![]() 「分相応」という思い込みが挑戦を妨げる……その原因である日本的価値観を見つめ直し、周囲に流されず自分を変えるための思考術を、マーケティング戦略を専門とする著者が解き明かします。 ※本記事は『分不相応のすすめ 詰んだ社会で生きるためのマーケティング思考(永井竜之介・CROSS-POT)』の一部を再構成したものです。 ■気づいたら、質問ができなくなっていた 小学校の授業参観や公開授業を見てみると、驚く光景を目にすることができます。それは、子どもたちが、我先にと競い合って「はい!」「ぼくも!」「わたしも!」と手を上げて質問や発言をしている姿です。全員とは言わずとも、本当に多くの子どもたちが、元気良く、積極的に授業に参加しています。 しかし、この活気あふれる光景は、中学•高校•大学と進んでいく中で、いつの間にか失われていくことがとても多いものであるのが現実です。幼稚園や小学校までは、無邪気に積極的になれていたものが、中学校を過ぎたあたりから、「変に目立ちたくない」「和を乱したくない」「みんなもしないから」と、手をあげなくなっていきます。 その要因として、1つには、「失敗は恥」と考えてしまう感覚があります。失敗を、トライ&エラーにおける学びとして前向きに捉えられずに、ただの失敗として恥ずかしく思い込む感覚が強いのが日本の特徴です。だから、質問や発言をして、もし的外れだったり、間違っていたりして、失敗して恥をかきたくない、という思いが強くなっていくと、授業中に手をあげなくなってしまいます。 もう1つの要因は、誰かが挑戦したり、目立ったり、失敗したりする姿を嘲笑する感覚です。「なに頑張っちゃってるの?」と斜に構えて、他者を斜めに見る感覚があると、「自分はそうされたくない」と自分も予防線を張ってしまい、授業中に手を上げることができなくなっていきます。自分に関係のないことであっても、むやみに騒ぎ立てて、無責任にからかったり、嘲笑したりする「野次馬根性」は、SNSが普及したことで、昔よりもはるかに「見える化」しました。 だから、「みんながやってること」と思い込んで、ネット上だけでなく、リアルでも、以前よりも誰かを嘲笑する感覚は強くなっているでしょう。 ●頑張るのは就職活動のときだけ 学生時代を通じて、多くの人が「手を上げない」を当たり前化していきます。しかし、就職活動のときだけは、周りよりも目立ち、内定を勝ち取るために頑張るものです。 しかし、いざ社会人になると、また学生時代のように積極性は影を潜めがちです。会議があっても、強制されなければ、わざわざ積極的に発言をしない人の方が多いことは確かでしょう。発言をしても損をするだけ、と思うからこそです。良い発言なら、「じゃ、あなたが担当して」と、言ったからには自分でやることになって、「言い出しっぺが損をする」傾向にあります。 また、悪い発言なら、「頭が悪い」「空気が読めない」「ズレてる」などとマイナスの烙印を押されてしまう可能性があります。 ●日本は「穴」を探し、海外は「面白さ」を伸ばす 日本の学会と、海外の学会を比べてみると、じつは大きな違いがあります。どちらも、発表の時間と質疑応答の時間があらかじめスケジュールされています。 一般に、日本ではスケジュールされた時間をきっちり守り、まず発表、次に質疑応答と順番に進行します。質疑応答の時間になると、まずはベテラン•大御所の人が質問をして、それがひと段落つくと、空気を読みつつ、若手も少し質問をします。全体的に、「面白いけど、ここは……」と、重箱の隅をつつくように「穴を探す」タイプの質問が出やすく、質問の数は少なめで、質疑応答の時間を短く切り上げて終わることも珍しくはありません。 一方、海外の学会では、発表の時間中でも、気になる点や面白い点があったら、どんどん質問の手があがります。発表を途中で止めて、質疑応答に対応し、また発表を再開することが一般的です。若手でも、年功序列の空気を読むことなく、遠慮せずに質問•発言ができる空気になっています。また、「面白いから、もっと……」と、発表内容をさらに発展させたり、別の形でもっと面白くしたりできる、など「面白さを伸ばす」タイプの発言•議論が中心です。 予定の時間内では終わらず、その後も立ち話で議論を続けることもよくあります。筆者の経験上、こうした「海外」の傾向は、アメリカでも、ヨーロッパでも、アジアでも同様です。日本と、それ以外で、大きな違いがある印象です。そして、この違いは学会という場に限らず、ビジネスパーソンの職場に広く当てはまる傾向でしょう。 質問や発言は、もちろんアイデアや企画をより良いものにするために重要ですが、それだけでなく、場の空気を活気づける意味でも大切なものです。的を射た発言、気の利いた質問だけでなく、何気ない軽い一言も、議論の助走となって、その後に活気づいていくための潤滑油のようになり、じつは必要な存在です。だから、それができる空気や環境を整えることが、組織や上司の役割にもなるのです。 永井竜之介 高千穂大学商学部 教授 【関連記事】 ■『みんな同じ』『特別扱いをしない』という罠~平等が生む不公平の構造~(永井竜之介 高千穂大学商学部 教授) https://sharescafe.net/62793994-20251120.html ■「分相応」の意識を無くす第一歩、「ぜんぶ文化のせい」にしていい!(永井竜之介 高千穂大学商学部 教授) https://sharescafe.net/62793986-20251120.html ■なぜあなたは他人の成功に嫉妬するのか (永井竜之介 高千穂大学商学部 教授) https://sharescafe.net/62793769-20251120.html ■110万円の家賃を払う板野友美さんとヤクルト高橋奎二さんの判断が正しい理由。(中嶋よしふみ ファイナンシャルプランナー) https://sharescafe.net/62674731-20250930.html ■世帯年収1560万円の共働き夫婦は、9540万円の湾岸タワーマンションを買えるのか? その1・生活費は800万? (中嶋よしふみ ファイナンシャルプランナー) https://sharescafe.net/61186482-20240125.html ■プロフィール 永井竜之介 高千穂大学商学部教授 ![]() 専門はマーケティング戦略、消費者行動、イノベーション。 日本と中国を生活拠点として、両国のビジネス、ライフスタイル、教育等に精通し、日中の比較分析を専門的に進めている。 主な著書に『マーケティングの鬼100則』(明日香出版社)、『リープ・マーケティング 中国ベンチャーに学ぶ新時代の「広め方」 』(イースト・プレス)がある。1986年生まれ。 大学公式サイト:https://www.takachiho.jp/outline/professor/commerce/ryunosuke_nagai.html シェアーズカフェ・オンラインからのお知らせ ■シェアーズカフェ・オンラインは2014年から国内最大のポータルサイト・Yahoo!ニュースに掲載記事を配信しています ■シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家の書き手を募集しています。 ■シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家向けに執筆指導を行っています。 ■シェアーズカフェ・オンラインを運営するシェアーズカフェは住宅・保険・投資・家計管理・年金など、個人向けの相談・レッスンを提供しています。編集長で「保険を売らないFP」の中嶋が対応します。 |



