![]() 日本の文化的な自己観はどのように分相応の意識を強めてしまっているのか? 「分相応」という思い込みが挑戦を妨げる……その原因である日本の価値観を見つめ直して周囲に流されず自分を変えるための思考術を、マーケティング戦略を専門とする著者が解き明かします。 ※本記事は『分不相応のすすめ 詰んだ社会で生きるためのマーケティング思考(永井竜之介・CROSS-POT)』の一部を再構成したものです。 ■「ぜんぶ、文化のせい」と思っていい 人や物事に対してふさわしさを求めがちだったり、自分の分をわきまえて分相応でいた方が良いと思ったり、自分が分不相応になることを過度に怖がったり、相手が分不相応だと思ったら批判や嘲笑をしてしまったり……。私たちは、自分や相手の分相応に関して、色々と偏った考えを持ちやすい傾向があります。 その大きな原因は、私たち個人ではなく、日本の文化にあります。まず、「あなたが悪いわけじゃない」という事実をしっかり確認しておきましょう。分相応を良しとする考えを持ちやすいのは、決して、あなただけではありません。日本の文化で生まれ育った人ならば、多くの人が、必然的にそのように考えやすくなる傾向が、研究で明らかにされています。 だから、ネガティブに考えてしまったり、挑戦する行動を起こせなかったりする自分のことを、あまり否定しないであげましょう。「ぜんぶ、文化のせい」と割り切って、今の自分の考え方や行動を受け入れてしまっていいのです。そのうえで、あなたは対処法を学んで、「分相応の呪縛」を克服していくことができます。私たちは、自分が経験している文化の中で、文化の影響を受けながら、自分自身や相手を認識しています。 また、物事の良し悪しを判断する基準を、無意識のうちに作っていきます。これらを「文化的自己観」と呼ぶことは、前述の通りです。この文化的自己観によって、ある文化で生きる人々の頭には、考え•価値観•行動における「暗黙のルール」が刷り込まれていきます。 ●「私は、いつでも私らしく」が難しい理由 例えば、日本の文化では、人は「自分」を周囲の人々と繋がる関係の一部として捉えて、人間関係そのもので自分を定義したり、その関係の中で自分を定義したりしやすい傾向があります※1。 「私は、いつでも私らしく」よりも、家族関係の中での自分、友人関係の中での自分、職場の人間関係の中での自分といった具合に、「関係ありきの私」になりやすいわけです。自分を、個人として全体から切り離して考えることができなかったり、自分自身の捉え方がブレやすく、矛盾するほど「自分」を変化させやすかったりする傾向も、日本の文化的自己観の特徴です※2。 個人が、自由や独立よりも、社会ルールや関係性を重視しやすい日本ならではの特徴は、仏教や儒教を通じて、調和を重んじたり、他者を大切にしたり、役割を務めることを重視したりする思考が形成されやすいためと考えられています。日本では、社会的な関係に当てはめることで自分を確認しやすく、その関係に上手く自分を当てはめようとして、関係する人たちが「自分にどんなことを期待しているか」を読み取ろうとします。 その期待と自分を見比べて、「自分にどこが足りないか」「自分に欠けているのは何か」を探し、それを補ったり、直したりして、関係する人たちの期待に応えようとします。だから、自分の短所に目がいきやすく、自分のマイナスを埋めようとしがちです。 ※1「相互協調的自己観」の特徴。 ※2「弁証法的自己観」の特徴。 ●「短所を探す」日本と「長所を探す」欧米 ちなみに、日本とは対照的とされる欧米では、自分自身を周囲との関係から切り離して捉えて、自分の能力や才能、性格、モチベーションなどによって、「自分」を独自の個人として定義しやすい傾向にあります※3。 自分の優れている特長を見つけて、それによって自分を確認したり、物事を達成しようとしたりします。だから、彼らは、自分の長所を自覚していて、自分のプラスを伸ばすことを重視しやすいのです。このように欧米の人々が、個人としての合理性、自分オリジナルの価値観や主張、自分らしい自己実現などを重視する特徴を持つ背景には、デカルトやルソーといった哲学者の提唱した合理主義や自己実現を重んじる思想が文化の土台にあるためと考えられています。 話を日本に戻して、こうした日本ならではの文化的自己観によって作られる「分相応を良しとする意識」には、次の3つの特徴があります。1つは、「集団の一員としての自分」という集団意識を強く持ちすぎるようになる点です。2つめは、我慢を美徳として考えやすくなる点です。そして3つめには、リスク回避を最優先しやすくなる点があります。 一見するとメリットのように思えるこれらの特徴について、次回の記事でその問題点を掘り下げます。 ※3「相互独立的自己観」の特徴。 永井竜之介 高千穂大学商学部 教授 【関連記事】 ■なぜあなたは他人の成功に嫉妬するのか (永井竜之介 高千穂大学商学部 教授) https://sharescafe.net/62793769-20251120.html ■「儲かりそう」で始めた副業が月商100万なのに地獄だった理由—マイクロ法人5期目の経営者が語る失敗と成功(柳澤大介 経営者) https://sharescafe.net/62766220-20251108.html ■前日の夜10分間で、明日の効率を劇的に変える小さな習慣(森田ゆき 経営者) https://sharescafe.net/62767375-20251109.html ■110万円の家賃を払う板野友美さんとヤクルト高橋奎二さんの判断が正しい理由。(中嶋よしふみ ファイナンシャルプランナー) https://sharescafe.net/62674731-20250930.html ■世帯年収1560万円の共働き夫婦は、9540万円の湾岸タワーマンションを買えるのか? その1・生活費は800万? (中嶋よしふみ ファイナンシャルプランナー) https://sharescafe.net/61186482-20240125.html ■プロフィール 永井竜之介 高千穂大学商学部教授 ![]() 専門はマーケティング戦略、消費者行動、イノベーション。 日本と中国を生活拠点として、両国のビジネス、ライフスタイル、教育等に精通し、日中の比較分析を専門的に進めている。 主な著書に『マーケティングの鬼100則』(明日香出版社)、『リープ・マーケティング 中国ベンチャーに学ぶ新時代の「広め方」 』(イースト・プレス)がある。1986年生まれ。 大学公式サイト:https://www.takachiho.jp/outline/professor/commerce/ryunosuke_nagai.html シェアーズカフェ・オンラインからのお知らせ ■シェアーズカフェ・オンラインは2014年から国内最大のポータルサイト・Yahoo!ニュースに掲載記事を配信しています ■シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家の書き手を募集しています。 ■シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家向けに執筆指導を行っています。 ■シェアーズカフェ・オンラインを運営するシェアーズカフェは住宅・保険・投資・家計管理・年金など、個人向けの相談・レッスンを提供しています。編集長で「保険を売らないFP」の中嶋が対応します。 |



