![]() ■資格の持つ本来の意味を間違えないようにする 資格を取得する最大のメリットは、それだけで「信頼」が手に入る点です。もちろん、弁護士や行政書士のように、その資格を持たなければできない仕事もありますので、そういった仕事ができるようになることもひとつのメリットですね。 ここで間違いがないように、資格についての解説をしておきます。 いまではさまざまな資格がありますが、大きく分けて「公的(国家)資格」と「民間資格」があります。言い換えれば、国や関係省庁が認めた「パブリックな資格」か、民間企業・団体が定めたいわゆる「民間資格」かのどちらかです。 そして、このパブリックな資格には、弁護士や行政書士などその資格を取らないと仕事ができない資格があります。この仕事のことを一般的に「独占業務」と呼びますが、私はこの独占業務を持てる資格を「スキル資格」と呼んでいます。新しく仕事をすることができるスキルが身についたという意味です。 これに対して、中小企業診断士のように国家資格ではあるけれど、資格特有の仕事、つまり独占業務がない資格もあるわけです。多くの検定などの資格も同じことが言えます。これらの資格は、その人の能力を表していますので、私は「スキル資格」に対して「ステータス資格」と区別して呼んでいます。 上記のように、私は大まかに分類していますが、「スキル資格」には大きな落とし穴があります。この罠は、スキル資格を持っていて、現在、大成功している人も一度は通るほど、ほとんどの人が陥ります。そして、その多くの人はこの罠に陥ったことで失敗します。 スキル資格を取ったら、持っていない人ができない仕事ができるようになるわけですから、有利なことばかりじゃないかと思われるかもしれませんが、実はそうではないのです。 ■資格を取ったら収入が落ちた? なぜ、スキル資格を持った人が失敗してしまうのか。人より何倍もの努力をして、勉強をして資格を取ったのに、なぜ収入が逆に落ちてしまうことがあるのか? それは「スキル資格の悪しき専業理想主義」が原因です。どういうことかというと、「スキル資格を取ったら、それ専業でいなければいけない。他のことをするのは邪道」という考え方があるからです。 たとえば、テレビでコメンテーターを務める弁護士を見れば、「あいつはもう弁護士じゃない。タレントだ」などと批判されることがあるでしょう。私も行政書士ですが、出版やセミナー、スクール運営などをしていると、「行政書士以外の仕事をするべきじゃない」とか、「あいつはもう行政書士ではない」などと言われることが、過去にはずいぶんありました。 最近は業界内でも専業であるべきという意見は少なくなりましたが、特に地方で開業する場合は先輩士業からの”アドバイス”があるかもしれませんので、あなたが悪しき慣習に巻き込まれてしまわないよう、典型的な2つの失敗パターンを具体的に見てみましょう。 ■「スキル資格の悪しき専業理想主義」がもたらす失敗パターン スキル資格を取ることで間違えてしまうのが、自分の過去のキャリアを無視してしまうことです。たとえば行政書士では、開業した多くの人が「行政書士としてこういう業務を扱っていきたいです」という言い方をします。 もちろんそれはかまわないのですが、ひとつうかがいたくなることがあります。それは「行政書士になる前って何をされていたんですか」という質問です。 この質問をすると、SEをやっていたとか、教員をやっていたとか、さまざまなキャリアが答えとして返ってきます。そう、多くの人は資格以外の要素のほうが、本来は多いはずなのです。 ところが、スキル資格を取ってしまうと、スキル資格の悪しき専業理想主義によって、スキル資格の業務範囲だけでなんとかしようとしてしまいます。 数字でたとえてみましょう。あなたが持っているスキル能力値を100とすれば、スキル資格が与えてくれる仕事の幅はせいぜい5くらいです。行政書士の資格を取ったとしたら、あなたが100、そして行政書士の資格を取ることができたので、105になります。本来はこういう形なのです。 ところが、スキル資格の悪しき専業理想主義があることによって、この「5」のみで勝負しようとしてしまうのですが、いままでやってきたことを無駄にしたくはないですよね?しかし、スキル資格を取ったほとんどの人が、こうした罠に陥っています。