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あなたがスマホを見ない時間は、1日のうちどれくらいあるでしょうか。組織心理学者ベンジャミン・ハーディ氏は、ほとんどの人がテクノロジーに動かされ、数分も集中できない状態になっていると指摘します。依存症が蔓延する現代社会で、テクノロジーとの健全な関係を築くための具体的な方法とは。

最適な行動を自動的に選択し、能力を上げる環境の作り方を科学的に解き明かした『全力化(ベンジャミン・ハーディ・サンマーク出版)』から再構成してお届けします。

全力化
ベンジャミン・ハーディ
サンマーク出版
2025-11-06



■「有害なデフォルト」を変える──スマホ、食、仕事、ポルノ……
あなたは今、「依存症になるのが当たり前」という文化の中で暮らしている。

あなたがいる環境はトリガーに次ぐトリガーで溢れているため、環境を自分でコントロールしない限り、めちゃくちゃな人生が初期の設定になってしまうと心得てほしい。

ほとんどの人にとっての初期設定は、「流されながら受動的に生きるもの」になっている。テキストメッセージやメール、その他様々な通知に反応する生き方だ。

今の環境は、要求が多く、極端になりすぎ、プライバシーに深く入り込み、これ以上無視できないものになってしまった。

私たちは誰もが中毒になり、依存し、ぼろぼろだ。これまでにないほど自由と繁栄が手に入りやすい状態であるにもかかわらず、同時にこれまでにないほどそうしたものに手が届かない状況になっている。

経営思想家のピーター・ドラッカーの言葉を借りるなら、こうだ。

「数百年後、今の時代の歴史が長期的な視点から書かれるとき、歴史家がもっとも重要視する出来事は、テクノロジーでもインターネットでも電子商取引でもないだろう。人類の環境が過去にないほど変化を遂げたという点だ。文字どおり初めて、かなりの数の人が選択肢を手にし、その人数は今も急増し続けている。これまでで初めて、人は自分で自分を管理しなければならなくなった。そして社会は、こうしたことに対応する準備がまったくできていない」

環境を一番大事なものと位置づけない自己啓発の戦略は、誤っている。

もしかしたら、今のように指先ですべてができてしまう時代でなければ、うまくいったかもしれない。

しかし今、誘惑はあまりにも強力で、ドーパミンへの依存はあまりにも根強い。

悲しいことだが、これからの世代のほとんどは、人生に本格的に乗り出す前に失敗するようにできてしまっているかのようだ。

これほどまでに魅力的で、脳内の報酬系が喜ぶ「刺激物」に自分を試された世代は、いまだかつてなかった。

これからの世代は、自分の環境を形作るという点にかなり慎重になって取り組まない限り、希望などほとんどないに等しい。

私たちの文化にある初期設定の中でも、もっとも蔓延していて依存しやすいのは、「テクノロジー」「仕事」「食べ物」「麻薬」「ポルノ」「人」に関するものだ。

自分の環境に存在するトリガーのうち、無意識に依存症のような行動を取らせるものは、途絶しなければいけない。

そして、他の人たちとの関係の質と密度を深める必要がある。

私たちの文化は、お互いからますます切り離されるように形作られつつある──依存症が感染病のように広がりやすい土壌ができているのだ。

しかし、深遠で意義深い人間関係を築いていれば、不健全な依存症にはまる可能性はずっと低くなる。

■「ガジェット」と距離をとる──1日85回以上スマホを見るハメに
ほとんどの人は、テクノロジーを動かすのではなく、テクノロジーに動かされてしまっている。目覚めて数秒のうちに、テクノロジーという名の主があなたを奴隷にしてしまうのだ。

そして仕事をしている間ずっと、メールやSNS、または好奇心をそそるウェブサイトに触れて新たなドーパミンの刺激を受けない限り、あなたは数分も集中していられなくなる。

ある研究によると、平均的な人はスマホを1日に「85回以上」チェックし、ウェブサイトやアプリで「5時間以上」を費やしている。

おもしろいことに、人が携帯電話をチェックする回数は、自分が思っている回数の倍以上に達するという。

たとえば、あなたは車の運転中、信号待ちでスマホをチェックしなかったのはいつだっただろうか? スマホは車の収納ボックスにしまっておこう。

あなたがもしスマホなどを使って何時間も無意識に過ごしているのなら、どうして仕事や人間関係にきちんと向き合えるだろうか?

