![]() 世界を変えた起業家などの話を聞くと、自分には到底できない、そんな力を持つのは一部の人間だけだと考えがちです。しかし、「ひらめき」や「創造性」は、特別な才能や環境が必要なものではなく、誰もが平等に持つ“宝物”だと、経営コンサルタントの島青志さんは言います。実際、ダイソンやAirbnb、世界的作家の村上春樹も、始まりのきっかけは身近なひらめきでした。 今回はときにあなたの人生を変えるほどの力を持つ「ひらめき」の大きな力について、『いつもひらめいている人の頭の中(島 青志・幻冬舎)』から再構成してお届けします。 ■「ひらめき」「創造性」は誰もが平等に持っている 一つの「ひらめき」が自分の人生を変える。あるいは世界を変える。 世界を変えた起業家たちのようなビジネス(あるいは他のこと)を創造して、誰もが認める成功者になる。 これは特別に選ばれた人だけができることで、自分には絶対無理だと思っていませんか? もちろん誰もが「人生を変え、世界を変えるような成功者になることができる」などと言うつもりはありません。スティーブ・ジョブズやビル・ゲイツになるには、人並み外れた努力や運が欠かせないだろうと私も思います。 ただ一つ言えるのは、彼らのように「ひらめき」や「創造性」でビジネスのアイデアを見つけることや、人生を変えることは、誰もが可能であるということです。 「神様は、金持ちにも貧乏人にも1日24時間という時間だけは平等に与えてくれた」という表現がありますよね。私はそれに「ひらめき」「創造性」を加えたいと思います。 多くの人は(その気になれば)努力は自分にもできると考えていますし、日曜日の競馬場の混雑や年末の宝くじ売り場の行列を見れば、運だって自分に降ってくるかもしれないと期待しているのもわかります。 でも、ひらめきや創造性は自分には無縁だと思っている。こういうのは特別に選ばれた才能あふれる人だけのものだと認識しているかもしれません。 私はどちらかと言えば、あべこべなんじゃないかと考えています。 努力や運の問題については他の方の本にお任せしたいと思いますが、ひらめきや創造性というのは誰もが持っている能力です。そしてその能力を、ビジネスや日常生活の場で、さまざまな問題解決に役立てることも、誰もができます。 ただ残念ながら、自ら蓋をしてしまっている人、自分自身にリミッターを設けている人が非常に多い。 このことは社会の中で「周囲とうまくやっていく」ためには必要というか、やむを得なかった面はあります。しかし自ら蓋をしているうちに、いつしか、その中に宝物が入っていることを、忘れてしまった人が多いように感じます。 まずは、私たち誰もが創造性という宝物を持っていること、ひらめきや創造性は神様が私たちに平等に与えてくれたものということは、覚えておいていただきたいと思います。 ■ダイソンもAirbnbも元はちょっとした「ひらめき」 世界を変えたビジネスモデルやベストセラーとなったアイデア。あるいは人生を変えた「ひらめき」。 これらはいつどのようにして起こるのでしょうか。その多くは、日常の何気ない瞬間、ちょっとしたことがきっかけのようです。 あるイギリス人の話です。彼は自分の家の掃除機が、すぐにゴミを吸えなくなってしまうことに不満を感じていました。当時最も高性能とされていた掃除機に買い替えても、同じ問題が繰り返されます。 中を見てみると、紙パックでゴミが目詰まりを起こして、吸う力が落ちてしまっていることがわかりました。 ある日、彼は近所の製材所に置いてある「サイクロン式の遠心分離機」を目にします。この瞬間、彼の頭にアイデアが浮かびました。 「この技術を掃除機に応用すれば、紙パックが不要で、吸う力も持続する掃除機がつくれるのではないか?」 ジェームズ・ダイソンのこのひらめきが、世界中でヒットした「ダイソンのサイクロン掃除機」を生みました。この発明のきっかけとなった遠心分離機自体は、それほど特別な装置ではありません。工場などではよく使われており、製造業に携わる人ならその仕組みも理解しているでしょう。 つまり、多くの人にこの発明のチャンスはあったのです。ただダイソンが他の人と少し違っていたのは、日常の不便さに対する観察力と、それを解決しようとして「ひらめき」を実現させた行動力でした。 もう一つ、今度はアメリカの事例を見てみましょう。ブライアン・チェスキーとジョー・ゲビアという美術大生が、卒業後シリコンバレーにやってきて新たなビジネスを始めようとしました。しかしビジネスはなかなかうまくいかず、二人はアパートの家賃さえ払えない状況に追い込まれてしまいます。 そんな折、サンフランシスコでインダストリアルデザインのカンファレンスが開催されました。この会議には全米から多くのデザイナーが集まり、ホテルは満室になると予想されていました。当然ホテル代も高騰していました。 そんな状況を見ているときに、二人は自分たちのアパートの一室を貸し出し、簡易ベッドと朝食を提供するというアイデアを思いつきました。 そのキャッチフレーズが「Air Bed and Breakfast(エアベッドと朝食)」、つまり現在の「Airbnb」の始まりです。このアイデアも、身近な問題に対するひらめきから生まれたものです。 彼らがやったことも難しいことではなく、宿泊に困っている人に宿を提供した、それだけのことです。 