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「潰れない会社といえば、自己資金が豊富というイメージがあるかもしれませんが、銀行などから借り入れをしているというだけで、その会社が”危険”なのかというと、そうではありません。」と言うのは経営コンサルタントの横須賀輝尚氏。

潰れない会社の借金事情はどんなものなのか?今回は、横須賀氏の著書「プロが教える潰れる会社のシグナル」より、再構成してお届けします。



■潰れない会社は、身分不相応の借金をしている?
潰れない会社って、やっぱり現預金が多いんです。もちろん、自己資金だけではなく、借り入れも加えて。この原理を知っている社長は強いです。

まず、現預金が豊富にある会社が強いのはいうまでもありません。それが自己資金であっても、借り入れであっても、現金があることは極めて強い。借り入れについて拒絶反応をする社長は、下記のことを知りません。このことを踏まえつつ、潰れない会社にするための資金繰りについて、考えてみましょう。

・金融機関から借りるお金は、金利も低いし返済期間も長い
・月々に返済する金額は、そこまで負担にならない
・借りたいときに、借りられるわけではない
・金融機関と取り引きがなければ、借りることはできない

まずは、借り入れの拒絶反応をなくすことから。

金融機関からの借り入れの金利は、2%から3%前後と、暴利ではありません。そして、返済期間も5年から10年と、長期で返すため月々の返済額も決して大きいものではありません。

もちろん、借りてすぐに使ってしまえば、返済できなくなってしまいますが、ポイントは「借りたお金は、プールしておく」ことにあります。

例えば、現預金が100万円しかなければ、何かアクシデントがあったときに資金がショートする可能性があります。これに融資で1000万円追加があれば、現預金は1100万円。業種にもよりますが、100万円の残高よりも安心できます。

換言すれば、「会社の預金残高の推移をできるだけ高い残高水準で行う」ことが重要なのです。

言い方はよくないかもしれませんが、「自分のお金だろうと、他人から借りたお金だろうと、現金があれば会社は潰れない」のです。

次に、お金を借りたいときを考えてみましょう。お金を借りたいと思うときは、普通に考えれば「お金がなくて、経営が苦しいとき」です。

しかしながら、基本的に赤字決算の会社には貸すのは難しいし、取り引きがそもそもなければ、いきなり貸すことも困難。これを踏まえると、「できるだけ早い段階で金融機関と取り引きを始めておき、会社の業績が良いときに借りておく」が正解になります。

つまり、会社が好調なときにこそ、借りるべきなのです。

■できれば三つ以上の金融機関と取り引きする
まずは日本政策金融公庫から始めるのがいいでしょう。日本政策金融公庫は政府系金融機関であるため、最も借りやすい。最初は公庫で借り入れの実績をつくる。そして、その次に信用金庫や信用組合、地方銀行などと取り引きを始めていきます。

金融機関との取り引きは、決して難しいものではありません。 まずは法人の口座をつくる。その口座を使う。そして、融資担当者を紹介してもらい、融資を希望している旨を伝える。

このとき、決算書や試算表を提出するのもいいでしょう。成績が良い会社は、当然返済も遅れない。そういう意味では、金融機関は「業績の良い会社にはどんどん貸したい」わけです。貸すのが仕事ですからね。

そして、日本政策金融公庫を含んで、できれば三つ以上の金融機関と取り引きをしたいところ。複数の金融機関から借りるのが正解です。

というと、「ひとつの金融機関から、多額の借り入れをするのではダメなのか?」のような意見があると思いますが、まずは最初から高額の融資は難しいということ。返済実績を積んでいかないと、優秀な業績を収めていても、そう簡単にいきません。

それに加えて、一度借りてしまえば、しばらくは同じ金融機関から借りることは原則として不可能です。1000万円借りて、翌月また1000万円借りて、なんていうのは現実的にはできないのです。ですから、借り入れ額を増やそうと考えたら、別の金融機関から借りる必要があります。

日本政策金融公庫から1000万円、信用金庫と地方銀行からそれぞれ1000万円。合計3000万円の資金調達に成功、という具合に借り入れ先が複数になり、また返済が滞ってなければ、その会社に対する評価は高まっていきます。

もちろん、業績がそれなりに堅調でないといけませんが、「他社でもきちんと返済している」というのは、金融機関にとって安心材料なのです。

潰れない会社というのは、このように複数の金融機関から借り入れを行い、場合によっては必要以上に現預金を保有しています。

ある会社などは、黒字決算で借り入れも豊富で、現預金が常に高水準で維持できている。経営も盤石です。でも、最近は金融機関から借りられないんだとか。なぜ、借りられないのかと聞いたら、「会社に十分過ぎる現預金があるので、貸す必要がない」って言われたそうです。ここまでくれば、安心だといえます。

■潰れない会社は、借り入れを完済しない
借り入れをしたからには、返さなければならない。そりゃそうです。しかし、潰れない会社の社長は、完済を目指しません。

「えっ 借金を踏み倒すの?」。いえいえ、そうではありません。完済を目指さず、「借り換え」を続けるのです。

借り換えとは何か。金利とか考慮せず単純に説明しますが、例えば500万円の借り入れがあったとします。毎月返済を続けて100万円返済をして、残りの返済額400万円。普通に考えれば、あと400万円を返済しなければなりません。しかし、ここで借り換えを行うとどうなるか。

借り換えを行う場合、例えば追加で1000万円の融資を受けます。このとき、残債の400万円を、新たに借りた1000万円で一度返済します。そうすると、残りは600万円。この600万円が新たな融資額となります。

借り換えによって、400万円が600万円に増えたわけです。この1000万円から400万円を返済し、新たに入ってきた600万円部分を業界では「真水(まみず)」と呼びます。その後は、この600万円の返済が始まるわけです。

これを繰り返していくとどうなるか。

返済実績が増していくので、借り入れできる金額も上がります。そして、複数の金融機関と取り引きがあれば、相乗効果的に借り入れ額が増えていくわけです。

こうやって借り換えを繰り返し、現預金を増やしていく。この理屈がわかっている社長は強い。いわば「借金バンザイ」なわけです。

横須賀輝尚 パワーコンテンツジャパン株式会社 代表取締役/特定行政書士

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【プロフィール】
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1979年、埼玉県行田市生まれ。専修大学法学部在学中に行政書士資格に合格。2003年、23歳で行政書士事務所を開設・独立。2007年、士業向けの経営スクール『経営天才塾』(現:LEGAL BACKS)をスタートさせ創設以来全国のべ2,000人以上が参加。著書に『プロが教える潰れる会社のシグナル』(さくら舎)、『会社を救うプロ士業 会社を潰すダメ士業』(さくら舎)、『資格起業家になる! 成功する「超高収益ビジネスモデル」のつくり方』(日本実業出版社)、『お母さん、明日からぼくの会社はなくなります』(角川フォレスタ)、他多数。

公式サイト https://yokosukateruhisa.com/
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