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朝、起きた瞬間から頭が重い。会議中もボーっとし、大事なプレゼンにも集中できない。特に夏の時期に多く感じるこのような疲れ。「睡眠時間が足りなかったかな」などと簡単に片づけてしまいがちだが、夏の場合には時間よりも睡眠の「質」に気を配る必要がある。

夏は夜でも蒸し暑く寝苦しいため、どうしても睡眠の質が下がりやすい。睡眠の途中で目が覚めてしまう人も少なくないだろう。睡眠の質が悪ければ、翌日のパフォーマンスに影響が出るのは当然だ。

多くの人は「眠くなったから寝る」と、シンプルに行動しているだろう。しかし、それでは夏の快眠には不十分といえる。快眠を支える二大要素は「温度」と「自律神経」だ。暑い夏はこれらの最適な状態が崩れやすい。だから、寝る前にこの2つを整えるための準備が重要になる。

準備といっても、ちょっとしたことでいい。この記事では、理学療法士の視点から、夏の朝をスッキリさせる「入眠前の準備」についてお伝えしたい。

■夏の夜のエアコン設定は何度がいいのか
まず眠りの質にとって重要なのは「温度」だ。

私たちの体は、深部体温がゆるやかに下がることで眠気が訪れるしくみになっている。ところが、寝室の温度が高すぎると、体が冷えず、深い眠り(徐波睡眠)や夢を見る睡眠(レム睡眠)に入りづらくなってしまう。

まず眠りの質にとって重要なのは「温度」だ。

私たちの体は、深部体温がゆるやかに下がることで眠気が訪れるしくみになっている。ところが、寝室の温度が高すぎると、体が冷えず、深い眠り(徐波睡眠)や夢を見る睡眠(レム睡眠)に入りづらくなってしまう。

エアコンを使っている場合でも、設定温度が高すぎると深部体温がうまく下がらず、寝つきの悪さにつながる。 また、睡眠中に何度も目が覚める中途覚醒も、温度・湿度の影響を強く受けることが報告されている(参考:Okamoto-Mizuno et al., Sleep, 2004)。

対策としておすすめなのが「就寝1時間前に25℃程度で部屋を冷やし、就寝時は26℃前後に設定する」という方法だ。この温度帯は深部体温の低下を助け、睡眠の質を高めやすいことが複数の研究で示唆されている。

実際、26℃という室温が最も睡眠効率を高めたとする報告があり、26℃・28℃・30℃で比較した実験では、26℃で深部体温がスムーズに低下し、寝つきも早く、夜間の覚醒時間も短い傾向が示されている(参考:Sagawa et al., J Physiol Anthropol, 2017)。

冷えすぎが気になる場合は、おやすみモードや風向や風量などの調整で体への負担を考慮することも大切である。

■入眠に向けて体を「整える」という考え方
深い睡眠に関係するもう一つの重要な要素は「自律神経」だ。

自律神経は、呼吸や心拍、体温などを無意識に調整する神経系だ。睡眠時は交感神経(活動モード)から副交感神経(休息モード)への切り替えがスムーズに行われることで、体と脳がしっかりと休息に入る。

ところが、暑さや体の緊張状態が続くと交感神経が優位なままになり、体は“興奮モード”を引きずってしまう。よって、特に夏はこの切り替えを助けるために、入眠に向けて体を「整える」ことが重要となる。

「睡眠前に体を整える」という感覚は、サウナで体験する「整う」状態と似ている。 サウナでは、高温環境によって交感神経活動が一時的に立ち上がり、その後水風呂や外気浴で副交感神経が優位になり、心身が急速に弛緩する。

サウナ後に眠気を感じやすくなるのも、副交感神経活動の上昇が、その理由の一つであると報告されている(Kukkonen-Harjula et al.、Annals of Medicine、1989; Hussain & Cohen, J Evid Based Complementary Altern Med, 2018)。そしてこの仕組みは、自宅で簡単に再現可能なのだ。

前述したエアコンによる室温調整やゆっくりとした深呼吸などのリラクゼーション手法、そして次に紹介するようなストレッチを組み合わせることで、「整った」状態で眠りにつくことが可能となるだろう。

■【寝る前の10分】理学療法士がすすめる2つの快眠ストレッチ
入眠前に体を整えるための簡単なストレッチを2つ紹介したい。どちらもベッドの上で手軽に取り組めるものだ。

(1)キャット&カウ(背骨と呼吸の調整)
背骨をゆるめながら呼吸を整えることで、迷走神経を刺激し副交感神経優位への移行を助ける効果が期待できる。やり方は以下の通りである。

・四つ這いになり、息を吐きながら背中を丸める
・息を吸いながら背中を反らせる
・深い呼吸に合わせて、5〜6回ゆっくり繰り返す

(2)股関節周りのストレッチ
背骨とつながる骨盤や股関節まわりの筋をリラックスさせるストレッチは、深部体温の下降を助け、入眠準備を整えるのに効果的だ。また、体幹回りの筋緊張をほぐし、呼吸が深くなりやすくなる点でも、入眠への準備に適している。やり方は以下の通りである。

・ 仰向けに寝て両膝を立てる
・ 両膝をそろえて左右にゆっくり倒す
・ ゆったりと呼吸をしながら、左右交互に10〜15回繰り返す

■「眠る」のではなく「整えて眠る」
忙しい現代人にとって、睡眠時間を確保すること自体が難しい日もある。だが、睡眠の質は時間ではなく、眠る前に体と環境をどう整えたかよって大きく変わる。

エアコンの温度を1℃調整する。10分だけストレッチを行い、自律神経と呼吸を整える。このシンプルな習慣が、翌朝の集中力や判断力を静かに支えてくれる。

「朝から疲れている……」を卒業する鍵は、“冷やす・ゆるめる・整える”である。今日から、眠りを「戦略」に変える一歩を踏み出してほしい。

木城拓也 理学療法士・整体 ピラティス事業「株式会社理学ボディ」代表取締役社長

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【プロフィール】
kishiro
2011年に理学療法士国家試験に合格後、都内のスポーツ整形外科クリニックに勤務し、プロスポーツ選手や箱根駅伝選手などの施術を担当。そこで培った臨床経験と専門的な知識をもとに、2017年「青山筋膜整体 理学BODY」1号店を表参道に開業。翌年に株式会社理学ボディを設立し、代表取締役社長に就任する。

「最高の技術で世界中を健康に」という理念のもと、“通わせない整体”を目指した理学療法士による整体と、理学療法士監修のピラティススタジオ「ルルト」を展開し海外進出も果たす。現在では日本と東南アジアを中心に170店舗以上を運営している。

公式サイト https://kabushikigaisya-rigakubody.co.jp/

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