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大企業に勤めていても副業が推奨される今、起業に興味を持つ人は増えています。そんな中、常に注目されているのが資格の取得。すでに資格を持っている人はもちろん、資格を取って独立したい人や資格に興味がある人に必読のQ&Aを、経営コンサルタントで士業(特定行政書士)でもある横須賀輝尚氏の著書「資格起業バイブル」から、再構成してお届けします。



■独立する場合の資格は、絶対条件と相対条件に分かれる
『Q.独立開業を考えています。起業の際には、やはり資格を持っていたほうが有利でしょうか?

現在サラリーマンです。2〜3年後に独立起業を考えています。それまでにできる準備として、経営の勉強をしたり、お金を貯めたりしようと思っています。どうせ勉強するなら資格でも、と資格の取得を考えているのですが、資格はやはりあったほうが有利でしょうか?』

独立起業する場合に資格があったほうが有利かどうか?

この質問に回答する前に、そもそもの資格の性質についてお伝えする必要があります。この質問は、論理的なようで実は的外れでもあるのです。それでは、順番に見ていきましょう。

まず資格には大きく分けて2つの種類があります。

ひとつ目はその資格がないと活動できないような、いわゆる法律で決められた「独占業務」を持つ資格です。これを私は「スキル資格」と呼んでいて、弁護士や司法書士などの士業の多くがこれに当たります。

これに対して独占業務を持たずに、その資格によって一定の知識があることを示すような資格があります。

たとえば、中小企業診断士やファイナンシャルプランナーなどの資格がこれにあたり、この資格がなかったとしても、コンサルティング業を行うことや資産設計のアドバイスを行うことに制限はありません。このような一定の知識があることを指し示す資格を「ステータス資格」と私は呼んでいます。

まず、あなたが法律で制限のあるスキル資格を使って独立起業したいと考えていたら、有利不利の問題ではなく、必ず取得しなければなりません。弁護士や司法書士などの業務を無資格で行うことは重大な法律違反であり、無資格で仕事を行った人が逮捕されるなどの例は毎年報道されています。まずはあなたの独立起業にスキル資格が必要かどうかを判断する必要があります。

一方で、ステータス資格はどうかというと、これは持っていたほうが有利です。なぜ有利かというと、自分の知識やスキルを第三者が証明してくれるので、自己紹介の手間が省けます。

さらに、自分自身で自分の知識やスキルを客観的に表現するのは、実際のところ簡単ではなく、「説明が省ける点」では有利であるとはいえます。

たとえば、「資産設計などが得意です」というよりは、「ファイナンシャルプランナーを持っています」というほうが説得力に満ちています。

さらにいうまでもなく、国家資格など公的な資格であれば、信用度も非常に高いといえます。私自身の経験からいえば、まだ20代前半で実績がなかった頃でも資格を持っていたために仕事が取れていたので、資格に対する信頼度は比較的高いと感じています。独立して仕事を取るにはさまざまな営業手法がありますが、そのいずれの方法でもお客様に信頼されなければ、仕事を依頼されることはありません。具体的な営業については別の章で回答しますが、資格のような第三者の証明がない状態で信頼してもらうのはなかなか難しいものです。

もっとも、資格がない場合でも、自分自身の仕事の実績が優れていれば、資格がなくても仕事を取ることは十分可能であることは付け加えておきます。有利といってもあくまでも言葉そのまま「有利である」というだけで、「資格があれば必ず食べていける」「資格さえ取れば間違いない」という意味ではないことに注意が必要です。

■「資格で起業」の危うさ
独立起業する前に資格を取って起業しようと考えるとき、もっとも陥りがちなミスが「資格で起業しよう」と考えてしまうことです。これは過去の自分の否定になりかねない考え方です。

なぜ資格で起業しようとすることが誤っているのかを、これから詳しく解説していきましょう。

実は、このミスは私が犯した最初のミスでもあります。

私は行政書士として独立開業したのですが、行政書士で独立開業したことによって「行政書士の仕事以外をしてはいけない」というルールを自分で勝手につくってしまったのです。

業界全体で見ても、士業は専門の仕事以外の、たとえば本を書いたり、セミナーをしたり、交流会を開いたりといった仕事を特に嫌う傾向にあります。まるで純血主義のような専業主義です。私はこれを「悪しき時代の理想専業主義」と呼んでいますが、資格取得から開業までを考えると、どうしても「資格だけ」で勝負してしまう傾向にあるのです。

たとえば、ある人が行政書士で独立開業しようとしていました。セオリーどおりに「専業主義」で食べていくと公言していましたが、なかなか仕事にありつけません。そこで、その方に前職は何をされていたのですか、と質問したところ、「営業一筋で10年以上です」と返答されました。つまり、この方はせっかくの10年も培った営業経験を無視して、行政書士だけで起業しようと考えていたのです。

このように、資格だけで起業しようというのは、自分の過去の否定にもつながります。ですから、資格を取ったとしても、過去のキャリアが生きる方法を考えるのがベストだといえます。

資格を取るということは、私は独立開業に有利だと考えています。自己紹介するのにもスムーズになりますし、また信頼もされやすいという点も非常に大きな利点です。

ただし、資格に振り回されて、専業で起業しなければならない、と思考が変わってしまうのが資格の少し怖いところでもあります。資格業そのものがスペシャリストなので、無意識に専業主義になりがちです。あなたも理想専業主義にならないよう、ぜひ気をつけてください。

ちなみに、先ほどの行政書士は、営業に関するコンサルティングも業務のひとつとしてメニューに加えました。営業についてもわかる行政書士というのは、専業の行政書士と比べてなんとも魅力的です。ぜひあなたも、単に「有利」になるだけでなくその上を目指し、よい資格起業家になってほしいと思います。

横須賀輝尚 パワーコンテンツジャパン株式会社 代表取締役/特定行政書士

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【プロフィール】
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1979年、埼玉県行田市生まれ。専修大学法学部在学中に行政書士資格に合格。2003年、23歳で行政書士事務所を開設・独立。2007年、士業向けの経営スクール『経営天才塾』(現:LEGAL BACKS)をスタートさせ創設以来全国のべ2,000人以上が参加。著書に『プロが教える潰れる会社のシグナル』(さくら舎)、『会社を救うプロ士業 会社を潰すダメ士業』(さくら舎)、『資格起業家になる! 成功する「超高収益ビジネスモデル」のつくり方』(日本実業出版社)、『お母さん、明日からぼくの会社はなくなります』(角川フォレスタ)、他多数。

公式サイト https://yokosukateruhisa.com/
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