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「今度こそ、この本を読んで実践すれば英語が話せるようになるかも」

そう思って買った英語の参考書や単語帳が、いつの間にか増えていく。真面目に勉強しているのに、なぜか英語が口から出てこない。外国人を目の前にすると、頭が真っ白になってしまう……。

最速英語習得の専門家・川﨑あゆみ氏はこの問題を、話せないのは知識不足ではなく英語を「使う練習」をしていなかっただけだと指摘します。

■3時間のセミナーを終えて必ず聞かれる質問とは
「やっぱり私には才能がないのかな」
「もう若くないし頭が悪いから覚えられないんだ」

こんなふうに自分を責めてしまったこと、ありませんか。

こうおっしゃる英語学習者さんには、まず「あなたは悪くありません」とお伝えし、第二言語習得論の専門家として多くの英語学習者さんを見てきた私から、はっきりと申し上げます。

話せないのは、知識が足りないからではありません。ただ英語を「使う練習」をしていなかっただけなんです、と。

私のもとには英語にまつわるお悩みがたくさん寄せられ、たとえば書籍に関するセミナーが終わったあとでかならず、こう質問されます。

「どの単語帳がおすすめですか?」「どの文法書を使えばいいですか?」

セミナー中に何度も「自分が英語で何をしたいかという目標から逆算し、実際に話す練習をしましょう」とお伝えしているのに、です。参考書ジプシーのように、つねにいいものを探しているのでしょう。

ある方は、週に100個の英単語を覚えることを課せられて、必死に暗記していました。でも、一向に話せるようにならない。さらに次の100個、その次の100個……。

「覚えられない私は、頭が悪いんだ」

そう自分を責めて、辛くなって、それでも諦めきれずに、また新しい参考書を買う。

このような方々は、人によっては、えげつない数の参考書をお持ちです。なかには100冊以上お持ちの方もいらっしゃって、驚いたこともあります。

■参考書は深い傷を負わずに済む「安全地帯」
そんな英語学習者さんを見るにつけ、こう感じます。

単語帳や文法書が好きな方々は文字に目を向けてばかりで、英語でコミュニケーションをするために本当に必要な、顔を上げて話すことができていないのではないかと。

厳しい言葉に聞こえるかもしれません。でも、私自身も、かつてはそうでした。英語を身につけるために何を優先すべきか迷う気持ちもあることは、私もまったく同じだったのでよくわかります。目の前の参考書をやれば話せるようになるだろう、と信じたくなりますよね。

もちろん単語帳や文法書で勉強するのは大変だし、努力も必要です。でも、読んでいるだけで話さないでいるうちは、自分が傷つくことはありません。

英語で話そうとして、「言葉が出てこない」という辛さを味わわず、自分のペースで書いてあることを学んでいても、知識はどんどん増えていきます。だから、安心してしまう。これをやっていれば、いつか話せるようになると信じてしまう。

でも実際には数か月後、同じ時期に学び始めた受講生さんでも、参考書にばかり目を向けていた人と自分の話したいことを考えていた人とでは、英語で話す能力においては大きな差がついてしまうんです。

■言語は「知る・できる・自動化」の3段階を経て習得される
私が英語学習者さんに最初にお伝えするのは、以下のことです。

言語習得には『知る・できる・自動化』という3つの段階があります。

ですが多くの方は「知る」ことばかりに必死で、「できる」に繋がる「話す」という行動をしたことが圧倒的に少ないんです。話せないから、もっと知識を増やさなきゃとおっしゃる人は大勢いますが、足りないのは「知る」ではなく「できる」に繋がる行動です。

こういうときは、英語で会話できるのと、英語を知識として知るというのは違うんですよ、という話を何度も伝えるようにしています。

「さやか」さんという受講生さんは他の英会話スクールで、週に100個の英単語を暗記することを課せられ真面目に頑張っているのに話せなくて、どんどん自分を責めるようになっていました。

「私は覚えられないから、頭が悪い」
と嘆く彼女に私は、こう言いました。

「単語も文法書も、いったん何も開かないでください。まず、あなたが知っているものだけを使えるようにしましょう」

I am tired.(疲れた) I am sleepy.(眠い) How are you?(元気?)

これくらいなら、ほとんどの人が言えるはずですし知っている単語ばかりのはずです。こうした簡単な単語で自分のことを話すうちに、

「できないと思っていたけれど、割と自分のこと、言えるじゃん」
となり、これに気づいたとき、さやかさんの目が変わりました。

■「レシピコレクター」から「料理人」へ
知っている単語だけでも、自分の気持ちは伝えられる。そう分かると、「じゃあ、この単語も覚えたいな」「もっとこういうことを話したいな」と、前向きに単語を取り入れられるようになりました。

それから1か月後、もう一度単語帳を見直したとき、さやかさんの目線は変わっていました。

「この単語、知っていたけれど使ってなかったな」
「これは知らなかったけど、取り入れたい」

これは料理で言えばレシピコレクターではなく、じっさいに料理をする人の目線です。自分で調理できるようになると、どの材料が必要かが自然に分かるようになるんです。

最終的に、さやかさんはこう言っていました。

「私が言ったこと、ネイティブになんでも伝わるんです!」

最初は自信がなくて、暗記に苦しんでいた彼女。でも今は、自信に満ち溢れています。

■日常会話に必要なのは、たった721単語?
「話せないのは、知識が足りないから」

そう思い込んでいませんか。でも実は、日常会話に必要な単語は、驚くほど少ないんです。英語には60万から100万の単語がありますが、ネイティブスピーカーでさえ、そのうちの3万単語程度しか知りません。たった0.4%なんです。