スマホを不健康に使うことで起こる弊害には、たとえばこんなものがある。

・うつ、心配性……「日常生活への支障」の増加
・「睡眠の質」の低下
・「心理的・情緒的な健康」の悪化
・「ストレス」の増加
・学生の場合は「成績」の低下

■親は良くも悪くも「先例」になる
ある研究によると、親がスマホの使い方についてきちんと考えて配慮している場合、その子どももテクノロジーとの健全な関係を築ける可能性がずっと高くなるという。

反対に、もし親が受動的かつ衝動的にスマホを使うのであれば、その子どもたちが違う使い方をするなどと、どうして期待できるだろうか?

多くにいえることだが、親は子どもに何をすべきか命令するわりに、自分自身ではなかなかそれを実行できない。

子どもが何かを学ぶときに使う最初のテクニックは、「観察」と「物まね」だ。瓶の中で訓練されたノミが次の世代では見えないバリアに閉じ込められたように、子どもにとっては親の行動が基準となる。

■「スクリーン」から離れて眠る
他の調査でも、「就寝前1、2時間以内のノートパソコンや携帯電話の使用」には、悪影響があることがわかっている。

具体的には、就寝1、2時間前に画面を見るのをやめた人は睡眠の質が非常によく、睡眠障害も少なかった。

この調査を行った研究者は、シンプルにこのように結論づけた。

「健全な心と体のためには、寝る前のデバイスの使用を制限すべきだ」

1週間に1日はリカバリーする日を設けよう。

あなたが信仰する宗教がなんであれ、このリカバリーの日を「安息日」と考えるのだ。あなた自身が休息する日だ。

この休息日を活用できれば、そこからの1週間は確実に集中でき、効果的に過ごせるだろう。

仕事の後に毎晩、デジタル断ちすべきであるのと同様に、週に1回は、体からは食べ物を、脳からはテクノロジーを、完全になくしてあげるべきだ。

テクノロジーへの介入はまず、毎週の「デジタル断食」から始めよう。この断食は、24時間、スマホをチェックせず、インターネットも使わないで過ごす取り組みだ。

デジタル断ちの目的は、自分自身そして大切な人と改めてつながり直すことだ。

テクノロジーから離れたことがないのなら、将来、精神的・身体的に蝕まれてしまうだろう。そんなふうに思えないかもしれないが、テクノロジーは確実に体にストレスをかけている。

この継続的なストレスが、あなたの体をサバイバルモードにし、脂肪を燃やすのではなく溜め込むようにしてしまう。スマホ中毒は太るのだ。

精神的にも肉体的にも健康でいたいなら、自分に休みをあげよう。

リセットして休息する必要がある。


ベンジャミン・ハーディ(Benjamin Hardy) 組織心理学者、著作家、起業家

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■プロフィール
【著者】
ベンジャミン・ハーディ(Benjamin Hardy)
組織心理学者、著作家、起業家。
起業家が自社を10倍速で成長させるよう支援する研修企業Scaling.comの共同創設者。
クレムソン大学大学院博士課程修了。ブログ・サービス「Medium.com」で多くのフォロワーを持ち、そのネット上のプレゼンスと影響力は、『フォーブス』『サイコロジー・トゥデイ』『フォーチュン』などで取り上げられた。心理学専門誌の電子版「サイコロジー・トゥデイ」などに寄稿中。現在、アメリカのフロリダ州で妻のローレンと7人の子どもたちとともに暮らしている。

【訳者】
松丸さとみ(まつまる・さとみ)
翻訳者・ライター。
学生や日系企業駐在員としてイギリスで6年強を過ごす。
主な訳書に『LISTEN――知性豊かで創造力がある人になれる』『感情戦略』『FRIENDSHIP 友情のためにすることは体にも心にもいい』(いずれも日経BP)、『いつでも調子がいいカラダになる! ホルモンをととのえる本』(CEメディアハウス)、『THE FOREVER DOG 愛犬が元気に長生きするための最新科学』(U-CAN)、『「人生が充実する」時間のつかい方』(翔泳社)、『脳の外で考える 最新科学でわかった思考力を研ぎ澄ます技法』(ダイヤモンド社)などがある。

■SUNMARK WEB
https://sunmarkweb.com/

全力化
ベンジャミン・ハーディ
サンマーク出版
2025-11-06

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