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大企業に勤めていても副業が推奨される今、起業に興味を持つ人は増えています。そんな中、常に注目されているのが資格の取得。なにもないところから資格を使ってどう稼ぐのか?資格を取ることで人生を逆転させた、経営コンサルタントで士業(特定行政書士)でもある横須賀輝尚氏の著書『ごく普通の人でも資格を取ってきちんと稼げる本』から、再構成してお届けします。



■資格取得後の成功を狂わす「悪魔のスパイラル」
頑張って勉強して資格を取ることそのものはとても素晴らしいことで、価値あることだと私は考えています。

もちろん、景気に大きく左右されるものではありますが、成人して就職し、一定の職につき、一定の仕事さえこなしていれば、ある程度の収入を得ることは誰でも可能です。ですから、極端な言い方をすれば、勤勉でなくても、資格を取らなくても、生きていくことは可能なわけです。

不景気で職がないタイミングであっても、求人はありますので、選ばなければ仕事を得ることはできます。そして、一定の収入さえあれば、成長意欲がなくても、あとは惰性でも趣味に興じるだけの人生を送ってもかまわないわけです。当然、資格を取る以外にも、いろんな選択肢があるわけです。

こうしたある意味では「楽な道」も選べるなか、「資格を取る」という自らに試練を課し、成長しようとする人を私は本当に尊敬します。私自身も資格を取りましたが、やはりそれは大変なことであり、多くの苦労をしました。こうした苦労をするからこそ、もっと望むような人生、ありきたりな言葉ですが、「幸せな人生」を送ってほしいと思うのです。

ところが、資格についてはコマーシャルや広告がしているような「取れば収入が上がる」「転職に必ず役立つ」などの過度な表現により、自分にとって本当に必要かどうかもわからず、なんとなく資格を取ろうとして、なんとなく資格取得の道を選び、時間をただ消費してしまっているだけの人が多いのも事実です。

私はこれを色々なところでお伝えしていますが、資格のために人生があるわけではありません。人生をよりよくするために資格があるのです。

しかしながら、資格を取得した以上、その資格ならではの仕事をするべきだという「資格の悪しき専業理想主義」をはじめとして、資格中心に物事を考え出すと、悪魔のスパイラルに陥ってしまう可能性も高いわけです。これは資格の強い魅力でもあり、同時に大きな落とし穴でもあります。

そんなとき、やはり立ち戻ってほしいのが、「結局、自分は何がやりたいのか?」という根本的な問いかけです。

行政書士を取る、税理士を取る……たしかに価値のあることです。しかし、その資格を取る前の本来の目的はなんだったのか? 収入を増やしたいだったのか、家族を幸せにしたいだったのか、そうしたことをつねに忘れないでいてほしいと私は思うのです。

■「大人になったらなりたいもの」に行政書士や税理士を挙げる人は少ない
ちょっと大げさな言い方かもしれませんが、資格を取ることで人生を間違った方向に向かわせてほしくはありません。すでにお伝えしているように、資格は価値あるものだと思います。しかし、それがすべてではありません。

とくに行政書士や社会保険労務士、税理士などの士業系の資格は、その職業につくことが大きな目標になっている人も非常に多いのです。

もちろん、資格を目指して、その資格を取ることは価値あることです。ただ、多くの資格取得希望者、取得者を見て感じるのが、資格そのものを目的にして、人生の夢のような位置づけにしてしまっているのです。

しかし、子供のころに描いた「大人になったらなりたいもの」に「行政書士」や「税理士」をあげていた人はほとんどいないでしょう。なにかしらのきっかけで資格取得の道を選んだのでしょうが、それまでは違った夢を持っていたはずです。そうした、心からの夢をぜひ忘れてほしくはないと、私は思っています。

■資格を取ったら「勝ち組」か?
少し話が大きくなりますが、資格を目指すことで、「成功」の定義もすこしぶれてしまっているような気がします。資格を取ったら勝ち組、取れなかったら負け組。取った資格の中でも勝ち組と負け組があって……というような優劣のつけ方や、資格取得者同士の無駄なヒエラルキーのようなものほど、無意味なものはないと、私は強く思います。

そうした意識があることによって、本来目指すべき方向がわからなくなっているのです。

「○○という資格を取った。しかし、××という資格に比べてレベルが低いと言われた。悔しいから××の資格を何年かけても取る」

ハングリー精神は私も重要だと思いますが、プライドや意地によって、ただ資格を取ることだけを目的にして、その先の夢がないとなるとやはり本末転倒になってしまうと思うのです。

私なりの成功の定義をお話しすれば、成功というのはひとつの定義ではくくられません。ひとりひとりに成功の定義があり、内容が異なります。

ですから、「資格を取って成功」というのもひとつの形ではあります。しかし、それだけでは、必ずしも自身にとっての成功とはかぎりません。成功したいと思ったら、まずは自分だけの成功とは何かを考える必要があるわけです。

■資格の取得後3~5年でモチベーションが急降下してしまう人
私が自らの経験から、成功に必要だと考える要素は、(1)経済的成功、(2)人間関係的成功、(3)社会実現的成功、この3つです。

まずは経済的な成功ができなければ、好きなものも買えませんし、食べることも住むこともできません。次に人間関係。お金があっても、資格があっても、人間関係を壊してしまっては、やはりそれは不十分になることが多いのです。さらに社会的実現。これを私は「使命感」とも呼んでいます。

とくにスキル資格は画一的な仕事です。人は誰しも「人と違うこと」が好きで、そこに魅力を感じたりします。ところが、資格はある意味では同じ資格を持っていれば、誰がやっても同じような内容になりやすく、「なぜこの仕事をしているんだろう?」と自問自答してしまうことも、実は多いのです。

ですから、「本当は何がやりたかったのか?」を追求していかないと、資格を取って開業しても、3年から5年くらいで、急にモチベーションが下がってしまいます。

資格を取って独立開業する人ほど、自分なりの社会的使命感を見つけることが重要なのではないかと思うのです。その中で資格が必要であれば、資格を取るべきなのです。

私自身は資格を取ったあと、自分自身の使命を見つけることによって、今日に至っています。もし、自分自身の成功を定義したときに、あるいは幸福を定義したときに、「資格」があるのであれば、真剣に資格取得をし、その成功を成し遂げてください。

横須賀輝尚 パワーコンテンツジャパン株式会社 代表取締役/特定行政書士

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■プロフィール
yokosuka
横須賀輝尚 パワーコンテンツジャパン株式会社 代表取締役 特定行政書士
士業専門の経営コンサルタント。パワーコンテンツジャパン株式会社 代表取締役、特定行政書士。Gensparkインダストリーアンバサダー。
2007年に日本では初めてとなる士業向けに経営スクール「経営天才塾(現LEGALBACKS)」を創設し、2023年現在、全国3000名以上の士業から相談を受け、その相談数は優に2万件以上を超える。
主な著作に「会社を救うプロ士業 会社を潰すダメ士業」(さくら舎)、「資格起業BIBLE」(技術評論社)などがあり、25冊20万部超の著者。2023年から士業のための生成AI・ChatGPT活用研究を開始。
最新刊「『ムダ仕事』も『悩む時間』もゼロにする GPTsライフハック」を2024年11月に技術評論社より刊行。週刊ダイヤモンド、毎日新聞などメディア掲載も多数。

公式サイト:https://yokosukateruhisa.com/
X:https://twitter.com/yokosuka_ai  @yokosuka_ai
YouTube:https://www.youtube.com/@40lawyers50/

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