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梅雨入りとともに、「なんとなく頭が働かない」「集中できない」と感じる人が増える時期がやってくる。実はその不調、ただの疲れや気分の問題ではなく、気圧の変化に体が反応して起こる「気象病」が原因かもしれない。

ウェザーニュースの調査によれば、約7割の人が気象の影響による不調=「天気痛」を経験し、そのうち4人に1人は仕事を休むほどの支障を感じているという
(参照:天気痛調査2023 ウェザーニュース 2023/06/08)。

この“見えない不調”は、「怠けている」「気合が足りない」と誤解されやすい。だが実際には脳の働きにまで影響を与える生理的な現象であり、ビジネスのパフォーマンスにも深刻な影響を及ぼしてしまう。

そんな厄介な不調の正体とは一体何なのか? そして、どうすれば乗り越えられるのか? 理学療法士の視点から、気象病のメカニズムと、今日から実践できる対策法を解説する。

■なぜ、6月に判断力が落ちるのか? 気象病のメカニズム
気象病は、決して気のせいや怠けではない。むしろ、私たちの身体が自然と反応している科学的な現象である。しかし、上司や同僚から見ると「やる気がない」などと判断されてしまうことも多い。いまだに日本の職場では、気合で乗り切ることが美徳とされがちだが、気象病に精神論は通用しない。

では、なぜ梅雨の時期に気象病が起こるのだろうか。これには、人間の耳の奥にある「内耳」が関係している。内耳は気圧センサーとして働いている。飛行機で耳がキーンとなるのも、内耳が気圧の変化を感知している証拠だ。

梅雨時期に雨が続き、気圧が急激に下がると、内耳が過敏に反応し、自律神経が乱れる。交感神経が過剰に働くと、脳への血流が一時的に低下し、結果として集中力や判断力が低下することがある
(参照:気象変化と痛み 佐藤純 脊椎脊髄 2015)。

つまり、脳に必要な酸素や栄養が届きにくくなることで、思考のキレが鈍くなったり、頭痛やめまいという症状につながってしまうのだ。その結果、仕事のパフォーマンスに支障をきたす。

気象病とは我慢や精神論で乗り越えるものではなく、科学的に正しく理解し、向き合いながら対策していくべきものなのである。

また、この体調不良は個人だけの問題に留まらず、チーム全体のパフォーマンスにも影響する。

頭痛や倦怠感、イライラや集中力の欠如は、プロジェクトの遅延、意思決定の精度の低下、対人関係のストレス増加など、見えない形で組織全体に悪影響を及ぼす可能性がある。

だからこそ、気象病は「個人の怠慢」と見なすのではなく、マネジメント上の重要なリスク要因と捉えるべきなのだ。

■今日からできる!理学療法士がすすめる“気象病対策”
では、どうすればこの”見えない不調”を乗り越えられるのか。気象病に苦しむビジネスパーソンに向けて、今日からできる簡単な対策を3つ紹介する。

(1)耳のマッサージ
両耳を包み込むように手を当て、円を描くように10回まわす。朝昼晩に行うことで耳周りの血流が促進され、気圧変化への過敏な反応を和らげる。

(2)首の付け根のマッサージ
うなじの中央から指2本分外側のあたりを、両手の親指で小さく円を描くようにマッサージする(10秒程度)。

ここには、気圧変化で最も緊張しやすい後頭下筋群(深層筋)があり、自律神経にも影響を及ぼしやすい。この部分をピンポイントでほぐすことで、自律神経のバランスを整える効果が期待できる。

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(3)天気予報アプリ等を活用した戦略的スケジュール管理
低気圧が予想される日はなるべく軽めの業務や調整にとどめ、高気圧の日に集中力を要するタスクや判断を集中させると良い。そのために、天気予報アプリなどを活用して毎日気圧をチェックするのがおすすめだ。

たとえば「頭痛ーる」というアプリは、気象病に注目して気象予報士が考案した体調管理ツールで、場所に応じた気圧の変動状況と頭痛の起こりやすい時間帯を予測してくれる。

以上のように、ちょっとしたマッサージやアプリで手軽に対策できるので、ぜひ取り入れてみてほしい。

■仕事の成果は“体調戦略”で決まる時代に
かつては「気合で乗り切れ」が常識だったかもしれない。しかし、現代のビジネスシーンにおいては、科学的根拠に基づいた体調管理こそが、持続可能なパフォーマンスを支える鍵となる。

プロアスリートが天候や体調に合わせて試合やトレーニングを調整するように、ビジネスパーソンもまた、自らの体調の波を理解し、セルフケアを取り入れ、戦略的に働くことが重要だ。

雨の日の不調を「怠け」と決めつけず、「身体からのサイン」として正しく受け止めることが、キャリアを守る最初の一歩となるだろう。


木城拓也 理学療法士・整体 ピラティス事業「株式会社理学ボディ」代表取締役社長

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【プロフィール】
kishiro
2011年に理学療法士国家試験に合格後、都内のスポーツ整形外科クリニックに勤務し、プロスポーツ選手や箱根駅伝選手などの施術を担当。そこで培った臨床経験と専門的な知識をもとに、2017年「青山筋膜整体 理学BODY」1号店を表参道に開業。翌年に株式会社理学ボディを設立し、代表取締役社長に就任する。

「最高の技術で世界中を健康に」という理念のもと、“通わせない整体”を目指した理学療法士による整体と、理学療法士監修のピラティススタジオ「ルルト」を展開し海外進出も果たす。現在では日本と東南アジアを中心に140店舗以上を運営している。

公式サイト https://kabushikigaisya-rigakubody.co.jp/

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