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アメリカでは「その髪型、素敵!」など、日常のなかで気軽に明るく、さりげない褒め言葉を交わす文化があります。アメリカ在住30年の起業プロデューサー・上野ハジメ氏は、これを「プチ褒め」として提唱しています。ポジティブな言葉のやり取りは豊かな人間関係の構築に役立ちます。今回は、上野氏自身が体験した「プチ褒め」の例を通じて、その実践ルールのひとつを紹介します。『人づき合いが超ラクになる「プチ褒め」の魔法(上野ハジメ・プレジデント社)』から再構成してお届けします。



■「プチ褒め」の実践ルール
プチ褒め上達の最短ルートは、やはり実践。ネットや職場で、ご近所の人間関係で、どんどん褒めて、褒めて、褒めまくりましょう!実践する上で気をつけたいことや、少し難易度が高そうな場面で参考にできる「実践ルール」の1つをご紹介いたします。

最初は違和感があったり、意図が通じなかったり、想定していた結果につながらないこともあります。

良かれ、と思って口にした言葉が、相手には逆に取られることもあるかもしれません。大切なのは、そこで止まらないこと。元いた場所へと、簡単に引き返さないことです。せっかく歩き始めたプチ褒めマスターへの道。「あれ、おかしいな」と思ったら、この実践ルールの項目に沿って場面を振り返り、あなたの言葉やトーンを見直してみてください。何かのヒントが見つかるはずです。

■実践ルール:自分が言われて嬉しかったことを覚えて使う
「人を褒めてください」と言われても、どんな時に、どんな言葉をかけたらいいのか戸惑う方も少なくないでしょう。特に褒められた経験が少ないと、褒めるべき場面が思いつかないものです。でも、考えてみてください。褒めるという行為は決して目的ではありません。

プチ褒めの極意は、あくまでも「人を幸せにすること」。「You made my day」!と言われるくらいに、さりげなく誰かの一日を人生最良の日に彩ることです。まずは、あなたが誰かに言われて嬉しかった体験を思い出してみましょう。

着ていた洋服や髪型、作ってあげた手料理、宿題で提出した作文、コンクールに出た絵、カラオケでの歌声……。記憶の糸を辿ってみると、結構たくさんあるのではないでしょうか。それはもしかしたら、褒め言葉と認識するにはあまりにも自然でさりげなく、言った本人さえ忘れているような表現かもしれません。

私にもいくつかのさりげない褒められ体験があります。中でも極上のプチ褒め体験を3つご紹介しましょう。いずれも予期しない場面で言われた言葉でした。でも、ものすごく嬉しかった。意識の底にとどまって、いつしか自分の拠り所になっていた―それらの言葉は前に進むエネルギーとなり、生きる勇気にすら感じられることもあったのです。

■1.20代後半で、「書くこと」を褒められた体験
20代後半、広告会社で働いていた私は、年に一度の評価ミーティングの場にいました。相手は、20人ほどメンバーがいた部門の部長。日頃、ほとんど話す機会もなく、彼が自分を評価できるほど仕事ぶりを知っているはずはない、と勝手に思い込んでいたのですが、こんなことを言ってくれたのです。

「君は、書くのが上手だよな。レポートや提案書の文章も実に端的でわかりやすい。それは才能だよ。」

書くことで生計を立てたいと願っていたほど、こだわりのあったスキルですから、そう言われて嬉しくないはずがありません。

部門中の文書や会社の重要書類が回覧されてきて、日々、大量の書類を読まなくてはならない立場の方が、褒めてくれた。ぶっきらぼうな言い方だけれど、まっすぐに書く才能があると認めてくれた。そのことは私を有頂天にさせるに十分なパワーがありました。

■2.30代半ばに「プレゼン」を褒められた体験
次は、ハワイ移住後、MBAプログラムに参加した時でした。マーケティングのクラスでプレゼンテーションの課題があり、クラスの2〜3人ずつが課題について十数分の発表をしなくてはなりません。そもそも私は「人前で話すなんてとんでもない!」という内向型の典型。それをネイティブの前で、英語でやらねばならないのは、拷問にも似た苦行です。極度の緊張の中で、脇の下に大汗をかきながら、なんとか終えた悪夢のプレゼン。

家に帰って、教授に思わずメールで赤面体験だったと激白。「人前で話すのは最高に苦手なので、終わってとにかくホッとしています……。いつになってもプレゼンは緊張して怖い体験でしかありません」

