![]() 「受験で人生が決まる」といった親の価値観は、子どもにどのような影響を及ぼすのか? 著書『塾講師が言わない子どもを苦しめない受験戦略』(蓮池林太郎・セルバ出版)から再編集してお届けします。 ■「手段が目的化する教育」の弊害 *教育の真の目的とは 「一流企業に就職させたいから、有名大学に進学させたい」 「有名大学に進学させたいから、いい中学に行かせたい」 「いい中学に行かせたいから、小学4年生くらいから子どもには受験勉強をさせたい」 というように、教育熱心な親は子どもの将来を思うからこそ、まだ遊びたい盛りの我が子を長時間机へ向かわせようとします。 そして一流企業就職コースを歩ませるために、膨大な時間や費用といったコストをかけるのです。 ところで、子どもが一流企業に就職するとか、有名大学に進学するというのは、あくまで一手段に過ぎず、親が子に受けさせる教育の本目的ではありません。 親が子どもを教育する本質的な目的は、子どもに不幸な人生を歩ませないこと。願わくば苦しみの少ない、幸せで充実一途の人生を送ってもらうこと。ここにあるはずです。 子どもの順風満帆な人生を心から望むべきなのに、その必須手段が、早期から受験にチャレンジして、いい学校へ行くことと思い込む。「受験で人生が決まる」という固定観念が、親たちの脳にこびりついているのかもしれません。本来は手段の一つにすぎないはずの受験が目的化しているのです。 もちろん、子どもに幸せになってほしいという目的遂行のもとに、子どもの性格や適性を十分熟知し分析した上で教育プランを練ったところ、早期からの受験対策という手段が弾き出されたのであれば、それは正しい教育といえるでしょう。 しかしどうでしょうか。情報が溢れかえっているIT全盛期の現代社会では、メディアの流す「年収の高い企業ランキング」や「就職に有利な大学ランキング」といった情報にだけ目が行ってしまい、周りの同調圧力によって「うちの子も受験させたほうがいいかな」と、自分の子どもと正面から向き合うことを怠って教育ルートを決めてしまう親が増えているようにも感じます。 「一流企業を目指すべき」「大学に行くべき」といった「べき論」に無意識に支配されてしまっているのかもしれません。外からの影響によって子どもの教育プランを決めてしまうことは、本来の目的である「子を不幸にしない」「幸せな人生であってほしい」という願いを無視してしまい、かえってよくない結果を招くことにもなりかねないのです。 手段が目的化していないか。メディアや周りの価値観に流されることなく、冷静に立ち止まって深く考えたいところです。 ■間違った価値観を植え付けることも *受験がもたらす負の思考 「子どもの可能性を拡げ、選択肢の幅を増やすためにも、いい大学へ行かせるのは当たり前ではないか」 この意見は間違いではありません。しかしその考えに固執してしまうことで、かえって子どもの可能性を狭めてしまいかねないことを、十分に自覚しておきたいものです。 たとえば、上位大学へ行かせるための教育課程の途上で、子どもの成績が伸び悩んでしまったとします。勉強に嫌気が差している子どもを奮い立たせるため、親は次のような言葉を使ってしまいがちです。 「勉強しないと真っ当な大人にはなれない」 「受験に失敗して貧しく寂しい人生を送るなんて嫌だろう」 「あの人を見てみて。いい大学へ行けないと、あんな人みたいになっちゃうよ」 これは正しい教育、子を奮い立たせる正当なやり方といえるのでしょうか。 このような、「受験勉強で失敗すると人生が終わる」という発想を植え付けるような教育下で育った子どもは「一流企業に勤めてこそ真っ当な人間」といった類の価値観に縛られがちです。度が過ぎると「一流企業勤め以外の人間はクズ」といった極端な学閥主義や選民思想に囚われてしまうこともあります。私はこれまでの人生の中で、そのような人をたくさん見てきました。 とくに親が高学歴の場合、その価値観はより顕著となり子どもに悪影響を及ぼします。親によっては、東大早慶レベルの大学はよく知っていても、MARCHより下の大学の実態はほとんど知らないこともあります。 自身や周りも高学歴ばかりという環境にいると、「MARCHより下の大学を出ると高収入の仕事に就けず、人生を棒に振ることになる」と、本気で思い込んでいる親も中にはいます。 しかし私たちは知っているはずです。一流企業でなくても、高収入でなくても、自分の人生や仕事に誇りを持ち、幸せな毎日を送る人たちがいることを。 しかし受験で上の大学を目指す教育に終始していると、先述のような間違った激励の言葉を多用して、根底にある大切で真っ当な価値観を教えることを怠ってしまうのです。