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セミナーや講座の主宰者として、できるだけ多くのことを伝えたい。そう考える人も多いだろう。しかし実は、多くのことを伝えるのが必ずしも受講者にとって良いこととは限らない。

そう語るのは現役会社員・副業講師の滝川徹氏。今回は、滝川氏の著書『ちょっとしたスキルがお金に変わる「副業講師」で月10万円無理なく稼ぐ方法』より、受講者に「伝わる」話し方について、再構成してお届けします。



■一つのスライドに情報を詰め込みすぎない
私はスライドはあまり作成しませんが、それでもオンラインセミナーの際は簡単なものを用意することがあります。スライドを作る場合、注意すべきなのは「一つのスライドに多くの情報を盛り込みすぎない」ということです。

たとえば社内外でセミナーや勉強会を受けていると、以下の図のように、たくさんの文字が書かれているスライドをよく見かけます。
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普段こうしたスライドを見慣れていると、違和感を感じないかもしれません。しかしここで、話を聞きながらスライドを見る立場になって、一度冷静に考えてみましょう。

このスライドは本当に受講者のことを考えて作られているでしょうか? 少なくとも私は、説明を受ける時にこのようにたくさんの文字がびっしり書かれたスライドを見ると、「これを読めというのか?」と感じて、一気に聞く気はなくなってしまいます。

人が注意を向けられるリソース・集中力は限られています。こうしたスライドを読んでいると、必然的に講師の話に意識を向けることもむずかしくなります。講師の話から吸収できることも減ってしまいます。

それでも「スライドを読むことで話の内容を理解できるからいいじゃないか」と思うかもしれません。しかしそれならスライドを事前に配れば済む話です。わざわざセミナーを受ける必要はないわけです。

わざわざ時間を作ってセミナーを受けるのは、講師の話を直接聞くことで、文章を読むだけではわからない細かいニュアンスなども理解したいからです。文章を読めばわかるなら、その他にもブログ記事を読んだり本を読めば済む話です。

文章を読むだけでは理解できない、伝わらない話をわかりやすく受講者に伝える──これがセミナー講師の責務なのです。

■「1スライド・1メッセージ」を心がける
では本来一つのスライドにどれくらいの文量を盛り込むべきなのか。一言で言えば、スライドを見てパッと内容がわかる量であるべきです。

皆さんはTED(Talks)で誰かがプレゼンをしているのを見たことがありますか? TEDは世界中のおもしろい人たちが招かれてアイデアや経験をシェアする国際的なプラットフォームです。

Googleなどで「TED」と検索すれば出てきますが、無料でたくさんのおもしろいプレゼンが見られます。ぜひTEDのプレゼンをいくつか見てみてください。文字がビッシリ書かれたスライドなんてでてきません。

ほとんどの人物のスライドは画像とほんの少しの文字だけ。スライドを使わない人も珍しくありません。話だけで伝えたいことを伝えられる。それがセミナー講師のあるべき姿なのです。

■多くのことを伝えようとしない
セミナーで話をする内容を考える時に私が意識してるのは、多くのことを受講者に伝えようとしないということです。なぜこれが大事なのか。それは情報量が多すぎると、受講者側が消化不良を起こしてしまうからです。

皆さん自身、セミナーや勉強会に参加して「今日の勉強会、いろんな話が出たけどイマイチよくわからなかったな」と感じた経験はありませんか? 講師としてはやっぱり、お金を払ってきてくれている受講者にできるだけたくさんお返しをしたい。できるだけ多くのことを持ち帰ってほしい。そう思うわけです。それで「あれもこれも」と伝えたくなってしまうんですね。

しかし問題は、どんなにいい話をしても、メッセージがシンプルじゃなかったり情報量が多すぎると、受講者はその話を消化できないんですね。そうすると、なんだかよくわからなかったなっていう感じで、受講者はセミナー終了後、モヤモヤした気持ちを抱えてしまうわけです。

一方で、たとえちょっとしたことであっても、自分の考え方が変わったり、視点が変わったりするような気づきを与えることができれば、実はそれだけで受講者は満足します。

このことは本を読む時のことを考えるとわかりやすいかもしれません。私の場合、本を読んで役に立ったなぁと感じる時は「そうか! こうすればいいんだ」とシンプルかつ新しいアイデアや視点が手に入った時です。

セミナーも同じように、受講者に少しでも新しいアイデアや視点が提供できたら成功だと言えるでしょう。

■たった一つでも気づきを与えられたら十分
私が好きな本の一つに『イシューからはじめよ』(英治出版)があります。外資系コンサルティング会社のマッキンゼー出身の安宅和人さんが、価値ある仕事を生み出すための手法について書いた本です。

この本を読んだ時、「イシューからはじめる」という考え方に衝撃を受けました。仕事にかけられる時間は限られている。その中で価値ある仕事を効率的に生み出すためには解くべき問題=イシューを見極めることが大切だと安宅さんは言います。簡単に言うと、あれもこれもと手をつけるのではなく、本当に解くべき問題を見極め絞り込む。そうするとやることは100分の1になるというのです。

言われてみれば当たり前ですが、この本を読むまで私には「解くべき問題を絞り込む」という発想はありませんでした。私は良いセミナーも同じだと思うのです。極端に言えば、セミナーを受けた後に受講者がシンプルな一つの気づき・メッセージを得ている。もしくは新しい発想・視点を手に入れている。少なくとも私はこれをセミナーのゴールと考えています。

安宅さんの本も「イシューからはじめよ」という一言・シンプルなメッセージを伝えるために10万字近い文章を書いているわけです。セミナーも同じです。伝えたいシンプルな一つのメッセージがある。

それを伝えるためにたとえば2時間、さまざまな例を使って説明をするのです。セミナー終了後に受講生の頭に残ってほしいメッセージは何か? これを意識してセミ ナーの構成を考えましょう。それが実は受講者の満足度を高めるコツなのです。

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【プロフィール 滝川徹・時短コンサルタント】
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1982年東京生まれ。Yahoo!ニュース・アゴラで執筆記事が多数掲載される現役会社員・時短コンサルタント。慶應義塾大学卒業後、内資トップの大手金融機関に勤務。長時間労働に悩んだことをきっかけにタスク管理を習得。2014年に組織の残業を削減した取り組みで全国表彰。2016年には「残業ゼロ」の働き方を達成。時間管理をテーマに2018年に順天堂大学で講演を行うなど、セミナー講師としても活動。受講者は延べ1,000名以上。月4時間だけ働くスタイルで4年間で500万円の収入を得る。著書に『細分化して片付ける30分仕事術(パンローリング)』『ちょっとしたスキルがお金に変わる「副業講師」で月10万円無理なく稼ぐ方法(日本実業出版社)』他。

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