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日々食品の値上げが世界的に多数報じられていますが、その背景にはロシア軍によるウクライナへの軍事侵攻があります。連日の報道に心を痛めておられる方も多いでしょう。

日本も、ロシア関係者へのビザ発給停止や資産の凍結、半導体の輸出規制など、次々と制裁措置を公表していきました。

和食、製パン製菓、イタリアン、フレンチの料理人を経て、現在「日本の食の力を世界へ」を掲げ活動している「日本のグルテンフリー料理人」の観点から、ウクライナ情勢による世界的な食糧危機への懸念と、その解決策としての米粉の可能性について考えてみたいと思います。

■日露漁業協定停止
ロシア外務省は6月7日、北方領土4島の周辺水域での日本漁船の操業について定めている日露間の協定を停止すると発表。

日本側が協定に定められた入漁料などの支払いを行わなかった為とした上で「現在の状況では、日本側が全ての支払い義務を完了するまで1998年に締結した日露漁業協定の実施を中断せざるを得ない」とロシア外務省のザハロワ報道官は声明を発表しました。

ロシアのウクライナ侵攻を巡る日本の対露制裁強化に反発したものとみられることから、日本国内においても、このウクライナ危機の長期化による食料問題が次々と明らかになってくると推測されます。

■輸入小麦の高騰
連日耳にするウクライナの穀物輸出問題もその一つと言えます。日本においての小麦主要輸入国は、アメリカ、オーストラリア、カナダですが、北米産の不作等の影響から、輸入小麦の政府売り渡し価格(政府から製粉会社などに売り渡す価格)は、4月から17%余り引き上げることを決めました。

この価格は過去2番目に高い水準で、ロシアとウクライナの両国は小麦の世界主要輸出国であることから、国際相場の上昇により、日本国内においても一層の価格高騰は避けられないとされています。

ロシアのウクライナ侵攻に伴う穀物輸出問題で両国からの輸入が多いアフリカでは既にパンの価格高騰が報道されています。

G7による穀物輸出代替えルート確保への動きがあるものの、現状では輸入小麦の政府売り渡し価格の更なる高騰が見込まれ、今後も私たちの食と生活に大きな影響を及ぼすと予想されます。

■注目が集まる米粉と玄米粉
小麦と並ぶ主食は言うまでもなく米です。

日本の食料自給率がほぼ100%で、日本人なら誰もが食し、古くから親しまれている食料と言えば、やはり白米と玄米でしょう。今、この白米や玄米を製粉した米粉・玄米粉に注目が集まっています。

白米はもちろんのこと、米粉も実は、我々日本人の食生活を古くから支え続けてくれています。

古くは奈良時代に遣唐使により、小麦粉や米粉から作られた唐菓子が伝えられ、江戸時代には茶道と共に日本独自の和菓子が発展していったと言われています。

蒸して作られる外郎餅(ういろうもち)・軽羹(かるかん)・寿甘(すあま)、薄く焼き上げて作られる煎餅(せんべい)、お米の粒の食感が少し残った状態で作られる五平餅(ごへいもち)、子供の日に食される柏餅(かしわもち)・粽(ちまき)。

これらは、うるち米を水で洗い乾燥させて粉状にした「上新粉」で作られています。

また、おこわやお赤飯、求肥や大福、おかきやあられといったものは、もち米やもち米を精白・水洗いし、粉にしてから乾燥させた「餅粉」で作られています。

他にも、石うすで水びき、沈殿させ乾燥させて作る「白玉粉」、うるち米50%、もち米50%を粉にして作る「だんご粉」など、米から作られた粉は様々に利用されており、いずれも日本人になじみ深いものと言えます。

■米粉の分類
小麦粉に強力粉・中力粉・薄力粉と分類があるように、実は米粉にも分類があります。

普段の料理やお菓子に使用を推奨するものとして1番粉、製パン用に使用を推奨するものとして2番粉、製麺用に使用を推奨するものとして3番粉があります。

1番粉は2つのタイプに分けられます。
・ソフトタイプ→アミロース(澱粉)含有率15%未満
主にやわらかいスポンジケーキやクッキーに使用
・ミドルタイプ→アミロース含有率15%以上20%未満
スポンジケーキやクッキーに加え、てんぷら粉やお好み焼き粉等に使用

2番粉は、
→アミロース含有率15%以上25%未満
主に製パン全般に使用

3番粉(一部菓子・料理用含む)も2つのタイプに分けられています。
・麺全般→アミロース含有率20%以上
主に製麺全般に使用
・ハードタイプ→アミロース含有率25%以上
強弾力の製麺や固めのケーキ等に使用

小麦粉同様、このように実は米粉にも分類が存在し、用途別に使い分けることで、よりイメージ通りに美味しく仕上げることが出来ます。

また、上新粉や餅粉等の精白米を製粉したものより、ビタミンやミネラル、食物繊維などの栄養素が高く、ストレスを和らげるというGABAが含まれる「玄米粉」も注目されています。

