![]() 「なぜか初対面で距離を置かれてしまう」「商談の空気がうまくつかめない」――第一印象で損をしているビジネスパーソンは少なくありません。人の第一印象は平均6秒で決まり、そこで問われるのが「人あたりの良さ」だと、元JAL国際線の客室乗務員で現在は人材教育コンサルタントの香山万由理氏は言います。 今回は、人当たりの良さを作り出す5つの要素と、第一印象を制する方法について、『仕事ができる人は、「人」のどこを見ているか(香山万由理・光文社)』から再構成してお届けします。 ■「するめ」になってはいけない 私はJALで「するめになってはいけない」という教育を受けてきました。 「するめ」は、いかの内臓を取って干したもの。お酒のおつまみの定番です。CAは、この「するめ」になってはいけないのです。一体どういうことでしょうか。 これは「お客さまにわざわざ嚙んでもらわなくても、すぐに自分の人間性を伝えなければならない」ということです。 するめは嚙めば嚙むほど味が出てきます。しかしながら、人と接する仕事の場合、それではいけません。会った瞬間に好感を持っていただく。これがプロとしての在り方である、とJALでは叩き込まれました。 CAの場合、お客さまが抱く第一印象が良くないと、挽回するチャンスがなかなか巡ってきません。一人のお客さまと接することができる時間が限られているからです。特に国内線はフライト時間が短く、たとえば羽田・伊丹線は、フライトタイムがわずか1時間程度。となると、一人の乗務員が一人のお客さまに接している時間は1分もありません。 最初にマイナスの印象を持たれてしまうと、お客さまはその印象のまま降機されてしまいます。それが原因で、次は別のエアラインを選ばれるかもしれません。だからこそ、どんな気分や精神状態であっても、制服を着たらバシッとスイッチを入れ、上質で快適な空間をプロとして提供しなければならない。それが、JALのCAなのです。 ■第一印象を覆すのは至難の業 人が第一印象で判断しているもの、それは、「安全か危険か」「味方か敵か」「好きか嫌いか」です。これは人類の本能です。 第一印象で得た情報は、無意識にスコーン!と強く入り込みます。これは、心理学で「初頭効果」と呼ばれるものです。初頭効果とは、物事や人に対して〝最初〞に示された情報が、最も記憶や印象に定着しやすいという心理効果のことです。「人は第一印象で決まる」とよくいわれるのはこのためです。 ですから、この人は×だなと思ったら、2回目に会ったときも、3回目に会ったときも×をつけてしまう傾向にあります。なぜかというと、私たち人間は自分の直感を信じたい生き物だからです。 少しでも相手の嫌なところを見つけてしまい、やはり私の直感は合っていた、嫌な人だった……と最初に感じた印象を確かめるようなことをしてしまうのです。最初についた印象を覆すのは至難の業です。 だとしたら、第一印象で×をもらうよりも、○をもらったほうが、先々ラクになると思いませんか。もちろん、第一印象は良くなかったけれど、しだいにいい人に思えてきた……などと途中で印象が変わることもありますが、それはあくまで例外。 同じ学校や職場だったりするなど、毎日顔を合わせる環境にあり、相手の良いところにも目を向けられるようになっていたからにすぎないのです。ビジネスの場合、「そのうちに自分の人柄をわかってくれるだろう」と期待しないこと。相手にするめを嚙んでもらってはいけないのです。 ■ポイントは「あたしひみこ」 人の第一印象は平均6秒で決まるといわれています。この6秒間で何を見ているのでしょうか。それは、「人あたり」です。あの人は「人あたりがいい・人あたりが良くない」ということは、日常会話でもよく出てきます。 「人あたり」とは、相手に与える印象や雰囲気のことです。それが柔らかく相手が受け入れやすいものなら、「人あたりがいい」と評価されるわけです。「あの人は、人あたりはいいんだけど、実は……」ということもありますが、それはある程度の関係性ができてからの話。最初は、何といっても「人あたりの良さ」がたいせつです。 ある上場企業のトップの方に、こんなことを伺ったことがあります。その方は新入社員の採用面接で、「この学生が周りと仲良くやっていけるかどうか」「入社後に伸びるかどうか」を、「人あたりの良さ」で判断しているそうです。