しかし、しばらくして届いた教授からの返信には、私が想像もしていなかった驚きの言葉が書かれていました。

「何を言ってるの。あなたは『ストロングスピーカー』よ。論理的で流れが抜群。言いたいことがしっかり伝わって、皆がじっと聞き入ってたわ。苦手なんて思わないで。あなたはこのプログラムで優秀な生徒として卒業できるひとりなのよ」

最高に苦手、と思っていたことを逆に褒められて呆気に取られたのは一瞬のこと。

後にはかすかな自信と確証めいたものが残り、一生忘れない経験となりました。35年間抱え込んできた苦手意識が一瞬でくつがえり、その後400人もの経営者の前で司会をするようになるのだから、プチ褒めの威力はまさに絶大です。

■3.50歳目前、「怖れを知らないリーダー」と称された体験
苦楽を共にしたマネージャーやスタッフと離れて、新天地ロサンゼルスに移ることを決意した50歳前。

雇われ社長を卒業して、自身でビジネスを営んでいくための儀式的な離別であり、私にとっては必然的な流れだったのですが、残される社員は不安で仕方なかったことでしょう。送別会を断った私の最終出社日、社員全員が部屋にやってきて、ひとりずつカードを渡してくれました。

中でも私の仕事を一番身近で見ていたアメリカ人の経理マネージャーがこんな言葉を書いてくれていたのを見て、思わず心の中で涙しました。

「どんなに大きなトラブルがあっても『怖れを知らないリーダー』として私たちを守り、奮い立たせながら、導いてくれたことに心から感謝しています」

本音ではいつもビビっていましたし、社長だなんて大きな役割から早く逃げ出したくてしかたがありませんでした。社員たちの暮らしや未来に責任を負うなんて、とんでもない重荷。それをなんとか頑張り通したことが、こうやって最後になって報われたのです。心からの感動、感謝、そして新しいフェーズに進んでいくための許可証とも言えるような最高の送別ギフトをもらいました。

この3つの例からもわかるように、彼らはいずれも、「褒めよう」として言葉を練ったわけではなく、ただ素直に思うことを表現しただけです。でも、それが最大の褒め言葉として伝わり、私の心を震わせました。その後の人生を変えてしまうほど、大きな勇気の源になったのです。

さぁ、みなさんも、自分が言われて嬉しかった言葉や出来事をしっかり覚えておきましょう。そして、SNSでもメッセンジャーでも、感じたことをためらいなく言葉にしていきます。それが「プチ褒め」となって相手の心に届きます。

表現なんて練るだけ無駄。素朴で直接的で生な言葉のほうがエネルギーを勢いに乗せて伝わりやすいものです。

「あ、この写真、いいですね、好きな構図と色合いです」
「ものすごく説明が上手で、頭にすっと入ってきました」
「どうしてそんなに早く書けるんですか?プロ級のライターですね!」
「すごい目力が強くて、オーラやエネルギーを感じます!」

思っているのに言わないのはもったいない。あなたは、誰かを喜ばせるパワーを持っているのだから、しっかり使っていきましょう。

上野ハジメ 起業プロデューサー/NLPライフコーチ/イムア・プロジェクトLLC代表

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【プロフィール】
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上野ハジメ 起業プロデューサー/NLPライフコーチ/イムア・プロジェクトLLC代表

1980年代から10年間バブル全盛の広告業界で働いた後、1994年ハワイに移住。MBA(経営修士号)を取得。2001年、ウェブメディア&雑誌事業運営会社の社⻑・編集⻑に就任。2011年LAに移住し、世界No.1規模の在住日本人向け情報誌の社⻑・編集局⻑に就任。日米5拠点50名の社員と8億円事業を展開。性別や年齢を問わないフラットな社会で多様な価値観に触れ、ゲイであることをオープンにしながらコミュニティリーダーとして活躍。2018年より全⽶移住率No.1のテキサス州ダラスを拠点に「プロライター養成講座」「VA(バーチャルアシスタント)育成スクール」など人気講座を展開中。著書『3ケ月で自然と月5万円稼げるようになる〜世界一やさしい「プチ起業」の教科書』(プレジデント社)、『人づき合いが超ラクになる「プチ褒め」の魔法』(プレジデント社)。

公式サイト:https://lit.link/hajime_imua
公式ブログ:https://www.hajimeueno.com/
『人づき合いが超ラクになる「プチ褒め」の魔法』 https://www.amazon.co.jp/dp/B0FQN7RSBN
Instagram:https://www.instagram.com/hajime_writing/

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