財津優 著 WAVE出版) 」より紹介する。

■リモート営業に向かない場面とは?
リモート営業で最大限の効果を発揮するためには、できるだけ訪問営業に近づけることが大切です。

訪問営業でおこなっていた行動の大部分は、リモート営業にそのまま置き換えることが可能だと思いますが、残念ながら向いていないケースも存在します。私が考えるリモート営業に向いていないケースは以下になります。

・商品の機能やサービスの内容が複雑
・謝罪をするとき

まずは「商品の機能やサービスの内容が複雑」な場合から考えてみましょう。私は以前、半導体業界で技術職に就いておりましたので、電機メーカーの技術者さんとの面談をシチュエーションとして説明させていただきます。

対面営業のシーンを想像してみてください。回路図を見ながら、「この部分は何ボルト」だとか、「このスペースに合う製品はこれだ」とか、非常に細かい話を展開します。

複雑な回路図についての打ち合わせは、実際に会って話をしても理解が困難で、時間もかかる作業です。そのような理由から、営業マンは私に同行を求めてきて、営業マンではやり取りが難しい専門的な内容を、私が説明していました。

そのやり取りをリモートではできない事もありませんが、ちょっと不便な部分があるのではないかと思います。

あとは細かい製品のデモンストレーションのときです。直接お会いできれば、丁寧な説明ができますが、モニター越しとなると、場合によっては難しいシーンになる可能性もあります。

特に困るのは不器用な方です。たとえば説明会の際に参加者が10人いたとしたら、経験的に1人は不器用な方がいます。そのような方には特にしっかり覚えていただかないと、あとで「使いにくい」とうい悪評を広められてしまう恐れがあるので要注意です。

■リモート営業でのクレーム対応で大事なこと
次に「謝罪をするとき」です。納めた製品に不具合が発生した場合、どのように対応していますか?

最も重要なことは、できるだけ素早く対応することだと思います。不具合の報告が入ったのに、それを放置して問題を大きくしてしまった営業マンをたくさん見てきました。

怒られなくて良いものを、わざわざ怒られる様な行為をしてしまうのは、とても残念ですし、顧客にも迷惑がかかります。

この部分も対面営業と同じで、何か問題が起きた、もしくは問題かも知れないという場合は、とにかくスピード重視で行動しましょう。

ひとつ例を挙げてみます。顧客からクレームの電話がかかってきました。
顧客「御社から購入している○○という製品ですが、うまく接続できないんだけど壊れているんじゃないですか?」

営業マン「そうですか、それでは△△のように取り付けてみていただけませんか?」

顧客「それもやってみました。あと□□も試してみたけど、ダメだったんですよね。」

営業マン「承知致しました。それでは現品を確認したいので、お引き取りに伺ってもよろしいでしょうか?」

顧客「今、コロナの影響で業者は訪問禁止なんですよね。」

営業マン「それでは大変お手数ですが、郵送していただいてもよろしいでしょうか?」

顧客「わかりました。送ります。」

という感じです。

これは私にとっての大前提ですが、こちらに非があることがハッキリするまでは、絶対に謝りません。詳しく状況をヒアリングしてみると、不具合ではなく顧客の使い方が悪かったなんて事も多いです。

それに、とりあえずその場を収めようとして、すぐに謝る人がいますが、何だか安っぽい気がしてしまうのは私だけでしょうか?

あと、「すいません」が口癖のような人も頼りなく感じます。日本語は便利なモノで、「ごめんなさい」と「ありがとう」という全く意味の異なる2つの言葉が、「すいません」というワードに変換されて、多用されているケースが多く見受けられます。

私は「すいません」という言葉に「心」を感じないので、できるだけ使わないように気を付けています。顧客から信頼されている営業マンは、ペコペコせずに堂々とした立ち振る舞いをしていると思うのです。

■会えなくても直接謝りたい気持ちを示す
話しを戻しましょう。

不具合対応の際には、まずはその時に考えられる原因を、口頭で説明します。それで解決しなかった場合、現物の確認を試みます。

先ほどの例では、すぐに引き取りに行くことを提案しましたが、顧客と信頼関係ができている場合は、最初から「送ってください」でも良いと思います。引き取りに行くのが面倒な私は、送ってもらう場合が多いです。