「人あたりの良さ」があると相手に不快な思いをさせることがないため、ビジネスにおけるたいていの困難は乗り切れるとおっしゃるのです。 では、人あたりの「良い・悪い」は、何をもって判断されているのでしょうか。くわしくお話を伺うと、次の5つの要素に集約できることがわかりました。 (1)「あいさつ」(2)「たいど(態度)・しぐさ」(3)「ひょうじょう(表情)」(4)「身だしなみ」(5)「言葉づかい」 これらが合わさって、その人の「人あたり」の良さを総合的に演出し、相手が受ける第一印象を決定づけるのです。 このお話を伺ってから、お客さまをお迎えするときや、初対面の人にお会いするときなど、いつもこの5つを意識するようになりました。 そして、いざというとき、すぐに思い出せるように、5つの頭文字を取って語呂合わせにしてみました。それは、「あたしひみこ」です。 現在はJALを退職し、法人企業や自治体、医療機関などに対して、接遇マナー研修などのお仕事をさせていただいているのですが、今でも人に会う前は「あたしひみこ」「あたしひみこ」と心の中で何度もつぶやいています。 もちろん研修でも、受講生さんに「あたしひみこ」がビジネス、いえ、それだけでなく人間関係において、いかにたいせつかをお伝えしています。 香山万由理 一般社団法人ファーストクラスアカデミー代表理事/人財教育コンサルタント 【関連記事】 ■カスハラ?単なるクレーム?対策義務化で難しい線引きが求められる現場 (李怜香 社会保険労務士) https://sharescafe.net/62437993-20250623.html ■「いつも仕事が時間オーバーする人」が見落としているスケジュールの落とし穴 (森田ゆき 経営者) https://sharescafe.net/62431705-20250623.html ■経営者への報告は型が9割「伝える技術」より重要な「聞きやすい構造」とは (濵口誠一 中小企業診断士) https://sharescafe.net/62431743-20250620.html ■変動金利は危険なのか?(中嶋よしふみ FP) https://sharescafe.net/60041384-20221223.html ■世帯年収1560万円の共働き夫婦は、9540万円の湾岸タワーマンションを買えるのか? その1・生活費は800万? (中嶋よしふみ ファイナンシャルプランナー) https://sharescafe.net/61186482-20240125.html 【プロフィール】 香山万由理 一般社団法人ファーストクラスアカデミー代表理事/人財教育コンサルタント 接遇・ホスピタリティ教育の専門家、人財教育コンサルタント。立教大学卒業後、JAL日本航空に入社。国際線CAとして10年半乗務。在籍中にCS(顧客満足)表彰を受け、皇室・VIPフライトに乗務。退職後「品性と人間力を備えた人材を育てる学校」として、研修コンサルティング会社「一般社団法人ファーストクラスアカデミー」設立。官公庁、医療機関、企業などで、2万人以上に研修実績。リピート率97.2%。「接遇力」と「業績」を同時に成長させ、会社の格を上げる組織作りを実現。航空機事故の解説として、テレビ朝日「グッドモーニング」「羽鳥慎一のモーニングショー」、フジテレビ「イット」等、メディア出演。JCAA日本キャビンアテンダント協会理事を兼任。航空会社出身者のセカンドキャリア構築支援に従事。また、高野山真言宗僧侶としての顔も持ち、研修では仏教哲学も伝えている。 公式サイト https://first-class.academy/ Instagram : @mayuri.kayama ![]() シェアーズカフェ・オンラインからのお知らせ ■シェアーズカフェ・オンラインは2014年から国内最大のポータルサイト・Yahoo!ニュースに掲載記事を配信しています ■シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家の書き手を募集しています。 ■シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家向けに執筆指導を行っています。 ■シェアーズカフェ・オンラインを運営するシェアーズカフェは住宅・保険・投資・家計管理・年金など、個人向けの相談・レッスンを提供しています。編集長で「保険を売らないFP」の中嶋が対応します。 |