■米粉のメリット・デメリット
米粉のメリットは各種のアレルギーに対応している上、「グルテンフリー食」であることです。グルテンフリーとは、小麦などに含まれるグルテンを摂取しない食品や食事、ライフスタイルのことです。

また、単に炊いて食すごはんとして以外に、製菓や製パン等、食の選択肢が増えることもメリットと言えます。

デメリットとしては、小麦粉での調理に慣れている現代においては、乾燥に弱いことや吸水性の違い等、米粉の扱いに戸惑う方が多く、米粉の調理に関する知識や慣れが必要であることです。

■米粉の需要拡大
農林水産省によると、米粉の今年度の需要量は4.3万トンと過去最多を更新する見通しで、米粉の利用拡大を図る法律が施行された2009年からの第1次ブームのピークと比べ、1.7倍に伸びています。

しっとり感やもっちり感のある食感で徐々に人気を集め、第2次ブームが起きているとも言われています。

この注目の背景には、諸外国同様、日本でもSDGsへの意識が高まったことのほか、輸入小麦の残留農薬問題、高グルテン問題、グルテン不対症や小麦アレルギー、セリアック病、リーキーガット症候群(腸漏れ症候群)など様々な問題の対策として「グルテンフリー食」への関心が高まっていることが挙げられます。

■グルテンフリー食の重要性
2013年に和食がユネスコ無形文化遺産に登録され、2019年の時点では海外に日本食レストランが約15万~16万軒存在します。

日本の食材や出汁、発酵等の技法が注目されている現代で、セリアック病の世界的有病率は世界人口の1.4%であるとの報告があります。実際に日本でもグルテンで困っている人々が多く存在しているのです。

■日本の「古き良き食文化」企業・生産者・料理人の可能性
実は日本人こそグルテンフリー食に根付いていると私は考え、活動を続けています。

日本には白米・玄米・甘酒・日本酒・本みりん・わらび等のグルテンフリー食材と、出汁・発酵等の技法が根付いているのです。

食のグローバル化が進み食材や技法の国境がない現代において、世界各国の素晴らしい技法と古き良き日本の食文化を融合させて調理することによって、新しい美味しさやグルテンフリー食だからこその美味しさを出せると考えているのです。

しかし、料理を得意としない方や調理をする時間が取れない方がいることも現実です。

そこで、国・企業・生産者・料理人が協力して「グルテンフリー食」の商品を開発・販売することで、グルテン摂取による体調不良で困っている世界中の人の救いとなり、食料自給率向上にもつながります。

■今後、日本が直面すると予想される問題
日本の食料自給率について、政府は米が98%、野菜が80%、鶏卵が96%だと説明しています。しかし、この自給率の裏には、カラクリがあると指摘されています。

まず、この自給率は海外からの輸入食品があってこその自給率であることです。

現代は小麦粉やトウモロコシ粉で作られた麺等の消費が増えています。その分、昔よりもごはん、ひいては米の需要が減っているのです。このことから、米の供給が大幅に減っていても、それ以上に需要が落ち込んでいることで足りていると思われがちなのです。

また、野菜の種の90%、鶏のヒナのほぼ100%が海外からの輸入頼みで、どちらも輸入が途絶した時の自給率は、0%近くになってしまいます。

米も野菜同様に種採りが海外で行われるようになるのではと筆者は考えており、そうなれば近い将来、日本は飢餓に直面してしまうかもしれません。

コロナ禍によって輸出規制を実施した国は19カ国にのぼり、日本では、中国からの業務用野菜やアメリカからの食肉などの輸入が減少しました。グローバル化したサプライチェーンに依存する食料経済の脆弱性が改めて浮き彫りになってきています。

日本国内の食料自給率向上の為にも、食料の自由貿易を見直し、国・企業・生産者・料理人の協力と取り組みがこれから最も重要になってくると考えます。

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山崎史雄 ロベリスク。総料理長

【プロフィール】
広島県出身。料理人だった母の手伝いで幼少期から調理に携わる。調理の経験を活かし、早朝・深夜問わず飲食店で調理の仕事をしながら生活費と学費を稼ぎ、高校を卒業。当時働いていた老舗レストランのシェフから「料理の才能がある」と評価されたことをきっかけに料理人となる。恵比寿・代官山・銀座など複数の飲食店の立ち上げ・メニュー開発・監修を経験し、アメリカ・ブロードウェイ出演者の来日時および要人の会食を担当。都内レストラン総料理長の経験を経て現在、西麻布の焼鳥店「ロベリスク。」で総料理長を務める。日本の食材を活かした「グルテンフリー料理人」としても活動。テレビ・ラジオ・新聞・雑誌などメディア出演・掲載多数。

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