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リモート営業をおこなう際の最初のハードルは「アポイントを取ること」ではないだろうか。この初期の段階でつまづいてしまうと、案件を作ることすらできない。それ故に、ここは非常に重要なフェーズとなる。

確率の低いアポイント取りをおこない失敗が重なると、モチベーションの低下に繋がりかねない。営業コンサルタントの財津氏が「効果的なアポイント奪取」について具体的に解説する。

■テレアポはアンケート風に。
今回はダイレクトメール(DM)を送るのが面倒な営業マン向けのやり方をご紹介します。アンケート(またはインタビュー)調査風に入っていく手法です。それではシチュエーションを設定して、説明します。

あなたは半導体の自動セッティング機器を製造販売しているメーカーの営業マンだったとします。見込み客は、半導体の部品を基板へのセッティング作業をしている製造工場になります。業界では工場勤務の人が、手動で部品を基板にセットしているのが主流です。

そこへあなたが自動機を販売するというシーンです。それではやってみましょう!
営業マン 「もしもし〇〇株式会社の△△と申します。今弊社ではお客さまを対象としたアンケート調査をおこなっているのですが、簡単な質問をいくつかさせていただいてもよろしいでしょうか?少しだけお時間をいただければと思いまして。」
見込み客 「どのようなアンケートですか?」

電話の導入部分は、以上のような感じです。ここでの一番のポイントは、「売り込みの匂いを感じさせないこと」になります。

ハッキリ言います。見込み客は営業電話が嫌いです。

知らない人からモノを勧められたり、買うのも大嫌です。人は自分が買うモノは、自分で決めたいのです。ですからあなたは、営業電話をかけるという意識ではなく、「アンケート調査をしているだけですよ。」という気持ちで臨むことが大切です。

■テレアポの実例。
さて、次は具体的に質問を考えてみましょう。今回のテレアポのゴール設定は、Web商談に持ち込むことです。そうであれば最後のセリフに、

「それであればお役に立てそうです!」 というようなことを言いたいですね。そのようになる流れを作っていきましょう。先ほど、「売り込みの匂いを感じさせない」ことがポイントであると申し上げましたが、そのためには直接的な質問ではなく、一般的な質問をするのがよいでしょう。

ですから、「お困りのことはありませんか?」というように「意見を聞くことはNG」です。今、見込み客が置かれている状況に関する質問であれば、気軽に答えてくれることでしょう。
営業マン 「現在オペレーターをされている方は、何人ぐらいいらっしゃいますか? ザックリでかまわないのですが。」
見込み客 「そうですね。シフトにもよりますが、だいたい常時10人ぐらいですかね。」
営業マン 「ありがとうございます。10人ぐらいですね。残業とかはあまりされていませんか?」
見込み客 「いや、けっこう忙しいので、毎日多少は残業していますね。」
営業マン 「ありがとうございます。平均的に残業時間はどれぐらいですか?」
見込み客 「1~2時間ぐらいですね。」
営業マン 「ありがとうございます。1~2時間ぐらいですね。差し支えなければでかまわないのですが、不具合などは月に何件ぐらいありますでしょうか?」
見込み客 「そうですね。2~3件は出てますかね。」
営業マン 「ありがとうございます。2~3件ですね。質問は以上になります。ありがとうございました。ところで、以前、御社と似たような状況のお客さまが、ほかにもいらっしゃいました。お役に立てそうですね。(独り言っぽく)」
見込み客 「そうですか。」
営業マン 「御社と同じような環境のお客さまで、固定費が削減できて業績が回復したところがあるんですよ。」
見込み客 「そうですか。」
営業マン 「お役に立てると思うのですが、改めてアポイントを取らせていただいてもよろしいですか?短い時間で構いませんので。」
見込み客 「はい、いいですよ。」
営業マン 「コロナの状況もあるので、御社におうかがいするとご迷惑かと思います。最近流行りのWeb面談ではいかがですか?」
見込み客 「Web面談?やったことないんですけど。」
営業マン 「やり方は簡単ですよ。(以下略)」

このような流れです。ポイントをご説明します。

■「独り言」が効果的。
「相手の立場に立って考えること」は毎回の大前提なので、見込み客が答えやすく質問をする「気づかい」が大切ですね。

今回、オペレーターの人数を聞く際、最後に「~ザックリで構わないのですが。」と付け加えました。これはほかの聞き方にして、「おおよその人数で大丈夫です。」などでもOKです。正確な人数を知る必要はありませんので「気づかい」に加えて、早く答えてもらうための一言でもあります。

次は質問に答えていただいたあとに毎回、「ありがとうございます。」と、お礼を言うことです。大事な時間を割いていただいていますので、感謝の気持ちを伝えることで、次の質問にも気持ちよく答えてもらえる可能性がアップします。次のポイントです。

【答えていただいた回答をメモしながら言葉に出して繰り返す。】

この電話はアンケートを取るのが目的ではありませんよね?極端な話、内容はスルーしてもよいのです。しかし、実際にメモを取りながら言葉にすることで、アンケートを取っている感じが演出できます。

相手も2問目ぐらいになってくると、アンケートに答えている雰囲気に呑まれてきます。ですから、よりリアルな流れを作るために有効な行為なのです。

そして終盤の、「お役に立てそうですね。(独り言っぽく)」ですね。これは、そのまま独り言っぽくボソッとつぶやくのがコツです。

相手が優しそうな人だった場合は、「お役に立てそうだな~。(独り言っぽく)」という感じでもかまいません。独り言なのでタメ口交じりでも大丈夫です。この一言で「やや強引」のスイッチを入れます。テレアポのクロージングを開始するのです。

■テレアポは自分との戦い。
そして最後のセリフです。

「改めてアポイントを取らせていただいてもよろしいでしょうか?短時間でかまいませんので。」

このセリフも気持ちを強く持って「やや強引」な感じでプッシュします。もちろん相手を不快な気持ちにさせない程度です。テレアポは自分との戦いの要素が大きいので、「失敗しても関係あるか!」というくらいの開き直った気持ちで挑んだ方が、成功する確率が高くなるでしょう。

チームに所属していたり、仲間が身近にいる環境であるならば、ほかのメンバーと情報を交換しながら取り組むと、メンタル的にもテクニック的にも効果が加速することでしょう。

※『リモート営業の極意 外資系トップセールスが教える"会わなくてもバンバン売る"技術』(財津優 著 WAVE出版) より紹介

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財津 優 TEAM Z代表/営業戦略クリエイター

【プロフィール】
大手外資系企業で入社1年目に売上金額と新規獲得顧客数の両方でトップを獲得。2017年にはニューヨークや中国でも表彰され「winner」の称号を獲得。そのかたわら演会やセミナーの開催、セールスコンサルティングも行う。現在は首都圏の大学でキャリア形成の講義を担当。著書に『世界No.1営業マンが教えるやってはいけない51のこと』(明日香出版社)『リモート営業の極意 外資系トップセールスが教える“会わなくてもバンバン売る”技術』(WAVE出版)。

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