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【連載】滝川徹のストーリーで学ぶタスク管理術[vol.11]
先日Yahoo!ニュースで上司から有給休暇を取ることをとがめられるような発言をされたという部下に関する記事が話題になっていた。

記事によると若手社員が営業目標未達のなか有給休暇を申請したところ、上司から「へぇ……目標未達なのに、有給取るんだ」と発言されたという(へぇ……目標未達なのに、有給取るんだ」 上司の一言はパワハラ? 近藤留美 ITmedia 2023/03/08)。

この記事には1,300以上のコメントがつき「目標未達なのは上司にも責任があるのでイヤミを言うのはおかしい」「目標未達でも有給は労働者の権利」「有給と目標の話は別」といった趣旨のコメントが多数見られた。

筆者もこれらのコメントとほぼ同意見だが、時短コンサルタントの立場からすると、そもそも上司からこういった発言をされること自体、できれば避けたいものだ。仕事をしながら嫌味を言ったり言われたり、お互いに嫌な気持ちになったりするのは成果を出すことにとって無駄な時間であり、生産性の観点からマイナスだからだ。

では、上司からこうした嫌味を言われること自体を回避する方法はあるのだろうか? 仮に言われたとしても、毅然と対応するには日頃どのような仕事の仕方をしておく必要があるのだろうか?

スティーブ・ジョブズの誘いを断った経験を持つプロ経営者の考え方を皮切りに、現役会社員でもある時短コンサルタントの立場から考えてみたい。

■営業目標が未達の責任は部下でなく上司にある
キヤノン電子現会長の酒巻久氏は、1999年にキヤノンの常務取締役から子会社のキヤノン電子社長に転じた。キヤノンに勤務していた頃、スティーブ・ジョブズと一緒に仕事をしたこともありアップルに誘われたが、それを断っての就任だった。

酒巻氏は赤字すれすれだったキヤノン電子を6年で売上高経常利益率10%以上の高収益体質の会社へ成長させた。そんなプロ経営者の酒巻久氏は著書『ドラッカーの教えどおり、経営してきました(朝日新聞出版 2011)』で次のように説く。
部下に目標を与えるときは、「誰が、何を、いつまでに、どのようにすればいいか」、具体的に示す必要がある。それが曖昧なものは指示とはいわない。 指示を与えたら、部下の仕事の進み具合を適宜チェックして、結果が出るまでフォローする。それが上司の役割である

部下の営業目標が未達の場合、その責任は部下自身が負うと考える人も多いのではないだろうか。少なくとも筆者は昔そう考えていた。しかし酒巻氏のようなプロ経営者からすれば営業目標が未達の場合、責任はあくまで結果が出るまでフォローしなかった上司の責任となる。

たしかに部下が仕事でミスをすれば上司が謝罪をするのが一般的だ。また部下がやったことでも会社にとって大きな問題であれば会社のトップが謝罪することもある。このことからも仕事の結果責任は上司が負う。それが会社組織の暗黙のルールと言えそうだ。

このルールに則れば上司から「へぇ……目標未達なのに、有給取るんだ」と言われた時は「結果責任は上司のあなたにありますから」と言えばすむことになる。

しかし、少なくともそう主張するためには部下自身もやるべきことをやっておく必要があるだろう。では部下自身がやらなければならないことは一体何なのか。

引き続き酒巻氏の考えを参考に考えてみたい。

■部下は節目節目できちんと報告する
酒巻氏は著書『朝イチでメールは読むな!仕事ができる人に変わる41の習慣(朝日新聞出版 2010)』で部下の報告に関して次のように書いている。
節目節目できちんと報告し、承認を得ておけば、その後、何があっても責任は上司が負うことになるから、安心して仕事ができる。だから、迷ったらすぐに上司に相談し、承認を得るのを習慣にすることだ

この言葉からわかるのは、部下は上司に対して節目節目で報告し、その後の仕事の進め方について承認を得ておく必要があるということだ。

もし節目節目で報告をしていれば、報告の都度上司から次に何をすべきか具体的な指示が与えられるはずだ(少なくとも上司は必要があれば指示をすべきだ)。もし部下が上司から受けた指示に適切に対応していたにもかかわらず営業目標が未達であれば、酒巻氏の言うように『何があっても責任は上司が負う』ことになる。

この場合、営業目標が未達のなか有給申請をしたとしても、上司からとがめられるような発言をされることはないはずだ。もし万が一とがめられたとしても「やるべきことはやっています」と堂々と言い返せることになる。

■会社員こそ自分の身は自分で守らなければならない
「上司に言い返すことなんてできない」と感じる読者もいるかもしれない。しかし筆者が15年以上会社員を続けてきて学んだことは、必要な時には自分の意見をきちんと主張して自分の身を守らなければならないということだ。

会社組織で生きていれば正しいことをしていても、理不尽と感じる経験を避けることはできない。筆者も少なからずそう感じる経験をした。

そんな時に自分の考えをきちんと上司や同僚に主張できなければ会社にいいように使われる都合のいい人材になってしまう。

会社組織で働く以上、やるべきことはしっかりとやるべきだ。しかしやるべきことをやった上で理不尽な要求をされたのなら、残念ではあるが毅然と対応しなければならない。

会社員も自分の身は自分で守れるようにしておく必要がある。そのためにも日頃から上司に文句を言われないように仕事をすることが大切だ。その鍵は酒巻氏が言うように節目節目で上司に報告をすることにある。少なくとも筆者はそう考えている。

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滝川徹 時短コンサルタント

【プロフィール】
1982年東京生まれ。慶應義塾大学卒業後、内資トップの大手金融機関に勤務。長時間労働に悩んだことをきっかけに独学でタスク管理を習得。2014年に自身が所属する組織の残業を削減した取り組みが全国で表彰される。2016年には「残業ゼロ」の働き方を達成。その体験を出版した『気持ちが楽になる働き方 33歳大企業サラリーマン、長時間労働をやめる。』(金風舎)はAmazon1位2部門を獲得。2018年に順天堂大学で講演を行うなど、現在は講演やセミナー活動を中心に個人事業主としても活動している。

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