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仮想通貨投資で利益が出たときに欠かせないのが損益計算。ところが、利益額を決めるうえで重要となる取得価額の計算方法には「総平均法」と「移動平均法」があり、何が違うのか、どちらがいいのかと投資家を悩ませるポイントでもあります。

本記事では、評価方法としての総平均法と移動平均法の違いや、それぞれの計算例、注意点、実務での選び方について、仮想通貨専門の税理士の立場から解説します。

■仮想通貨の損益計算の基本
仮想通貨で利益が出るのは、基本的に売却やスワップなどを行ったときです。

計算式としては以下のとおり。

「利益 = 売却額 − 取得価額(取得単価)」

この「取得価額(取得単価)」の算出方法として、「総平均法」か「移動平均法」のいずれかを選ぶ必要があります。

■評価方法の違い~総平均法と移動平均法~
仮想通貨の評価方法として認められている総平均法と移動平均法の概要と特徴は下記のとおりです。

・総平均法:1年間の取得金額と数量の平均で評価。個人の原則方式。計算がシンプルで管理しやすいが、年末になるまで損益が確定しない。

・移動平均法:取得の都度、単価を更新し損益が確定するため、期中での損益把握ができる。法人の原則方式。精度は高いが計算が煩雑になりやすい。

■実例で計算
以下のようなBTC取引の例で、評価額と利益を比較してみましょう。

【事例】
・1月:BTCを100万円で1枚購入
・3月:BTCを200万円で1枚購入
・5月:BTCを250万円で1枚売却
・11月:BTCを300万円で1枚購入

<総平均法での計算>
・年間購入額:100 + 200 + 300 = 600万円
・年間購入枚数:3枚
・評価額(平均単価):600 ÷ 3 = 200万円
→ 5月の売却益:250万 − 200万 = 50万円

<移動平均法での計算>
・1月購入後:単価100万
・3月購入後:合計300万 ÷ 2枚 = 単価150万
・5月売却益:250万 − 150万 = 100万円
・11月購入後:150万 + 300万 = 合計450万 ÷ 2枚 = 単価225万

■総平均法と移動平均法での計算の違い
上記が、総平均法と移動平均法の計算方法の違いによる影響額となります。

総平均法においては、1年間の購入合計で計算するために、11月などの年末付近に高い価格で購入することで、期中の利益を押し下げることが可能となります。

対して、移動平均法は期中で損益が確定するために、今回の事例のケースにおいては、総平均法よりも高い利益が計算されることとなりました。

■評価方法の注意点4つ
総平均法と移動平均法の適用に関しては、税務上で留意する事項が主に4つ存在しています。

(1)個人は「総平均法」、法人は「移動平均法」が原則
事前に税務署に届け出をしていない場合、個人は総平均法が適用されますし、法人は移動平均法が適用されることとなります。

(2)届け出すれば逆の方式も選べる
個人でも「移動平均法」、法人でも「総平均法」が選択可能です。申告期限までに税務署に届出書を提出する必要があります。

(3)一度選んだら3年間は変更不可
一度選択した評価方法は、3年間は変更ができません。途中で気軽に変えることはできないため、慎重に選びましょう。

(4)コインごとに評価方法を分けられる(がツールに注意)
たとえば「BTCは移動平均」「ETHは総平均」とすることも可能です。ですが、損益計算ツールによってはコインごとに評価方法を変えるという設定ができないことがあるので注意が必要です。

■結局どっちがいいの?総平均法 vs 移動平均法
・トータル損益は同じ
長期的に見れば、どちらを使っても最終的な総損益は同じになります。

つまり、投資開始年度から投資の終了年度までのトータル損益は、総平均法でも移動平均法でも同じ計算結果となります。

・年度単位では差が出る
長期的にはトータル損益は同じではありますが、総平均法と移動平均法によっては、年度ごとの損益が異なる場合があります。

・実際はどちらが良い?
>個人投資家:総平均法が無難(届け出不要でシンプル)
>法人:移動平均法が基本(税務上の原則のため)

理想としては、状況に応じてシミュレーションできればベストですが、仮想通貨の損益計算は膨大な時間がかかります。確定申告の〆切(3月15日)に間に合わなくなるリスクもあるため、「原則通り」で進めるのが安全策です。

■まとめ
・仮想通貨の損益計算の方法には、「総平均法」と「移動平均法」の2種類が存在する
・個人では総平均法、法人では移動平均法が原則として適用される
・事前に税務署に届け出をすることによって、変更が可能なものの、3年間は変更ができないので留意
・コインの種類ごとに評価方法を選定することが可能だが、損益計算ツールが対応していないことが多いので留意
・総平均法でも移動平均法でも、トータルの損益(投資開始年度から投資終了年度まで)は同じであるものの、年度ごとの損益は差が出る


村上ゆういち 仮想通貨専門の税理士・公認会計士

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【プロフィール】
murakami
新日本監査法人(現EY新日本有限責任監査法人)、横河電機株式会社、アカウンティングフォース税理士法人での勤務を経て、2020年に村上裕一公認会計士事務所設立。現在は「魔界の税理士」としてSNSやyoutubeでも活躍し、仮想通貨(暗号資産)・NFT・ブロックチェーンゲーム領域を専門とする。

X https://x.com/Jeanscpa
公式サイト https://crypto-cpa.jp/
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