そして、現物を確認した結果、完全に不具合だったことが実証されたら、社会人として謝らなければいけません。

謝罪シーンは以下のような感じです。
営業マン「先日送っていただいた製品ですが、こちらで解析した結果、製造不良であることが分かりました。大変申し訳ございません。」

顧客「そうですか。」

営業マン「製造過程において、〇〇が原因だと考えられます。不具合報告書もご用意させていただきましたので、一度直接お伺いして謝罪と原因のご説明させていただきたいのですが、いかがでしょうか?」

顧客「先日も言いましたが、今は業者は訪問できないので、報告書を送ってくれればいいです。」

ここでのポイントは、

・謝罪の言葉を伝える
・「直接伺って謝罪&原因説明をしたい」と申し出る

この2つになります。

まずは、謝りたくなくても、こちらに非がある場合は、しっかり謝罪した方が良いですね。そして、お伺いして直接謝罪&不具合の原因の説明をしたいと申し出ます。この申し出には誠意を込めましょう。

本来、ベストな対応は、しっかり顔を突き合わせて、相手の目を見て心から謝ることです。リモートではそれができないので、謝罪の気持ちの伝わり方が浅いように感じます。

謝罪の伝え方は、

電話<WEB会議システム<対面

この順番で深くなっていくと思います。対面しにくい現在の状況でベストなのは、Web会議システムを通じた謝罪です。

■リモート営業がメリットを発揮する3つのケース
ここまではリモート営業に向いていないケースをご紹介してきました。次は、向いているケースに移りたいと思います。

向いているのは次の3つです。

・関係構築
・情報提供
・情報収集

これら以外にも多々あると思いますが、ここではこの3つに絞らせていただきました。これらは、対面営業とほぼ変わらずにできる事です。

「関係構築」についてですが、私は営業の指導をする際には「ザイオンス効果」(単純接触効果)を用いて説明することが多いです。

「ザイオンスの効果」とは、アメリカの心理学者ロバート・ザイオンスが論文「Zajoc」の中で発表した“何度も繰り返し接触をすることで、好感度や評価が高まる”効果のことです。何度も足を運ぶことでお客さまの警戒心を解いて、好感度をアップさせるというものです。とても古典的な手法ですが、大変効果は高いです。

この接触頻度を高める法則ですが、リモート営業でもまったく同じような効果が期待できます。

Web会議システムを使った商談では、その効果は対面のときと変わらないでしょう。電話では、顔が見えないという最大のデメリットがありますので、Web会議システムより効果が落ちそうですが、同じような活用方法で十分効果が期待できます。

メールでも効果はあります。メリットのひとつは“忘れられない”ことです。あと、活字でのやり取りになるので、営業マンの名前を漢字で覚えてもらいやすいという、メールならではのメリットもあります。

ただ、メールの場合、長文を送る際には注意が必要です。長文メールの解釈の違いでこじれるケースが考えられます。メールで顧客とラリーをするときは、あまり長文にならないように気を付けましょう。

次に「情報提供」ですが、これについてはすでに実践されている方も多いのではないでしょうか。現在では、ITを使って仕事をすることが当たり前になっていますから、電子化された資料をメールで送るなんてことは難しくないと思います。

Web会議システムでは、メールと電話の特徴を合わせたような活用方法になります。リモートで顔を突き合わせて、シェアした資料を見ながら商談をするという形です。このスタイルがこれからもっと普及していくのではないでしょうか。

最後に「情報収集」ですが、こちらはリモートスキルというより、リアルと同様に営業のコミュニケーションスキルが必要とされるので、そちらを磨いてから、そのままリモート営業に活かせば良いでしょう。

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(財津 優 TEAM Z代表/営業戦略クリエイター)

【プロフィール】
大手外資系企業で入社1年目に売上金額と新規獲得顧客数の両方でトップを獲得。2017年にはニューヨークや中国でも表彰され「winner」の称号を獲得。そのかたわら演会やセミナーの開催、セールスコンサルティングも行う。現在は首都圏の大学でキャリア形成の講義を担当。著書に『世界No.1営業マンが教えるやってはいけない51のこと』(明日香出版社)『リモート営業の極意 外資系トップセールスが教える“会わなくてもバンバン売る”技術』(WAVE出版)。

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