あなたにも友達の家に泊まったり、知り合いを自分の家に泊めたりという経験があると思います。もちろんこれは身元が確かな人だからできることですが、それならお互いの身元をきちんと保証できるような仕組みを創ればいいじゃないか。 Airbnbは、個人が自宅の空き部屋を簡単に貸し出せるという全く新しい仕組みで、瞬く間に世界中で広がり、ホテルに宿泊するのが当たり前という旅行の常識を変えてしまいました。 ■「ひらめき」は人生を決める瞬間 こうした成功例に共通するのは「ひらめき」の力です。新商品やビジネスモデルをつくるときばかりではありません。ひらめきは人生そのものを決定づけることもあります。 村上春樹さんは小説家になる前、都内で小さなジャズバーを経営していました。借金を抱えていたこともあり、働き詰めの毎日だったそうです。 『僕の二十代は、朝から晩まで肉体労働をし、借金を返済することに明け暮れました。(中略)でもそのあいだも暇さえあれば本を手に取って読んでいました。どれだけ忙しくても生活がきつくても、本を読むことは音楽を聴くことと並んで、僕にとって変わることのない大きな喜びであり続けました (引用:『職業としての小説家』 村上春樹 新潮社)』 そんな風に月日は過ぎましたが、30歳に近づいたある日の午後、プロ野球の観戦中に贔屓(ひいき)の選手がヒットを打った瞬間、何の脈絡も根拠もなく「そうだ、僕にも小説を書けるかもしれない」とひらめいたそうです。 『そのときの感覚を、僕はまだはっきり覚えています。それは空から何かがひらひらとゆっくり落ちてきて、それを両手でうまく受け止められたような気分でした (引用:同上)』 村上さんは試合が終わった後その足で、新宿の紀伊國屋へ行って万年筆と原稿用紙を買い、その晩から小説を書き始めました。そうして書き上げたのがデビュー作の『風の歌を聴け』です。 こんなのはたまたまで、野球観戦と小説なんて何の関係もないじゃないか…と思われたかもしれません。でも実は、このエピソードは教科書的と言っても良いくらい「ひらめきのプロセス」そのものを表わしています。 もし「ひらめきの瞬間」がこのとき来ていなかったとしたら、「作家・村上春樹」は誕生していなかったかもしれないのです。 こういう人生を決める瞬間は、あなたにもこれから訪れるかもしれません。もちろんあなた自身がそれを見逃さなければの話ですが。 ひらめきは、今あなたのすぐそばにあるかもしれません。 島青志 イノベーションデザイナー/ブルーロジック株式会社 代表取締役/経営コンサルタント 【関連記事】 ■「いつも仕事が時間オーバーする人」が見落としているスケジュールの落とし穴 (森田ゆき 経営者) https://sharescafe.net/62431705-20250623.html ■仕事のタイパが大幅に上がる「A4プロジェクト設計図」の書き方(森田ゆき 経営者) https://sharescafe.net/62431691-20250620.html ■遊びを優先するだけで、タイパが劇的に変わる理由 (森田ゆき 経営者) https://sharescafe.net/62431626-20250618.html ■変動金利は危険なのか?(中嶋よしふみ FP) https://sharescafe.net/60041384-20221223.html ■世帯年収1560万円の共働き夫婦は、9540万円の湾岸タワーマンションを買えるのか? その1・生活費は800万? (中嶋よしふみ ファイナンシャルプランナー) https://sharescafe.net/61186482-20240125.html 【プロフィール】 ![]() 島青志 イノベーションデザイナー/ブルーロジック株式会社 代表取締役/経営コンサルタント イノベーションデザイナー。アート、デザイン、システム論を基盤に、経営理論や最新の脳科学研究を統合した「イノベーションデザイン」を研究し、企業コンサルティングや社員研修を通じて実践的なアプローチを提供するブルーロジック株式会社代表取締役。リゾートホテル業や会計事務所で接客や経営に携わった後、インターネット業界へ転身。インターネットベンチャーやネット広告会社で新規事業を数多く立ち上げ、2010年に独立。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究所研究員。著書に『熱狂顧客のつくり方』『ソーシャルメディアの達人が教えるリンクトイン仕事革命』。 公式サイト https://blurlogic.jp ![]() シェアーズカフェ・オンラインからのお知らせ ■シェアーズカフェ・オンラインは2014年から国内最大のポータルサイト・Yahoo!ニュースに掲載記事を配信しています ■シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家の書き手を募集しています。 ■シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家向けに執筆指導を行っています。 ■シェアーズカフェ・オンラインを運営するシェアーズカフェは住宅・保険・投資・家計管理・年金など、個人向けの相談・レッスンを提供しています。編集長で「保険を売らないFP」の中嶋が対応します。 |