![]() 「いつの間にか人気資格となった社会保険労務士ですが、士業の中で最も実力差が激しいかもしれません。労務というセンシティブな仕事を任せる訳ですから、きちんと”プロ士業”を選びたいですよね。」 そう語るのは士業向けの経営コンサルタントで自身も士業(特定行政書士)である横須賀輝尚氏。同氏の著書『会社を救うプロ士業 会社を潰すダメ士業』から、プロ士業の見抜き方を再構成してお届けします。 ■助成金業務は、コンサルティングも提案させる いわゆる手続き業務については、はおおよそどの社労士でも問題なくこなします。ポイントは、それ以上の仕事ができるかどうかです。 社労士の法定業務の中でいえば、就業規則。そして助成金に大きな差が出ます。加えて、法定業務でない労務上の問題をどれだけ解決できる能力があるか。ここまでくると大変貴重な人材なので、見つけたら絶対に手放さないようにしてください。 わかりやすく、助成金業務の頼み方について解説をしていきましょう。 助成金は、要件さえ満たせば必ず受給できるお金です。そのため社労士としては売りやすい商品だと言えますし、これを専門的に扱う事務所も多いもの。 その中の特徴として、社労士は「助成金業務は、自分の顧問先以外はやりたがらない」という傾向が強くあります。これはどういうことでしょうか。 助成金業務による社労士の報酬は、おおよそ受給額の10%から20%。30%はちょっと多いかなというのが相場感です。着手金を取るところもあれば、顧問先からは着手金を取らないという事務所もあり、おおよそ2割程度の報酬を支払うことになると考えておけば、大きな認識違いは起こりません。 ですから、仮にスポットで助成金業務を受けたとしても、助成金が500万円振り込まれるのであれば、20%なら100万円。1,000万円なら200万円の報酬が入るのですから、スポットで受けても決しておいしくないとは言えないでしょう。では、なぜ社労士は顧問先からの受託にこだわるのか。 ■顧問先からの受託にこだわるのは、不正受給のリスクを避けるため それは、不正受給のリスクがあるからです。ここ最近、不正受給の数は多く、関与する社労士の責任も強くなってきており、社労士自身が不正に関与することを恐れているのです。 ただ、これに関しては社労士が日和っているというよりは、真面目にリスクがあるので、理解してあげるべき点でしょう。一見さんでとても感じの良さそうな会社でも、裏で何をしているかなんて、1度や2度の面談ではとても見抜けません。 そこで、顧問契約をするのならば、通常の経営を見ることもでき、悪質な会社かがどうかを見抜くことができる可能性が高まるため、助成金業務の受注は顧問先に限定している社労士が多いのです。 こうした事実を伝えると「でも、いきなり顧問契約って言われても……」と考える経営者は実に多いもの。そして、どうせ顧問契約をするなら、プロの社労士と契約したい。こうも考えます。 基本的には顧問報酬はコストではなく投資。顧問報酬以上に助成金が手に入る、あるいは労務問題の解決や組織を伸ばすためのコンサルティングが可能であれば、大きなリターンがあるわけです。ですから、顧問契約の内容を社労士自身に提案してもらいましょう。 あとは、通常の顧問契約のほか、もし高い報酬を支払ったら、どんなことが可能なのか? 助成金は率先して探してくれるのか? といった質問をして、報酬に見合う内容なのかどうか見極めてください。 ■アラート機能を持っている社労士は貴重 ちなみに、アラート機能を持っている社労士も貴重です(というか、本来は当たり前なんですけど)。助成金は、期限との戦いです。期限までにきちんと要件を満たし、書類をつくって提出すること。締め切りを過ぎた場合の救済措置はまずないと考えてください。 これに似ているのが税理士の経理資料等の提出を促すアラートですが、毎月の経理が多少遅れても、決算で帳尻を合わせればそれほど問題ないので、助成金業務を取り扱う社労士により強く求められる機能です。 これらも併せて、社労士にプロとしての提案を期待しましょう。労務相談、手続き込みの顧問なんて、当たり前過ぎますからね。あなたの会社に利益をもたらしてくれるプロをなんとしても掴んでおきましょう。結構この助成金をコンスタントに取れるっていうのは、会社経営にとっては重要ですので、やっぱりもらえるものはきちんともらっておきましょう。 ■「人を雇いたいのですが……」と聞いてみよう 最後に、あなたが会った社労士が、どれだけポテンシャルを秘めているか。もっとも簡単にわかる質問をお伝えしておきましょう。この質問に対する回答は、経験者にはその実績値をはかるものでもあり、育てる場合にはセンスをうかがうものでもあります。 その質問は、「これから人を採用しようと考えているのですが、どんな準備が必要で、どんなことをする必要がありますか?」というもの。 シンプルですが、結構奥が深い質問です。社会保険や労働保険の話題だけしか出ないようであれば、三流。助成金や就業規則等の話まで出れば二流。採用の方法や育成、コーチング、将来展望、今後についてのヒアリングまで出れば一流です。 ちなみに、超一流は、「なぜ、採用するのですか?」と質問で返します。そもそも採用する必要があるのか、その真意は何なのか、本質を探しにくるからです。 ぜひ、あなたもこれから絶対的に必要である人事労務のパートナー。妥協せずに見つけてみてください。 横須賀輝尚 パワーコンテンツジャパン株式会社 代表取締役/特定行政書士 【関連記事】 ■ 会社が倒産した場合、社長と社員の身には何が起こるのか (横須賀輝尚 経営コンサルタント) https://sharescafe.net/61437125-20240420.html ■起業するとき、まず行政書士に相談すべき理由~行政書士の活用方法~(横須賀輝尚 経営者) https://sharescafe.net/61436494-20240420.html ■潰れる前に会社ができる最後の金策と資金繰り(横須賀輝尚 経営コンサルタント) https://sharescafe.net/61416452-20240412.html ■士業専門コンサルタントが教える、提案してくれる税理士の選び方(横須賀輝尚 経営者) https://sharescafe.net/61401427-20240408.html ■潰れない会社が、借り入れを完済しない理由。(横須賀輝尚 経営コンサルタント) https://sharescafe.net/61379291-20240402.html 【プロフィール】 1979年、埼玉県行田市生まれ。専修大学法学部在学中に行政書士資格に合格。2003年、23歳で行政書士事務所を開設・独立。2007年、士業向けの経営スクール『経営天才塾』(現:LEGAL BACKS)をスタートさせ創設以来全国のべ2,000人以上が参加。著書に『プロが教える潰れる会社のシグナル』(さくら舎)、『会社を救うプロ士業 会社を潰すダメ士業』(さくら舎)、『資格起業家になる! 成功する「超高収益ビジネスモデル」のつくり方』(日本実業出版社)、『お母さん、明日からぼくの会社はなくなります』(角川フォレスタ)、他多数。 公式サイト https://yokosukateruhisa.com/ X(旧Twitter) https://twitter.com/pcjyokosuka ![]() シェアーズカフェ・オンラインからのお知らせ ■シェアーズカフェ・オンラインは2014年から国内最大のポータルサイト・Yahoo!ニュースに掲載記事を配信しています ■シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家の書き手を募集しています。 ■シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家向けに執筆指導を行っています。 ■シェアーズカフェ・オンラインを運営するシェアーズカフェは住宅・保険・投資・家計管理・年金など、個人向けの相談・レッスンを提供しています。編集長で「保険を売らないFP」の中嶋が対応します。 |