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日本で外国人に道を聞かれたとき、海外旅行で現地の人と話そうとしたとき――。言いたいことはあるのに言葉が出てこない。「間違えたら恥ずかしい」と考えているうちに、会話が終わってしまう……。

最速英語習得の専門家・川﨑あゆみ氏は、日本人が英語を話せない原因は「間違えてはいけない」という減点方式の呪縛にあると指摘します。減点方式から解放された英語学習者の、驚くべき変化とは。

■「間違いも正しいもない」という言葉に救われた
外国人を前にすると、頭が真っ白になる。言いたいことはあるのに、言葉が出てこない。間違えたら恥ずかしい。 変なこと言ったらどうしよう。 文法、合ってるかな。そんなことを考えているうちに、会話が終わってしまう。

そんな悩みを持つ英語学習者さんたちからたくさんの相談を受けてきました。それらを踏まえ、お伝えしたいことがあります。

日本人が英語を話せない原因は「間違えてはいけない」という減点方式の呪縛がからんでいて、そこから抜け出すのが英語でコミュニケーションする近道なんです。

私の受講生さんに「さやか」さんという女性がいました。いろいろな英会話スクールに通ってきた彼女。ある日、私がこう言ったら、とても驚いた顔をされました。

「さやかさんの意見に、間違いも正しいもないですよ。さやかさんが感じた意見を言えばいいんです」

こうお伝えすると、さやかさんは「すごく救われた」と言い、このように続けます。

「私、ずっと、間違えたこと言っちゃいけない、って思ってたんです」

これは、さやかさんだけの話ではありません。多くの日本人が、教育を中心としたさまざまなシーンで「減点方式」が叩き込まれています。100点満点からスタートして、間違えるたびに点数が引かれていく。

たとえば、国語のテストで漢字を一画間違えただけでバツがつき、数学で答えが合っていても、計算過程が期待されていたものと違えばバツがつくというような経験を経て「間違えてはいけない」 「完璧でなければいけない」という価値観が染み付いてしまっているんです。

■全体の80%は合ってるのに、バツがつく?
私が大学院で一緒のクラスを履修していたペルー出身の友人は、こんなことを言っていました。

「日本語学校で漢字テストがあって、池という漢字をサンズイじゃなくニスイを書いたら、バツされたの。でも、これって80%合っているんだから、0.8ポイントもらえるはずでしょ、って先生に交渉したら、ダメだって。そんな教育をしていたら、子どもたちがかわいそうだよ」

この話を聞いて、あなたはどう思いますか。確かに、日本では「100%正しくなければダメ」という価値観が当たり前になっています。でも、それを英語での会話に持ち込んでしまうと――話せなくなってしまうんです。

英語での会話は「試験」ではありません。学習科目かのように考えてしまうと、コミュニケーションという認識ができなくなっていきます。海外の方と話すとなったときにも試験だと思ってしまう。自分は正しいことを今、話さなければいけない、というモードになります。

「コミュニケーションを取ろう」じゃなくて、これから面接が始まります、という感じで「ジャッジされるかもしれない」「減点されるかもしれない」と考える。だから、相手に興味も芽生えなければ、相手の話も楽しもうとも思えない。言えることをとにかく言って、出てくる言葉は自分が思ったことではなくなっていく。とりあえず間違えずに聞き取らなければ、となってしまう。

コミュニケーションを取ろうというより、間違えないことが勝ってしまうのです。

■棒読みプレゼンはお互いに地獄でしかない
私自身も、かつては同じように考えていました。アメリカの大学に留学していた時、毎週のようにプレゼンテーションがありました。プレゼンテーションでは、間違えて読んじゃダメって思っていたから、もう用意した文章を完全な棒読みなのですが、とりあえず書いておいた単語を全部言うんです。それだと全く内容が伝わっていないし、もう相手からしたら「これ、何の時間?」という感じになっていました。

でも自分としては、とりあえず与えられた5分間で作ってきたスクリプトを全部読み上げるぞと思っていて。それで、お互いに地獄のような時間を過ごしていたところ、先生に、すごく怒られました。

