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市場の縮小や人手不足により、ビジネス環境が年々厳しくなっていく中で、「1年に1回しか営業するな」と提言されたら、あなたは荒唐無稽だと感じるでしょうか? しかし、「これこそ企業が儲かる体質に変わる秘策だ」と語るのは、展示会営業の専門家で中小企業診断士の清永健一氏。その理由を、氏の著書『展示会のプロが見つけた儲かっている会社は1年に「1回」しか営業しない理由!』から読み解きます。



■WEB時代の営業活動に潜む落とし穴
現代はWEB全盛時代と言われ、多くの企業がWEBサイトを持ち、オンライン営業やマーケティングに注力しています。しかし、実は中小企業がWEBで成果を出すことは、非常に難しいのが現実です。

すでに知名度がある大企業であれば、企業名や製品名で検索されることで、多くの見込み客と接点を作ることができます。しかし、知名度や人材に乏しい中小企業がWEB広告を利用して見込み客との接点を作ろうとすると、たった1回の接点を得るために2万円以上の広告費がかかるケースも珍しくありません。

目標の接点数を獲得するためにどれだけのコストが必要なのかを考えると、泥沼に足を突っ込みかねない危険性をはらんでいる、と言わざるをえません。

また、WEBサイトを通じた情報提供は基本的に一方通行であり、訪問者の関心や反応をリアルタイムに把握できないため、一方的な説明になりがちです。見込み客があらかじめ好印象を抱いている大企業ならまだしも、そうではない中小企業が一方的な説明だけで購買意欲を喚起するのは、至難の業と言ってもよいでしょう。

さらに、既存顧客への訪問を増やしたり、新規顧客開拓のために頻繁に客先を訪れたりする従来の営業スタイルは、残業時間の増加を招き、働き方改革関連法案との間で企業を苦しめています。2020年4月からは中小企業にも時間外労働の上限規制(原則月45時間・年360時間)が適用されており、違反すれば罰則や企業名の公表のリスクもありますから、これを無視するわけにはいきません。

また、単に客先へ顔を出すだけの訪問では売上につながりにくい時代において、交通費やガソリン代、時間コストといった訪問費用もシビアに考える必要があります。頑張れば頑張るほど、売上は伸びずに得意先顧客も減り、商品単価が下がるといった悪循環に陥るケースも少なくないのです。

■「営業は年1回」の真意
このような厳しい状況を打破し、会社を「儲かる体質」に変える秘策こそが、年間わずか1回の展示会出展に営業活動を集中させるという考え方です。

あまり知られていませんが、展示会は東京ビッグサイトや幕張メッセなど有名どころの他にも、全国各地で年間約800回も開催されており、出展社数10万社以上、来場者1,400万人にも及ぶ一大産業なのです。

この「展示会営業術」を駆使すれば、中小企業でも年間1回の出展(多くの場合、展示会の会期は3日間)と1回分の出展コストだけで、その後1年分の優良な見込み客と接点を持ち、WEBの何倍も売上を増やすことができます。

加えて展示会営業最大の利点は、見込み客とリアルに対話できる点で、知名度の低い中小企業にとっては好感度を上げることのできる、またとないチャンスです。対話の中で見込み客に質問を促したり、関心に応じて訴求ポイントを変えたりすることで、効率よく相手の興味関心を喚起できます。

もちろん、成果を出すためにはリアルな営業活動だけでなく、例えば名刺交換した見込み客を自社サイトへ誘導したり、定期的にフォローメールを送ったりするなど、WEBを活用することも重要ですが、これらはすべて見込み客と接点を持った後のアクションですよね。

すべての起点となる「見込み客と接点を持つ」という点においては、少なくとも中小企業の場合、WEBよりも展示会の方が圧倒的に有効なのです。

年間1回の展示会出展で優良な見込み客と接点を持てば、その後の1年間は、展示会で接点を持った見込み客のフォローに集中するだけで済むのですから、費用対効果は抜群。さらに、質の高い顧客と出会えるため、営業担当の心労を軽くするという側面もあり、リソースが限られる中小企業にとって恩恵の多い営業方法であると言えるでしょう。

■「儲かる体質」への転換と生産性の向上
さらにこの「営業は年1回」という提言には、「生産性」も関係しています。

生産性は「アウトプット÷インプット」で計算できますが、営業活動におけるアウトプットは「売上・利益」であり、主なインプットは「顧客訪問」ですので、営業生産性は「売上・利益÷顧客訪問」で算出できると考えてください。

顧客訪問というインプットばかり増やし、売上や利益というアウトプットが増えなければ、営業生産性はどんどん低下し、頑張れば頑張るほど悪循環に陥ってしまう。これが、多くの真面目で意欲的な中小企業が、多大な努力にもかかわらず売上を伸ばせていない、あるいは減少させてしまっている現状の一因なのです。

ここで、実際に労働時間を短縮し、経費を削減しながら利益を上げている企業の実例を見てみましょう。

例えば、全国に展開する大手ファミリーレストラン「ロイヤルホスト」は、24時間営業を廃止し、来店客が多く利益が見込める時間帯に主力人員を配置しました。その結果、全店舗平均で営業時間が3時間短縮されたにもかかわらず、売上は7%アップしたのです。

また、Wifiサービスを展開する「UQコミュニケーションズ」は、業務の再構築を行い、顧客獲得効果の少ない事業を廃止して、手間がかかる割に効果が薄い事業から撤退しました。これにより、一人当たりの業務時間を月10時間を削減し、残業時間は改革前の約半分になった一方で、顧客獲得件数は1.5倍に増加したといいます。

これらは大企業の事例ですが、この生産性向上の考え方は中小企業にも応用可能です。無駄な営業活動を排し、リソースを効率的に集中投下することで、中小企業でも大きな成果を上げられることは、私がコンサルティングを通じて実証しています。

資金力にも人材にも限りがある中小企業だからこそ、効果の高い方法にリソースを集中投下することが重要ですし、展示会出展回数を増やしていくことで、さらにその効果を増幅させることも不可能ではないのです。

中小企業が元気になれば、当然そこで働く人にも還元できます。苦しい中で頑張っている全ての中小企業が、展示会営業を活用することで無駄をなくして「儲かる体質」に変わり、大きく飛躍されることを心から願う次第です。

清永健一 株式会社展示会営業マーケティング代表取締役 中小企業診断士 展示会営業(R)コンサルタント

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【プロフィール】
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清永健一 株式会社展示会営業マーケティング代表取締役 中小企業診断士 展示会営業(R)コンサルタント

株式会社展示会営業マーケティング代表取締役。中小企業診断士、展示会営業(R)コンサルタント。奈良生まれ、東京在住。神戸大学経営学部卒。
展示会を活用した売上アップの技術を伝える専門家。支援先企業からは、集客・受注・売上が大幅に増加したと好評の声が多数あがる。「日経MJ」、「NHKラジオ総合第一」など多くのメディアで取材を受けている。支援実績は1300社を超え、ほぼ毎週、東京ビッグサイトに出没している。NHKラジオ総合第一で展示会の未来について言及するなど、展示会業界活性化にも尽力。展示会活用に関して、テレビ等出演のほか、行政、公益法人、金融機関などで講演多数。 著書の『最新版 飛び込みなしで新規顧客がドンドン押し寄せる展示会営業術』、『展示会のプロが発見!儲かっている会社は1年に1回しか営業しない』など合計7作はいずれもamazon部門1位を獲得している。

公式サイト https://tenjikaieigyo.com
X(旧Twitter) @tenzikai

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