unnamed
イラストを描くなど、創造的な分野でもめざましい進化をとげているように見えるAIですが、実は人間の創造力とは決定的に違っています。人間にあってAIにはない創造力の本質を知ることが、私たちの未来を開く一歩となります。

今回は、創造性におけるAIと人間の決定的な違いについて、『いつもひらめいている人の頭の中(島 青志・幻冬舎)』から再構成してお届けします。



■AIと人間の創造性の違い
『文章は、「転」。〈自分の言葉〉で書く技術』(フォレスト出版)の著者・近藤康太郎さんは、AIが「起」や「承」、あるいは「結」を生成できたとしても、「転」を生み出すことはできないと指摘しています。

それは、「転」が、ある出来事に直面したときの感情や考えから生まれるものであり、そこには個々の人間が持つ「自分」という存在が深く関わっているからです。どのように生き、何を感じ、どんな風に世界を見ているのか――そういった経験や視点が「転」の本質をつくり上げています。

今はChatGPTのような生成AIが、コンテンツを生み出せる時代になりました。

AIは豊富な事実を組み合わせることに長けていますが、「転」、つまり独自の視点や感情を生み出すことはできません。それは、AIが自分の経験や感情からくる発想を持たないからです。

近藤さんは「文章を書くことは、自分の考えをそのまま書くことではない」とも述べています。

もし単に自分の思考をそのまま文章にしていたら、そこには驚きや発見は生まれません。私自身も今実感しているところですが、文章を書くことで新しい地点に自分が導かれることがあります。

文章とは「導きの糸」のように、自分の思考や感性を掘り下げるツールとも言えます。

もちろん創造性やひらめきとも密接に関わっています。

創造性は、インプットした情報を組み合わせて新たな視点を生み出すプロセスです。読んだ本や見た映画、体験した出来事が思いがけない形で結びつき、新しいアイデアとして現れることがあります。

AIもまた、大量のデータを基に情報を組み合わせて新しいものを生み出していますが、そのプロセスにおいて決定的な違いが生じています。

人間が情報を組み合わせるとき、そこには感情や美意識、価値観が関わってきます。私たちは自分の経験や感性に基づいて、何に興味を持ち、何を選び取るかを決めます。

一方で、AIは感情を持たないため、統計的な確率に基づいて最適な組み合わせを選びます。結果として、AIが生み出すのは「一般的に好まれる」ものであって、誰も考えたことのないような独創的な発想をすることは難しいでしょう。

人間が持つ創造性の力は、感情や経験、価値観から生まれます。それが新しい視点やアイデアに結びつき、時には自分でも驚くような発想をもたらします。文章を書くことは、その創造性を引き出すための一つの手段です。

自分の中にある考えを整理し、文章にする過程で、新たな発見が生まれることがあります。特に「転」を意識して書くことで、より深い洞察や創造的なひらめきを得ることができるでしょう。

AIが私たちの日常に広く浸透する時代において、私たちが創造的であり続けるためには、反復的なタスクや情報の整理(特に「承」の部分)はAIに任せる一方で、自分の感情や経験から生まれる「転」を大切にすることが必要です。

AIの力を借りながらも、人間ならではの独自の視点を持ち続けることで、より深い創造性を発揮できるでしょう。それこそが、AIにはない、人間だけが持つ「創造性」の力です。

■AIは決してひらめかない
AIは人間の知識を模倣し、その最先端まで到達することができます。

しかし、AIにできるのは既存の情報を組み合わせることに過ぎず、未知の領域へ自ら踏み込むことは、今後も難しいでしょう。

例えば、芸術作品の創作において、AIは過去のスタイルや技法を取り入れて作品を創ることはできても、人間の感情や独自の視点から生まれる新しい表現を自ら見つけることはできません。

科学の分野でも、AIは膨大なデータを基に仮説を立てることはできますが、未知の現象を直感的に捉え、斬新なアイデアを創出するには限界があります。

AIが新しい料理のレシピを提案することはあっても、未知の文化や新しい食材をもとにしたレシピを自発的に生み出すことは難しいでしょう。そもそもAIには「美味しい」と感じる力がありません。