実際に有名大学や一流企業に在籍している人の中には、このような価値観を植え付けられて育った人がいます。 その優秀な集団の中で切磋琢磨できるだけの能力があれば充実の人生を辿れることでしょうが、自分の良さが十分に発揮できず、想定していたキャリアの道から外れてしまう事態になることもあります。歪んだ価値観のままだと、一流の集団にいてこその人生ですから、ほかの人生ルートを受け入れることなど到底できません。描いていた理想と直面した現実とのギャップに絶望し、誰も望んでいないような結末を選んでしまう人もいることでしょう。 私自身、医者家系の中で育ったので、視野の狭かった子ども時代は「成績が良くなれば人生負け組」という価値観を自ら造成し、それに縛られている節がありました。プレッシャーで押しつぶされそうになり、人生に嫌気が差すこともありました。 しかし高校時代のコンビニやカラオケ店でのアルバイト経験で視野が広がり、医者以外にもやりがいのある仕事がたくさんあること、収入が高くなくても楽しく生きている人がいることを知りました。 勉強戦争に明け暮れて疲弊していた心傷が癒され、歪んだ価値観を正すアップデートを行うきっかけになったのです。 目的を見誤ってしまうことは、歪んだ価値観や思想を醸成させるだけでなく、物質的な支障をもたらすことにもなりかねません。受験にコストをかけ過ぎてしまい、家計を圧迫し、首が回らなくなってしまうこともあります。 小学生の早い時期から塾通いをし、中高一貫校に進学できたものの、学費が重たくて生活がままならなくなってしまう。結果、生活レベルを落とすため引っ越しを余儀なくされ、大学への進学を諦めなくてはならなくなる。そんなことになってしまっては元も子もありません。 子どもの幸せ、家族の幸せ。みんなが苦しまないためにはどうするべきか。その視点からスタートさせ、子どもの教育プランを立てることが肝心です。 蓮池 林太郎 医師・作家・新宿駅前クリニック院長 【関連記事】 ■【年明け内定辞退の衝撃】新卒就活の現場を揺るがす「オヤカク」への向き合い方(河本英之 人材コンサルタント) https://sharescafe.net/62869078-20251219.html ■紙を手放せない会社は疲弊する? 外資が実践する“電子が基本”の仕事術 (沢渡あまね) https://sharescafe.net/62856156-20251215.html ■なぜ「仲良し営業」は最後に裏切られるのか?心理学で解くプロの距離感 (財津優 セールスコンサルタント) https://sharescafe.net/62863304-20251217.html ■110万円の家賃を払う板野友美さんとヤクルト高橋奎二さんの判断が正しい理由。(中嶋よしふみ ファイナンシャルプランナー) https://sharescafe.net/62674731-20250930.html ■世帯年収1560万円の共働き夫婦は、9540万円の湾岸タワーマンションを買えるのか? その1・生活費は年間800万? (中嶋よしふみ ファイナンシャルプランナー) https://sharescafe.net/61186482-20240125.html ■プロフィール 蓮池 林太郎 医師・作家・新宿駅前クリニック院長 1981年生まれ、帝京大学医学部卒業。病院勤務を経て、2009年新宿駅前クリニックを開設。医療法人社団SEC理事長、新宿駅前クリニック院長。 医者としてのキャリアとインターネット分野の知識を掛け合わせ、ホームページ、ウェブメディア、書籍などを通じて、クリニック開業、病院選び、生き方、婚活など独自の視点から情報発信を行っている。これまで10冊ほどの書籍を出版。 2017年からはクリニック開業コンサルティングも提供を開始、100人以上の医師からの相談実績がある。 子どもが5人おり、教育についても独自に情報収集を行い、コスパ・タイパに優れた受験戦略を研究している。 シェアーズカフェ・オンラインからのお知らせ ■シェアーズカフェ・オンラインは2014年から国内最大のポータルサイト・Yahoo!ニュースに掲載記事を配信しています ■シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家の書き手を募集しています。 ■シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家向けに執筆指導を行っています。 ■シェアーズカフェ・オンラインを運営するシェアーズカフェは住宅・保険・投資・家計管理・年金など、個人向けの相談・レッスンを提供しています。編集長で「保険を売らないFP」の中嶋が対応します。 |


