![]() 大企業に勤めていても副業が推奨される今、起業に興味を持つ人は増えています。そんな中、常に注目されているのが資格の取得。なにもないところから資格を使ってどう稼ぐのか?資格を取ることで人生を逆転させた、経営コンサルタントで士業(特定行政書士)でもある横須賀輝尚氏の著書『ごく普通の人でも資格を取ってきちんと稼げる本』から、再構成してお届けします。 ■ダブルライセンス、トリプルライセンスの甘い罠 資格取得を支援する予備校では、「この資格を取ったら、次はこれだ」というような、いわゆるダブルライセンス、トリプルライセンスの指導をします。 ダブルライセンス、トリプルライセンスについては、「自分自身がやりたいことにどうしても必要であれば、取ればよい」というのが、私の結論です。逆の言い方をすれば、資格がたくさんあるからといって、成功できるとは絶対に言えないということです。 私は、やりたいことが決まっていれば資格はひとつで十分だと思っています。どうしても行政書士と社労士の事務所をしたいということであれば、2つ取ればいいと思いますが、「行政書士だけでは不安だから」という理由で別のライセンス取得に走るのは、あまりお勧めしません。 ダブルライセンス、トリプルライセンスは言葉の響きがよく、(1)仕事の幅が広がる、(2)自分に自信が持てる、などのメリットもあり、それだけで成功しそうな雰囲気を感じますが、実際には以下のようないろいろなデメリットがあります。 ・デメリット1:資格がひとつでも複数でも、スタートは同じ いざ資格を持ってフリーランスとして活動したとしても、ゼロから営業活動をはじめるという点では、スタートラインは同じです。資格がたくさんあるからといって、宣伝活動が楽になるわけではありません。ですから、スタート時に有利ということはあまりありません。 ・デメリット2:仕事の幅が増えても、1日は24時間しかない たとえば社労士、行政書士、司法書士とトリプルライセンスを持っていたとしても、1日が24時間なのは変わりません。つまり、1人の仕事量には限界があるのです。組織化してうまくやる方法もありますが、1人でさまざまな種類の仕事をこなすのは、効率も悪く非常に大変です。そういったデメリットがあることも知っておきましょう。 ・デメリット3:複数資格を目指すということは、時間もかかる たくさんの資格を目指すということは、たくさんの試験を受けるということです。前述のとおり時間は貴重です。本当にやりたいことでなければ、資格取得に時間をかけるよりは、自分が本当にやりたいことに目を向けるべきなのです。 ・デメリット4:いざフリーで動いたときに仕事が頼みにくい 資格をたくさん持っていると、何をしてくれる人かわからなくなってしまう可能性があります。 たとえば、「ソフトウェア開発技術者」だけならば、なんとなく「ソフトの開発なんかをしてくれる人かな」と思えますが、これに「テクニカルエンジニア」や「システム監査技術者」「プロジェクトマネージャー」などをつけられたら、何をしてくれる人だかわからなくなってしまいます。 こういう「なんでも屋さん」は一見仕事が集まりそうですが、人の記憶に残りにくく、実は仕事が集まりにくいのです。 ■学生は資格浪人をしてはいけない? また、学生のうちに資格を取る場合には、注意が必要です。就職活動がうまくいかず、もしかしたら大学4年生の段階では就職をあきらめ、資格浪人のような形で就職浪人を考えている方もいらっしゃるかもしれません。 もちろん、集中して資格に受かることは大事です。ときには勉強だけに取り組むこともあるでしょう。しかし、できれば勉強だけの20代は送ってほしくないのです。 理由は2つあります。ひとつは、就職は学生である今しかできないこと。この機会を逃したら、その企業を選べる状況は二度とこないかもしれません。正社員経験がないと、転職すら難しくなる可能性があります。 「いつか独立起業するから就業経験なんて要らない」という意見もありますが、そうした方は普通のビジネス習慣やマナーを知らずに苦労します。これは私が身をもって経験しています。 正社員になったもののほんのわずかな期間でリストラ。さらに何もないところから始めたので、なんの商習慣やビジネスマナーも知らない状態でした。この状況から「普通になる」のは至難の業です。 逆に言えば、独立起業はいつでもできます。会社を辞めればすむことですから。しかし、就職活動はいましかできません。