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大企業に勤めていても副業が推奨される今、起業に興味を持つ人は増えています。そんな中、常に注目されているのが資格の取得。すでに資格を持っている人はもちろん、資格を取って独立したい人や資格に興味がある人に必読のQ&Aを、経営コンサルタントで士業(特定行政書士)でもある横須賀輝尚氏の著書「資格起業バイブル」から、再構成してお届けします。



■顧客側に立ち、同じ気持ちになることは重要
『Q.法律的には正しいのに、お役所仕事で話が通じず、正直私もキレてしまいそうです。

地方都市で行政書士をしています。田舎のせいか、電子申請的なものやあまり取り扱ったことのない許認可などを申請すると、前例がないといって書類を受け取ってもらえなかったりすることが希にあります。東京や大阪などの都市では当たり前に行われていることだと思うのですが、どうしてもこういった役所対応にイライラしてしまいます。法律的には正しいのに、話が通じない場合はどうしたらよいのでしょうか?』

ご相談のような役所と意見が食い違うケースで、もっともやってはいけないことのひとつが、役所の味方になってしまうことです。最初はお客様のためにと思って仕事をしていても、途中で役所から「これでは書類は受け取れない」という指導を受けた後、「役所がこういっているので、なんとか引き下がってもらえますか?」と態度を翻してしまうと、いうまでもなく今後お客様から仕事を任せてもらえることはなくなってしまいます。

たしかに、役所が一度決めたことを覆すことはなかなか難しいといえます。私たちはその現実を十分知っています。しかし、ここで重要なのはあなたがどちらのために一所懸命にやったかという事実です。残念ながら法的な要件について解釈が合わず、取り下げざるを得ないケースも長く士業をやっていればあることでしょう。しかし、最後までお客様の側で仕事をしなければなりません。

ですから、最後までお客様の側に立って努力しなければなりません。前例がなければ、他都道府県での前例を探してくる、法的根拠を明示する。さまざまな方法があります。最後までお客様の依頼を実現させるために尽力するべきです。

■それでも、キレたら終わり
なかには、法的な根拠や手続きの不備などの実務的な要件以上に、窓口担当者の態度が悪く、立腹してしまうこともあるでしょう。しかし、相手も人間です。喧嘩腰の相手に気持ちよく対応するはずがありません。ここはひとつ大人の対応をすることが重要です。あいさつ、ねぎらいの言葉などを忘れずに、広い心で接していきましょう。そうすることによって、担当者の感情も変わってくるはずです。

私の場合も、時に役所の担当者と意見が合わないことがあります。なかには明らかに間違っているにもかかわらず、高飛車な態度で指導してくる担当者もいました。私も人間なので頭にきます。しかし、そこは堪え忍んで「こうした細々したことを伺って申し訳ないのですが」「お忙しいところすみません」「丁寧にありがとうございます」と伝えます。戦意のない人には、誰しも警戒を解くものです。そこからひとつひとつ要件を詰めていくのです。

「そんな態度は自分のプライドが許さない」と感じるかもしれません。しかし、仕事を受けた以上、最終目的はあなたのプライドを守ることではなく、依頼を遂行することです。愚痴があれば同業者にでも研修会の際に話してください。「仕事が取れない」「行政書士は食えない」などの後ろ向きな愚痴は誰も面白くありませんが、実務に関した同業者間の仕事の前向きな愚痴は盛り上がるものです。そして、いうまでもありませんが、キレたら終わりです。もし、法的な要件を満たしていても受理されないなどの場合は、その事実をお客様に伝えてから次の手段に移りましょう。

■上級官庁に相談しよう
長年行政は「縦割り」といわれ、行政サービスの非効率が批判されてきましたがその名の通り書類の提出先には上級官庁があります。たとえば、会社の設立登記や不動産登記業務を行う法務局は各地域の出張所や支局の上に法務局、地方法務局があり、さらにその上に民事局があり、最後には法務大臣という組織図になっています。支局や出張所で「ノー」といわれた案件に関しては、上級官庁である地方法務局などに相談することで解決できることがあります。

縦割りの名前のとおり、上級官庁からの指導は比較的効果があります。ですから、自分自身が取り扱う業務を担当する役所が、どういった組織図になっているかを事前に確認しておくことが重要でしょう。最初からお客様の事情で法的要件を満たしていない場合など、そもそも喧嘩以前に正当性の主張すらできないような場合を除けば、こういった対処法で解決することができます。それでも難しい場合には、20年30年のベテラン先生に教えを請うこともひとつの手段です。あくまでも目的は仕事の遂行。お客様のために広い心と視野で取り組んでください。

横須賀輝尚 パワーコンテンツジャパン株式会社 代表取締役/特定行政書士

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【プロフィール】
yokosuka2021-1
1979年、埼玉県行田市生まれ。専修大学法学部在学中に行政書士資格に合格。2003年、23歳で行政書士事務所を開設・独立。2007年、士業向けの経営スクール『経営天才塾』(現:LEGAL BACKS)をスタートさせ創設以来全国のべ2,000人以上が参加。著書に『プロが教える潰れる会社のシグナル』(さくら舎)、『会社を救うプロ士業 会社を潰すダメ士業』(さくら舎)、『資格起業家になる! 成功する「超高収益ビジネスモデル」のつくり方』(日本実業出版社)、『お母さん、明日からぼくの会社はなくなります』(角川フォレスタ)、他多数。

公式サイト https://yokosukateruhisa.com/
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