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【連載】滝川徹のストーリーで学ぶタスク管理術[vol.15]

先日Yahoo!ニュース上で、「朝礼って意味あるんですか?」という発言をはじめ、タイムパフォーマンス(タイパ)を重視する若手社員が話題になっていた※。

記事では従来の仕事のやり方に物申す若手社員を「モンスター社員」と問題視している。しかし彼・彼女らの視点は優秀な経営者に通ずるところもある。うまく活用すれば組織のムダをなくすこともできる貴重なものだ。

その視点とは何か?
どうすれば組織のムダを無くすことができるのか?

スティーブ・ジョブズの誘いを断った経験を持つプロ経営者の考え方を皮切りに、生産性の高い働き方を追求する時短コンサルタントの立場から考えてみたい。

※参照 「朝礼って意味あるんですか?」職場の全員が大迷惑!なんでもタイパを重視する新入社員に上司が悲鳴 日刊SPA 2023/8/1

■2週間やめて問題がなければその仕事はいらない

キヤノン勤務時にスティーブ・ジョブズと仕事をしたことで、後にアップルに誘われたキヤノン電子現会長の酒巻久氏。

酒巻氏は社長になって間もなく、ある工場の管理部門の仕事を2週間やめてみたという。その部署を観察したところ訪ねる社員もなく電話がかかってくる気配もなかったからだ。

そこで2週間仕事をするなと指示してトラブルが起きた時だけ対応するように指示をした。すると見事に何も問題は起きなかった。この部署は不要と判断されその後解散となった。

酒巻氏はムダを一掃するためには「ほんとうにその仕事は必要なのか?」と常に問い続ける必要性を説く。実はこの視点こそタイパ重視の若手社員が持ち合わせているものだ。

■「試しにやめてみる」という選択肢をもつ
冒頭の記事では「挨拶ならSlackで済む」という理由で朝礼を無駄と考える若手社員が描かれている。たしかに単なる情報共有ならわざわざ朝礼をする必要はない。

これに対して「仕事を管理する立場からすると朝礼を活用するほうが効率がいい」という反論も見られた。たとえば仕事の締め切り日の確認など朝礼で伝えるほうが管理職の立場にある人は安心かもしれない。

この主張も理解はできるが、こういう時こそ「ほんとうにその仕事は必要なのか?」と改めて問う姿勢が必要となる。

たとえば酒巻氏のように朝礼を一定期間やめてみる、という手法だ。それで何も問題が起きなければやめる決断も容易にできる。管理職が安心するためだけに朝礼を行っているのなら時間の無駄と判断するのが当然だ。

もちろん、支障が出たら元に戻せばいい。こんな手順を踏めば若手社員も朝礼に意味を見出せる。

若手社員の意見は時に自己中心的かもしれない。しかし会社に染まっていない視点から、酒巻氏のように「ほんとうにその仕事は必要なのか?」という視点とムダをなくす機会を与えてくれる可能性がある。そう考えれば必ずしも迷惑とは限らない。

■間違いは直ちに訂正できる
ある仕事がムダだと気づいても、やめる決断をすることは容易ではない。やめることで生じるリスクを誰も背負いたくないからだ。

やめる恐怖についてドラッカーは以下のように語る。

『不必要かつ非生産的な時間が多いことについては、誰もがよく知っている。しかし時間を整理することは恐れる。間違って重要なことを整理してしまうのではないかと恐れる(ドラッカー名著集1 経営者の条件 ダイヤモンド社 2006))』

こうした問題も「一定期間やめてみる」ことで解決可能だ。やめてみれば真にムダかどうか、最小のリスクで判断できるからだ。

同じ会社に何年も勤めていると新鮮な視点がなくなる。もし若手社員から「それって意味あるんですか?」と指摘されたら、頭ごなしに否定せず一定期間その仕事をやめてみてはどうだろうか。

ドラッカーは仕事の整理について「間違いは直ちに訂正できる。整理しすぎればすぐにわかる」と言う。

試す価値はきっとあるはずだ。


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滝川徹 時短コンサルタント

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【プロフィール 滝川徹・時短コンサルタント】1982年東京生まれ。慶應義塾大学卒業後、内資トップの大手金融機関に勤務。長時間労働に悩んだことをきっかけに独学でタスク管理を習得。2014年に自身が所属する組織の残業を削減した取り組みが全国で表彰される。2016年には「残業ゼロ」の働き方を達成。その体験を出版した『気持ちが楽になる働き方 33歳大企業サラリーマン、長時間労働をやめる。』(金風舎)はAmazon1位2部門を獲得。2018年に順天堂大学で講演を行うなど、現在は講演やセミナー活動を中心に個人事業主としても活動している。

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