これがひとつめの失敗パターンです。「過去キャリア・リセットパターン」とでも呼んでおきましょう。 せっかくこれまでやってきたあなたのキャリアや経験をゼロにしてしまうのは、本当にもったいない。それに、フリーランスで動くときにはこの過去のキャリアが重要になってきますので、リセットしないように気をつけてください。 ■目的を忘れて失敗するパターン 2つめの失敗パターン。これに名前をつけるなら「目的忘却パターン」です。これも同じくスキル資格の悪しき専業理想主義からきているのですが、最初の目的を失ってしまう人がとても多いのです。 たとえば、実際にある例をあげましょう。法律を扱う行政書士の資格にあこがれて、その仕事で独立起業し、収入を上げ、家族を幸せにしたいと思い、行動を起こします。 まずは試験。無事合格したあとに、いよいよ開業します。 現在、開業して成功している人の中には、スキル資格の専業理想主義を貫いている人が少なくありません。そうすると、つい上手くいっている人の真似をしたくなるものですから、自分も成功するために行政書士の枠内でなんとかしようと実践し、そのうちそれ以外をやるのは邪道だと思い込む。 でも、枠内だけでなんとかしようと思うから、思うように収入は上がらない。収入が増えないと家族は不仲になる。それでも王道を行きたい。自分はセミナーなんかしない。出版なんかもってのほか。街の法律家として、お金はなくても地道に生きていくんだ…。 ちょっと待ってくださいと言いたい。「最初の目的はなんだったんですか?」と。 もともとの目的は、「行政書士でいること」なのか、それとも「成功すること」なのでしょうか。間違いなく目的は「成功すること」だったはずです。家族を不幸にして、望むような収入が得られないことが本来の目的だったのでしょうか?言われてみると当たり前なのですが、多くの人が2つめの目標忘却パターンに陥っています。 私自身も行政書士でいることが目的ではありません。行政書士を使って、自分の目標を達成することが目的なのです。自分の目標のために行政書士の資格を使い、過去のキャリアを使い、ビジネスを展開しています。スキル資格は活用するものであり、とらわれるものではないはずですから、忘れないようにしておきたいものですね。 横須賀輝尚 パワーコンテンツジャパン株式会社 代表取締役/特定行政書士 【関連記事】 ■人生を丸投げする「資格依存症」に陥る人の共通点(横須賀輝尚 経営コンサルタント) https://sharescafe.net/62376886-20250524.html ■資格で成功できる人とできない人の残念な差(横須賀輝尚 経営コンサルタント) https://sharescafe.net/62361623-20250517.html ■資格を取るだけで実績に勝る武器が手に入る(横須賀輝尚 経営コンサルタント) https://sharescafe.net/62333276-20250504.html ■カネなし・コネなしの23歳がたった1年で月収100万円を実現した方法(横須賀輝尚 経営コンサルタント) https://sharescafe.net/62317768-20250427.html ■本業以外の収入が伸びるコンサルが必ずやっている営業法(横須賀輝尚 経営コンサルタント) https://sharescafe.net/62287966-20250414.html 【プロフィール】 ![]() X(旧Twitter) : @yokosuka_ai ![]() シェアーズカフェ・オンラインからのお知らせ ■シェアーズカフェ・オンラインは2014年から国内最大のポータルサイト・Yahoo!ニュースに掲載記事を配信しています ■シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家の書き手を募集しています。 ■シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家向けに執筆指導を行っています。 ■シェアーズカフェ・オンラインを運営するシェアーズカフェは住宅・保険・投資・家計管理・年金など、個人向けの相談・レッスンを提供しています。編集長で「保険を売らないFP」の中嶋が対応します。 |