ですから、就職活動が面倒である、大変であるなどのような「逃げ」の理由で、資格浪人は絶対にしないでください。 2つめの理由。それは、20代がいちばん無理して(頑張って)働ける年代だということです。つまり、働いてほしいのです。 大人になってからの1年2年は、キャリアの積み方で人生が大きく変わります。 たとえば、25歳から資格試験の勉強しかしてこなかった30歳と、25歳からさまざまな経験を積んできた30歳では、どちらの人が伸びそうな気がしますか? 多くの方が後者を選ぶはずです。 あえて私が言うことではないかもしれませんが、時間は貴重です。人生は有限ですから、無駄に使うことはできるだけ避けたいところです。 大きな成功をおさめた人には、必ず「量」の下積みがあります。たとえば、上場した企業の社長も例外なく率先して、若いころから長時間労働をしています。私も23歳のとき、フリーランスで活動することを決めてから、1日12時間から14時間は最低働いています。そうした下積みは若いころにしておくことが重要なのです。 30代、40代になれば、確実に体力は落ちます。その年代になって量稽古を積もうとしても、身についていかないし、健康を損なうことすらあります。ですから、早いうちから働いてほしいのです。 学生の方には、このような2つの理由から、資格浪人をしないで働くことをお勧めします。30代になったときに、働いた経験がないというのは独立起業するにも就職するにも、苦労することは目に見えています。そこからの突破口がないというわけではないのですが、相当な努力が必要になってきます。 若いうちに、可能なかぎり戦略的にできることをやっておきましょう。 横須賀輝尚 パワーコンテンツジャパン株式会社 代表取締役/特定行政書士 【関連記事】 ■「稼げる資格」を選ぶと失敗する理由 (横須賀輝尚 経営コンサルタント) https://sharescafe.net/62431759-20250620.html ■資格取得の難易度と収入に相関性はあるのか? (横須賀輝尚 経営コンサルタント) https://sharescafe.net/62413425-20250611.html ■取りたい資格をカタログで選ぶな。資格選びの正しい手順 (横須賀輝尚 経営コンサルタント) https://sharescafe.net/62413003-20250610.html ■なぜ?難関資格を取ったのに収入が落ちる人のあるある失敗パターン(横須賀輝尚 経営コンサルタント) https://sharescafe.net/62386114-20250529.html ■人生を丸投げする「資格依存症」に陥る人の共通点(横須賀輝尚 経営コンサルタント) https://sharescafe.net/62376886-20250524.html 【プロフィール】 ![]() 横須賀輝尚 パワーコンテンツジャパン株式会社 代表取締役/特定行政書士 士業専門の経営コンサルタント。2007年に日本では初めてとなる士業向けに経営スクール「経営天才塾(現LEGALBACKS)」を創設し、のべ全国3,000名以上の士業から相談を受け、相談件数は優に2万件を超える。主な著作に『会社を救うプロ士業 会社を潰すダメ士業』(さくら舎)、『資格起業BIBLE』(技術評論社)などがあり、25冊20万部超の著者。2023年から士業のための生成AI・ChatGPT活用研究を開始。最新刊『「ムダ仕事」も「悩む時間」もゼロにする GPTsライフハック』を2024年11月に技術評論社より刊行。週刊ダイヤモンド、毎日新聞などメディア掲載も多数。 X(旧Twitter) : @yokosuka_ai ![]() シェアーズカフェ・オンラインからのお知らせ ■シェアーズカフェ・オンラインは2014年から国内最大のポータルサイト・Yahoo!ニュースに掲載記事を配信しています ■シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家の書き手を募集しています。 ■シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家向けに執筆指導を行っています。 ■シェアーズカフェ・オンラインを運営するシェアーズカフェは住宅・保険・投資・家計管理・年金など、個人向けの相談・レッスンを提供しています。編集長で「保険を売らないFP」の中嶋が対応します。 |