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司法書士という職業を知っていても、具体的にどんな仕事をしているのかまでは知らない人が多いのではないでしょうか。不動産や会社の登記は司法書士の仕事の王道ですが、実はそれだけではありません。

高齢化が進む現在、認知症や相続に関する困りごとが増えています。こうしたときにも、司法書士は窓口となり、弁護士や税理士と連携しながら問題解決をサポートします。

突然親が認知症になったり、相続が発生したりしてどうしていいか分からずパニックになる、ということは誰にでも起こり得ることです。あらかじめ司法書士の仕事内容を知っていれば、そんなときも冷静に対応することができるでしょう。

この記事では、司法書士として、意外と知られていない司法書士の仕事内容についてお伝えしたいと思います。

■不動産登記と商業登記は王道の仕事
司法書士の仕事の中心は、不動産登記と商業登記です。これらは司法書士の王道とも呼ばれる業務で、専門性の高さが求められます。

家や土地を購入したり、売却したりする際「この不動産は私のもの」と証明する必要があります。この手続きが不動産登記で、法務局に申請書を提出して名義変更を行います。

たとえば、新しく家を買った場合「この家は私の所有物です」と法務局に届け出ることで、正式に所有権が認められます。この申請手続きを代理で行えるのは、司法書士だけです。

不動産登記の依頼主は、不動産会社や銀行、個人のクライアントなど多岐にわたります。特に住宅ローンを組む場合や、相続で不動産の名義を変更する際には、司法書士の専門知識が欠かせません。書類の作成や法務局とのやり取りをスムーズに進めることで、クライアントの負担を軽減します。

商業登記も司法書士の仕事の王道です。会社を設立する際「この会社が今日から存在します」という証明を法務局に届け出る必要があります。これが商業登記で、いわば会社の「誕生日」を公式に記録する手続きです。定款や登記申請書の作成、役員変更や資本金の変更など、会社の重要な変更も商業登記に含まれます。

この業務では、中小企業の経営者やスタートアップの創業者から依頼を受けることが多く、司法書士は法的な手続きを正確に進めることで、企業のスムーズなスタートを支えます。商業登記もまた、司法書士にしかできない専門性の高い仕事です。

■相続登記が2024年から義務化
近年、司法書士の業務で特に注目されているのが相続に関する相談です。相続は、誰に相談すればいいのかわからないことが多く、司法書士はそんなときの窓口となります。

相続が発生すると、亡くなった方の不動産を子や配偶者に名義変更する必要があります。これが相続登記で、不動産登記の一種です。たとえば、父親が亡くなり、子どもが家や土地を相続する場合、法務局に「この不動産は今後、子どもの所有物です」と申請します。この手続きも司法書士が得意とする分野です。

相続登記は2024年から義務化され、放置すると罰則が科される可能性もあります。そのため、司法書士への相談が増加傾向にあります。相続税の計算が必要な場合は税理士、遺産分割で揉めている場合は弁護士と連携しながら、司法書士は登記手続きを担当します。

相続では、不動産だけでなく、預金口座や株式の名義変更も必要です。亡くなった方が複数の銀行口座を持っていた場合、それぞれの銀行で手続きを行うのは時間と労力がかかります。忙しい人にとって、これは大きな負担です。

ここで司法書士の出番です。司法書士は、クライアントに代わって銀行や証券会社での手続きを代理で行えます。必要な書類を揃え、解約や名義変更をスムーズに進めることで、クライアントの時間を節約します。この「預金の名義変更」は、意外と知られていない司法書士の業務の一つです。

■認知症になっても安心して生活するために
高齢化社会の進展に伴い、司法書士の業務で特に需要が高まっているのが成年後見と民事信託です。これらは、認知症などによる判断能力の低下に備えるための重要な仕組みです。

認知症になり、自分で財産管理や契約ができなくなると、デイサービスの申し込みや家の売却、銀行口座の管理が難しくなります。また、オレオレ詐欺や悪徳商法の被害に遭うリスクも高まります。

こうした場合に役立つのが成年後見制度です。司法書士が成年後見人に選任され、認知症の方の代わりに財産を管理します。たとえば、詐欺的な契約を結んでしまった場合、司法書士がその契約を取り消したり、家の売却が必要な場合は代理で判断したりします。

実は成年後見業務は、司法書士が最も多く手がける分野の一つで、家族の安心を支える重要な役割を果たしています。

認知症になる前に、自分の財産を信頼できる人に預けておきたいというニーズもあります。それに応えるのが民事信託です。たとえば、父親が「自分が認知症になったら、息子に財産を管理してほしい」と考えたとします。この場合、預金や不動産を息子に「信託」することで、名義を息子に移します。

ただし、これは贈与ではありません。あくまで父親のお金を「預かっている」状態で、息子は父親のためにその財産を使わなければなりません。この仕組みを支えるのが、司法書士が作成する信託契約書です。契約書には「父親のために使うこと」「違反したら罰則があること」などを明記し、安心して財産を預けられるようにします。

民事信託は認知症対策として注目されています。ただし、認知症になってしまうと契約自体が結べなくなるため、早めの相談が重要です。一方、すでに認知症になった場合は、成年後見制度で対応します。

■司法書士に相談する最大のメリットは、専門性と効率性
このように、司法書士の仕事は生活のさまざまな場面にかかわります。特に、相続や高齢化に関するニーズが高まる現代では、司法書士の役割がますます重要になっています。

「相続の相談は誰にすればいいかわからない」「認知症の親の財産管理をどうすればいいか悩んでいる」といった悩みを持つ人は多いですが、司法書士はその窓口となり、弁護士や税理士と連携しながら、手続きのプロとして問題解決をサポートします。相続で揉めている場合は弁護士、税金の問題なら税理士が主導しますが、登記や書類手続きは司法書士が担当というように。

司法書士に相談する最大のメリットは、専門性と効率性です。法務局や銀行での手続きは複雑で時間がかかりますが、司法書士は正確かつ迅速に処理し、忙しい人の時間を節約します。

また、相続や認知症対策では、クライアントの状況に応じた最適な提案ができるのも強みです。たとえば、民事信託と成年後見のどちらが適切か、家族構成や財産の状況をヒアリングしながらアドバイスします。

■司法書士は「生活に寄り添う法律のプロ」
司法書士の仕事は、不動産登記や商業登記といった王道の業務から、相続、成年後見、民事信託、預金の名義変更まで多岐にわたります。特に、相続や高齢化に関するニーズが高まる現代では、司法書士の役割がますます重要になっています。

「家を買った」「会社を設立したい」「親の認知症が心配」「相続の手続きがわからない」といった生活のさまざまな場面に司法書士は対応します。司法書士は「生活に寄り添う法律のプロ」なのです。

島田雄左 司法書士/株式会社スタイル・エッジ代表取締役/格闘家


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【プロフィール】
shimada
1988年、福岡県生まれ。実業家、司法書士、格闘家。24歳で司法書士事務所を開業。国内トップ規模の士業グループに成長させる。その後、自身の経営経験を元に、株式会社スタイル・エッジ代表取締役に就任。共創型ビジネスモデルとして士業や医業のコンサルティングを行っている。YouTubeやXで法律、仕事、マネーリテラシーなどさまざまな情報を配信中。著書に『士業経営』『人生で損しないお金の授業』(共に税務経理協会)がある。

公式サイト https://styleedge.co.jp/
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