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「注文した商品が違っていたのに、謝ってもらえなかった。」
「コールセンターに電話したら、待たされたうえに対応がいまいちだった。」

商品やサービスを購入した際のこのような不満は、誰もが一度は味わったことがあるのではないでしょうか。

消費者として私たちには納得できるサービスを受ける権利があります。だからこそ、問題があれば不満を伝えたい。この感情自体はごく自然なものです。

しかし、企業のカスハラ対策が義務化されることとなった今、要望の伝え方次第で「カスタマーハラスメント(カスハラ)」と誤認されるリスクが高まっています。そうなれば、意見が正しく伝わらないどころか、迷惑なクレーマー扱いをされてしまうこともあります。

なぜ、カスハラ対策の義務化によりカスハラ誤認のリスクが高まっているのか。カスハラと捉えられることなく、企業への要望を適切に伝えるにはどうすればいいのか。カスハラ対策のアドバイスを行う社会保険労務士、産業カウンセラーの立場から解説します。

■「これくらいは許されるだろう」が通用しない時代
今年6月の法改正で、企業によるカスハラ対策が法的に義務化されることとなりました。それにより、従業員をカスハラから守るための対応マニュアルの整備が多くの企業で進んでいます。

厚生労働省はカスハラを「顧客や取引先からの、要求の妥当性を超えた言動で、労働者に苦痛を与える行為」と定義しています。しかし、この定義からは「ここからがカスハラ」と明確に線引きするのは難しいのが現状です。

つまり、
・長時間にわたり担当者を拘束する
・大声で威嚇する、暴言を吐く
・過剰な謝罪や、金品要求
といった分かりやすい例だけでなく、少し強めの言葉や攻撃的な態度でも、従業員が苦痛と感じればカスハラとなり得るのです。

人手不足も影響し、経営側としては「スタッフを守るため、対応には慎重にならざるを得ない」といいます。

各企業の対応マニュアルで警察への通報の目安が明言されることで、従来よりも通報のハードルが低くなっています。業務妨害や脅迫などと受け止められるリスクも高まっています。

「これくらいは許されるだろう」という感覚が通用しない時代となっているのです。

伝え方ひとつで誰もがカスハラと誤認されてしまうリスクがある現代社会。その中で消費者も自己防衛のために伝え方を工夫する必要があります。伝え方の知識をもつことは自身の身を守る大切な「消費者スキル」と言えるでしょう。

■企業に要望が正しく伝わる3つのコツ
では、商品やサービスに不満を感じたとき、具体的にどのような点に気を付けて伝えればいいのでしょうか。3つのコツを紹介します。

1.冷静になる時間を作る
不満を持ったその瞬間、感情的になっているのは当然のことです。そのまま要望をぶつけてしまうと、感情的な伝え方になる可能性が高いです。

感情的な態度や言葉は担当者を萎縮させ、本来受け取れるはずのサービスや対応を遅らせてしまう場合もあります。

怒りをコントロールするアンガーマネジメントにおいては、カッとなったら6秒待つことで冷静さを取り戻す「6秒ルール」が有名です。まずはひと呼吸おいて冷静になり、本当に伝えたいことは何かを整理してから伝えましょう。

深呼吸する、一度その場を離れて気持ちを落ち着ける、起きた事実と自分が望む要望を紙に書き出してみるなどの行動を行うと、冷静になりやすくなります。

次のような工夫も、冷静になるために有効です。

・事前にメモや箇条書きに整理して、何をどう伝えるかを明確にしておく
・メールや問い合わせフォームを使って文章化しながら考えをまとめる
・時間や状況に配慮し、混雑時は避ける、落ち着ける時間帯を選ぶ

2.「Iメッセージ」で自分の気持ちや要望を伝える
コミュニケーションの技術のひとつに「Iメッセージ」という考え方があります。相手を主語に「あなたが悪い」「どうしてくれるんだ」ではなく、「私は~と感じました」「私としてはこうしてもらえると安心です」などと、自分を主語にした伝え方にします。

攻撃ではなく要望と捉えられ、受け入れてもらいやすくなります。

【例】
・「(あなたたちは)ひどい対応ですね」 → 「私は今回の対応が残念でした」
・「ちゃんと謝ってください」 → 「私としては謝罪をしてもらえると気持ちが落ち着きます」

「協力してほしい」や「お願いしたい」という依頼スタンスで話すのもポイントです。ちょっとした言葉の選び方で、印象も対応も大きく変わります。

3.改善のための建設的な提案を添える
単なる不満で終わらせず「こうすればもっと良くなる」という目線で提案すると、要望の内容が建設的になり、受け入れられやすくなります。

【例】
・「待ち時間が長かったのは残念ですが、ネット予約ができると利用しやすいと思いました」
・「対応してくださった方は親切でした。今後もこういう方が増えると嬉しいです」

企業側が前向きに受け取れる要素も加えることで、双方にプラスになる関係構築につながります。

■伝える力で満足と安心を手に入れよう
消費者が商品やサービスに対する意見を伝えるのは権利です。ただし、その伝え方次第で本来の目的が果たせず、カスハラ加害者とみなされ思わぬトラブルを招く時代になっています。

大切なのは伝え方の工夫。冷静になること、Iメッセージで自分の気持ちや要望を伝えること、改善点を提案すること。こうしたスキルは、サービス利用時だけでなく、職場や家庭、あらゆるコミュニケーション場面でも役立つはずです。

伝える力を身につけて、不要な摩擦を減らし、安心してサービスを受けられる環境づくりにぜひ役立ててください。

李怜香 社会保険労務士・産業カウンセラー・ハラスメント防止コンサルタント

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【プロフィール】
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李怜香 社会保険労務士・産業カウンセラー・ハラスメント防止コンサルタント

岐阜県生まれ。早稲田大学卒業。1999年、宇都宮市にて李社会保険労務士事務所(現 メンタルサポートろうむ)を開業。2011年、産業カウンセラー登録。2012年、ハラスメント防止コンサルタント認定、(公財)21世紀職業財団ハラスメント防止研修客員講師に就任。2019年、健康経営エキスパートアドバイザー認定(第1期)。官公庁から大手企業、教育機関まで幅広い分野で研修実績がある、ハラスメント対策のエキスパート。ハラスメント外部相談窓口の相談対応や、事案解決支援の経験を活かした実践的な指導には定評があり、研修受講者からの満足度は90%以上。法的知識とカウンセリングスキルを組み合わせた独自のアプローチで、職場のメンタルヘルスやハラスメント防止の分野で、企業をサポートしている。

公式サイト https://yhlee.org/wp/

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