そして、日常会話の大半を占めるのは、たった721単語。

トランプ大統領やオバマ元大統領のスピーチを聞いても、シンプルで誰もが知っている単語を使って話しています。なぜなら、「みんなに分かる」ことを目指しているから。あなたがすでに知っている単語で、十分に英語での日常会話をすることは可能なんです。

私は、こう例えることがあります。

「野球で言えば、ずっと素振りをしている状態かもしれません。毎日千本素振りする、でも打席には立たない」

完璧に準備してから試合に出ようと思ったら、いつまでも完璧にはなりませんし試合には出られません。そして、いざ試合に出たときには「え、試合ってこうなの?」と戸惑ってしまう。私自身も、そうでした。

多い時は1日10時間以上も英語を勉強して、ようやく晴れて「試合に出るぞ」と思ってアメリカに留学したものの、もう結果はボコボコでした。あとから考えたら知っている単語だったかもなどと思うと悔しくて。

学校で取り組んでいた暗記などの学習法しか知らなかった私は、とにかくたくさん読んで、単語と文法をしっかりやると決めて、それを忠実に守りました。努力はしてきたつもりでも話せない。これは、ただ努力の方向性が違っただけなのです。

■「でも、私には無理」と思っているあなたへ
「そんなこと言っても、私はやっぱり単語も文法も知らないし……」

そう思われるかもしれません。でも、こんなふうに考えてみてください。

「さんま」という単語が英語で言えなかったとき、完璧主義の人は「さんまが言えないから話せない」と諦めてしまいます。でも、私はこうお伝えするんです。

「I ate さんま. でまずはいい。その後、『SANMA is a kind of fish』って説明を繋げればいいですよ」

完璧じゃなくていい。知っている単語を総動員して、とにかく伝えようとする。それが、コミュニケーションです。

■参考書からいったん離れる勇気
「でも、参考書がないと不安で……」

その気持ち、とてもよく分かります。私の受講生さんにも、参考書への信仰が強い方がいらっしゃいました。だいたい全体の3割くらいで、そういう方には、こうお伝えしています。

「もちろん普段通りの学習を続けてくださってもかまいません。私が渡している課題とともに学習されるのでしたら」

受講者さんが、せっかく育ててきた学びたいという気持ちを踏みにじったり、無理に取り上げたりはしたくないからです。でも数か月すると、参考書からいったん離れて英語を「使う」ことに注力した受講者さんのほうが、どんどん話せるようになっていく。グループレッスンで、みんなが自分の考えを英語で会話している。そのとき、ようやく気づくようです。

「あ、自分は参考書に逃げていたんだな」

参考書への信仰が本当に強く、ずっと片時も離せない方は全体の1割ぐらい。どこかで手放せる人のほうが多いですが、しがみつく人はだいたい1割ぐらいいます。そういう人たちも、4か月とか5か月ぐらいで変わっていきます。

もちろん参考書が悪いわけではありません。必要な知識を身につけるうえで、とても役立つものですし私も何百冊も読んできました。でも、ある程度の知識があって英語が「誰が、どうする、何を」の構造になっているとわかる人にとっては、簡単な日常英会話ができるようになる最短ルートではない。「話せる自分」を本当に目指すならいったん参考書から離れて自分の言いたいことを考え、口にしてみる。その勇気が、あなたを次のステージへと連れて行ってくれます。

■あなたは、すでに準備ができている
何冊も参考書を買ってきて何年も英語を勉強してきた、あなた。その努力は、決して無駄ではありません。むしろ多くのことを聞き取り、話すための材料をしっかりと手に入れています。必要なのは「自分のことを話す練習」だけ。

I am tired. I ate breakfast. I like coffee.

そんな簡単な文から始めましょう。完璧じゃなくていい。間違えてもいい。まずは、あなたの口から、英語を出してみてください。その一歩を踏み出したとき、きっと新しい世界が見えてくるはずです。


川崎あゆみ 最速英語習得の専門家・株式会社グロバリ代表

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■プロフィール 川﨑あゆみ 最速英語習得の専門家・株式会社グロバリ代表
kawasaki_ayumi

株式会社グロバリ代表。「第二言語習得論」と「コミュニケーション学」を融合した独自メソッドで10年以上、5000人以上を指導。18歳でアメリカに留学するも、英会話力ゼロで絶望。この体験をもとに日本人が効率よく英語を習得する方法を追求する。TESOL(英語教授法)修士号取得。
留学先の大学では、卒業まで4年かかるカリキュラムをわずか2年半かつ準首席の成績にて卒業。JICA関連の企業に就職し、英語教育と国際業務の現場を経験。その後、独立。「英語力も人生も揺るぎないものに」をミッションに、英語スクール運営や短大・企業での英語講師、海外の政府関係者の通訳、英語講師の養成講座の主宰など幅広く活躍している。文部科学省中央教育審議会専門委員。二女の母。
著書に『英語が日本語みたいに出てくる頭のつくり方 第二言語習得論の専門家が教える「英語の正しい学習法」』(日本実業出版社)。最新刊『思ったことを英語にできる3ます英語』(サンマーク出版)では小学生から80代まで英語を話せない人が話せるようになったメソッドを紹介。

・SUNMARK WEB
https://sunmarkweb.com/

思ったことを英語にできる 3ます英語
川﨑 あゆみ
サンマーク出版
2025-09-24



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