「間違えても言い直してもいいので、伝わることを意識してください。あなたの言葉の先に聞いている相手がいて、彼らが理解しなかったら、あなたのプレゼンは何の意味もない」

とりあえず5分以内に言い切ればいいと思っていた私は、自分のことしか考えていなかったことにはじめて気づいてショックでした。大切なのは相手に何を貢献したいか。たとえ、つくってきた文章と違うことを言ったとしても、相手が理解し頷いてくれたりしてくれる話をするのが正解だったのです。

私のは、ただの棒読み。とにかく間違えちゃいけないと思っていました。英文自体は単語も文法も間違っていないはずですが、最初の数か月の私のプレゼンを理解した人は、いないと思います。

正しくても、伝わらない。

英語って抑揚などがあって伝わる言語なので、棒読みだと全然伝わらないんです。

「誰が、どうする、何を」という言葉を並べる順番が決まっているから、 そのリズムのようなものを含めて伝わるのが英語です。ただ、言いたいことをフラットにバーッと言っても相手は受け取れないし、どれだけ文法や単語が正しくてもうまく通じないんです。

■「大阪のおばちゃん」が最強な理由
こう思うことがあります。大阪のおばちゃんが最強というのは、まさにそうだなと。英語はコミュニケーションですから。

実際、私がアメリカにいた時、関西のある女子大学から来ていた先輩が、食堂でアメリカ人の男たちと口論していて、日本語で抵抗していました。それでも棒読みより伝わるんです、彼女が怒ってるということが。

ちゃんと大阪弁で、「英語で話されてもわからんやろ」「日本語しゃべれや!」と言ってました。その光景を見て、すごいなと。

やっぱりコミュニケーションなんです。

英語学習者で困っている人は、英語を記号だとか科目だとか思ってる傾向があって、コミュニケーションだとは思ってないんですね。

でも、話せる人は違います。なぜか?

それは、「伝えたい」という気持ちが強く、間違いを恐れないから。

完璧な文法じゃなくても、単語が正しくなくても、感情と身振り手振りで、コミュニケーションは成立する。逆に、どんなに正しい英語を話しても、「伝えたい」という気持ちがなければ、通じないんです。

■「willingness to communicate」がすべて
英語教育の研究で、「willingness to communicate」という概念があります。

日本語にすると、「コミュニケーションしたい欲求」。

結局、話したいという欲求がちゃんとあるかどうか。ある人のほうが、英語が上達すると言われています。

つまり、「正しく話したい」と考える人よりも、「伝えたい」という気持ちが強い人のほうが、英語が話せるようになる。でも、日本人の多くは、「正しく話したい」が勝ってしまう。「間違えないこと」が、「伝わること」よりも優先されてしまうんです。

■アメリカ人も、じつはたいしたことを言ってない?
ちなみに、私がアメリカ留学の時に授業中に発言できなかったのは、間違えたことを言ってはならないと思っていたからだったんですが、発言しないと欠席に。アメリカでは意見をぶつけ合うことに価値があり、何も言わない人には「あなたは学校のクラスに貢献してない」などと言われてしまう。

日本だと、変なこと言ったら貢献どころかマイナスになるかもしれないなどと思われがちです。

でも、私は英語ができるようになって、よくよく聞いてみたら、アメリカ人たちも大した発言してない人もいました。「それ、さっき先生が説明してたことを単に言い直してるだけ」という人もいるんです。

海外の学習カリキュラムにはプレゼンがあるから、話す内容も洗練されていて、意見もすごくしっかりと言える人たちだ、などとみんなが思っている気がします。

たしかに、幼いころからクリエイティブライティングといって作文を書いたり、クラスの前で発表したりするのが普通の教育を受けているため、話すことに対して自信というか、オーラがあります。

私たちから見たらそのオーラと言葉の速さに圧倒されてしまう。でも英語ができるようになって、よくよくよく聞いてみると内容が薄い、大したことを言っていないことも多いんです。