私たち人間にとって「美味しい」という感覚は、生存に必要な判断の一部です。この感覚は、進化の過程で私たちが培ってきたもので、栄養豊富なものを選び、危険なものを避けるためのものです。

「美味しい」に限らず「感覚」「感性」というものは、私たちの健康や生存を支える大切な機能なのですね。

このように私たちの身体には、40億年にわたる生命の進化の歴史が刻まれています。この長い進化の中で培われた感覚や感情、そして感性や美意識こそが、今の私たちに宿る創造力の源です。

このDNAに刻まれた創造力は、私たち全員が持っているかけがえのない力です。新しいものを生み出す力は、誰にでも備わっています。なぜなら私たち人類も決して進化の終着点ではなく、まだまだ進化の途中であり通過点だからです。

ひらめきは、特別な人だけのものではありません。日々の生活の中で、新しいことに興味を持ち、小さな挑戦を続けることで、私たちもひらめきを手にすることができます。

小さな挑戦を積み重ね、夢見ることを忘れず、素晴らしい未来を信じ続けることで、私たちはそのひらめきを得ることができます。

未知の世界を探求し、新しいアイデアを形にする力は、私たち一人ひとりの中に息づいています。

AIは便利なツールとして、私たちの生活や仕事を効率的にサポートしてくれます。しかし、未来を思い描き、そのビジョンに向かって計画を立て、行動を起こす力は私たち人間にしかありません。

私たちには、未来を思い描き、その未来に向かって進んでいく力があります。そして、それを現実にすることができます。

大切なのは、自分の中に眠る可能性を信じることです。そうすればひらめきや創造性も必要に応じて自由に操ることができるでしょう。

私たち一人ひとりがこの力を活かし、自らの未来を切り開くことで、誰もが共感に基づいた創造を行い、お互いが認め合い、世界も少しずつ良い方向に進化していくことができると信じています。


島青志 イノベーションデザイナー/ブルーロジック株式会社 代表取締役/経営コンサルタント

【関連記事】
■アイデアをひらめきたいときは「何もしない」が一番な理由(島青志 経営コンサルタント)
https://sharescafe.net/62457024-20250629.html
■ひらめきは「美意識」によって起こる―アートとビジネスの意外な共通点(島青志 経営コンサルタント)
https://sharescafe.net/62457011-20250629.html
■アイデアの源泉は雑多な知識をむさぼり食うこと――ひらめきを生む脳のプロセス(島青志 経営コンサルタント)
https://sharescafe.net/62456833-20250628.html
■変動金利は危険なのか?(中嶋よしふみ FP)
https://sharescafe.net/60041384-20221223.html
■世帯年収1560万円の共働き夫婦は、9540万円の湾岸タワーマンションを買えるのか? その1・生活費は800万? (中嶋よしふみ ファイナンシャルプランナー)
https://sharescafe.net/61186482-20240125.html

【プロフィール】
cover-RT8osIF3aaQ2LwWPKHZ0bpspvYN5pb7C - 島青志

島青志 イノベーションデザイナー/ブルーロジック株式会社 代表取締役/経営コンサルタント

イノベーションデザイナー。アート、デザイン、システム論を基盤に、経営理論や最新の脳科学研究を統合した「イノベーションデザイン」を研究し、企業コンサルティングや社員研修を通じて実践的なアプローチを提供するブルーロジック株式会社代表取締役。リゾートホテル業や会計事務所で接客や経営に携わった後、インターネット業界へ転身。インターネットベンチャーやネット広告会社で新規事業を数多く立ち上げ、2010年に独立。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究所研究員。著書に『熱狂顧客のつくり方』『ソーシャルメディアの達人が教えるリンクトイン仕事革命』。

公式サイト https://blurlogic.jp

この執筆者の記事一覧

このエントリーをはてなブックマークに追加
シェアーズカフェ・オンラインからのお知らせ
シェアーズカフェ・オンラインは2014年から国内最大のポータルサイト・Yahoo!ニュースに掲載記事を配信しています
シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家の書き手を募集しています。
シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家向けに執筆指導を行っています。
シェアーズカフェ・オンラインを運営するシェアーズカフェは住宅・保険・投資・家計管理・年金など、個人向けの相談・レッスンを提供しています。編集長で「保険を売らないFP」の中嶋が対応します。