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仮想通貨を個人で保有している場合、課税は譲渡や交換、支払いなどの取引時に発生します。しかし、法人においてはこの扱いが異なるのをご存じですか?

法人で仮想通貨を保有している場合、期末時点の時価で評価し、含み損益は課税の対象として扱われることになります。このことを時価評価課税と言います。しかし、一定の条件を満たすことで、期末の時価評価課税を避けることも可能です。

今回は、法人が仮想通貨の期末評価を行う際の基礎知識と、どのような場合に時価評価課税を避けることができるかについて見てみたいと思います。

■法人における仮想通貨の期末評価の概要
●時価評価が必要かどうかの分類
法人においては、「原則として」時価評価が必要になります。

ですが、以下のコインであれば、時価評価をしなくてもよい仮想通貨として、時価評価課税を避けることができます。

・特定自己発行暗号資産
・特定譲渡制限付暗号資産

上記の2つに関しては、後述します。

「原則として時価評価が必要」と表現したのは、法人が保有している暗号資産はほとんどのケースにおいて時価評価が必要になるためです。

まとめると、法人が保有する仮想通貨で

・特定自己発行暗号資産に該当するもの→時価評価課税の対象外にできる
・特定譲渡制限付暗号資産に該当するもの→時価評価課税の対象外にできる
・上記のいずれにも該当しない→時価評価課税が必須

となります。

●時価評価を行う場合の手順
法人で所有する仮想通貨は、期末日時点の市場価格を基準として評価を行います。具体的には以下の手順を踏みます。

1.基準となる取引所や指標を選定する
仮想通貨の時価は、取引所によって若干の差額が生じています。仮に1つの仮想通貨取引所を利用しているのみであれば、その取引所の時価を採用することが有効ですが、複数の仮想通貨取引所を活用しているのであれば、Coinmarketcap、Coingeckoなどの仮想通貨の時価を採用するのが良いでしょう。

2.期末時点の価格を取得する
上記で選定した取引所や指標にて、決算期末日における時価を算出します。算出された時価をもとに、仮想通貨を時価で評価し、含み損益は利益もしくは損失として法人の決算に入力します。

■法人で時価評価が不要な暗号資産
法人で保有する暗号資産であっても、特定自己発行暗号資産と特定譲渡制限付暗号資産は時価評価課税の対象外として扱うことができます。

●特定自己発行暗号資産とは?
特定自己発行暗号資産とは、次の2つの要件を両方とも満たす仮想通貨です。

要件1:自己が発行し、かつ、その発行の時から継続して自己が保有する暗号資産

要件2:その暗号資産の発行の時から継続して譲渡についての制限その他の条件が付されているもの

これは、いわゆる自社発行の暗号資産のことを指しており、自社発行暗号資産は時価評価課税の対象外として扱うことができます。

●特定譲渡制限付暗号資産とは?
特定譲渡制限付き暗号資産とは、次の2つの要件を両方とも満たす仮想通貨となります。

要件1:その暗号資産につき、特定条件(譲渡制限など)が付されていること

要件2:その内国法人が、その暗号資産につき、暗号資産交換業者が認定資金決済事業者協会を通じて特定条件が付されていることを公表するためのその暗号資産交換業者に対する特定条件通知その他の一定の手続を行っていること

これは、譲渡制限などの処理がかけられている暗号資産のことを指します。

ですが、要件2にあるように、譲渡制限がされていることを、暗号資産交換業者(仮想通貨取引所)に通知していることも必要となります。

そのため、要件2を満たしてくれる仮想通貨取引所でなければなりません。日本の仮想通貨取引所であれば、期末の時価評価課税除外の申請を受け付けてくれる取引所も存在しますので、その取引所に依頼する必要があります。

ですが、海外の仮想通貨取引所やDEX(分散型取引所)においては、要件2を満たすことはないので、海外の仮想通貨取引所やDEXを使い、法人で保有している仮想通貨は時価評価課税が必須ということになります。

●みなし譲渡課税に留意
法人が自己の計算において有する暗号資産について、その事実に応じた認識時においてその暗号資産を譲渡(みなし譲渡)し、かつ、その暗号資産を取得したものとみなして、その法人の各事業年度の所得金額の計算をすることとなります。

これはつまり、法人が保有している暗号資産を特定自己発行暗号資産もしくは特定譲渡制限付暗号資産に変換した時点で、変換時の時価と取得価額との差額を利益もしくは損失として認識することとなります。

例えばですが、1BTCを1,000万円で購入し、決算期末付近で1BTC=1,500万円にまで時価が上昇していた場合に、このタイミングで特定譲渡制限付暗号資産として譲渡制限をかけたとしても、購入時から特定譲渡制限付暗号資産として変更するまでの間の時価の上昇分である500万円は課税の対象となってしまうのです。

■専門家に相談がおすすめ
ここまで、法人で仮想通貨を保有している場合の時価評価課税と、その対象外について見てきました。特定自己発行暗号資産や特定譲渡制限付暗号資産についてはかなり詳細な条件がありますので、実際に法人保有の仮想通貨を時価評価課税の適用除外にしたい場合には、専門家に相談することも検討してください。


村上ゆういち 税理士・公認会計士

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【プロフィール】
murakami
新日本監査法人(現EY新日本有限責任監査法人)、横河電機株式会社、アカウンティングフォース税理士法人での勤務を経て、2020年に村上裕一公認会計士事務所設立。現在は「魔界の税理士」としてSNSやyoutubeでも活躍し、仮想通貨(暗号資産)・NFT・ブロックチェーンゲーム領域を専門とする。

公式サイト https://crypto-cpa.jp/
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