■「減点方式」を手放した瞬間、人は変わる
この「減点方式」を手放せた人たちは、驚くほど変化します。

最初は、「私、頭が悪いから」「覚えられないから」と自分を責めていた人たちに、私が「間違えてもいいんですよ」「あなたの意見に正解も不正解もないんですよ」と伝えると、みなさん目が変わります。

「え、そうなんですか?」

その瞬間、英語が口から溢れ出す道がひらくんです。

英語は、科目でも記号でもありません。コミュニケーションのツールです。

相手に興味を持って、相手の話を聞いて、自分の気持ちを伝える。それが、会話。

たとえ文法が多少間違っていたとしても、発音が完璧じゃなくても、伝わればいい。むしろ、間違えたら、「あ、違った!」って言い直せばいい。分からなかったら、「もう一回言って?」って聞き直せばいい。それが、コミュニケーションです。

英語をコミュニケーションとして見れば、間違いを恐れる必要などありません。相手と分かり合いたい、という気持ちがあれば、言葉は後からついてくるのです。

■「減点方式」を手放すための4つの視点
では、どうすれば「減点方式」を手放せるのでしょうか。

まず、こう考えてみてください。

1.「正しいか間違っているか」ではなく、「伝わるか伝わらないか」
完璧な文法じゃなくても、伝わればOK。

2.「自分の意見に、正解も不正解もない」
あなたが感じたこと、思ったことを言えばいい。それに間違いはありません。

3.「間違えたら、言い直せばいい」
間違いは、失敗じゃなくて、学びのチャンス。

4.「相手に興味を持つ」
英語を「試験」として見るのではなく、「相手とつながるツール」として見る。

これらを意識するだけで、英語への向き合い方が変わってきます。

■あなたの英語知識は十分にあるかもしれない
「私の英語は、まだまだ……」

そう思っていませんか。でも、本当は、あなたの英語知識は、ちょっとした英語での会話をするのに十分なくらいあるはずなんです。「誰が、どうする、何を」の語順さえ間違えなければ大丈夫。

I am tired.(疲れた) I like coffee.(コーヒーが好き) How are you?(元気?)

こんなシンプルな文でも、コミュニケーションは成立します。完璧を求めずに、いまあなたのなかにある英語で、相手に伝えてみる。その一歩を踏み出した時、あなたの世界は変わります。

「間違えてはいけない」という呪縛を手放して、「伝えたい」という気持ちを大切にする。そうすれば、英語は、口から自然に溢れ出ます。これまでは、単に減点方式という日本の教育システムの中で「間違ってはいけない」と思い込まされてきただけ。こう考えるだけで、英語での会話ができる日本人の数は何倍にもなるはずです。

川崎あゆみ 最速英語習得の専門家・株式会社グロバリ代表

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■プロフィール 川﨑あゆみ 最速英語習得の専門家・株式会社グロバリ代表
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株式会社グロバリ代表。「第二言語習得論」と「コミュニケーション学」を融合した独自メソッドで10年以上、5000人以上を指導。18歳でアメリカに留学するも、英会話力ゼロで絶望。この体験をもとに日本人が効率よく英語を習得する方法を追求する。TESOL(英語教授法)修士号取得。
留学先の大学では、卒業まで4年かかるカリキュラムをわずか2年半かつ準首席の成績にて卒業。JICA関連の企業に就職し、英語教育と国際業務の現場を経験。その後、独立。「英語力も人生も揺るぎないものに」をミッションに、英語スクール運営や短大・企業での英語講師、海外の政府関係者の通訳、英語講師の養成講座の主宰など幅広く活躍している。文部科学省中央教育審議会専門委員。二女の母。
著書に『英語が日本語みたいに出てくる頭のつくり方 第二言語習得論の専門家が教える「英語の正しい学習法」』(日本実業出版社)。最新刊『思ったことを英語にできる3ます英語』(サンマーク出版)では小学生から80代まで英語を話せない人が話せるようになったメソッドを紹介。

・SUNMARK WEB
https://sunmarkweb.com/

思ったことを英語にできる 3ます英語
川﨑 あゆみ
サンマーク出版
2025-09-24



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