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近年、大学受験と日本の雇用システムは同時に大きな変革期を迎えています。それに伴い、これまで良しとされてきた「とにかく偏差値の高い大学に入る」という価値観もアップデートする必要があるのかもしれません。いま、日本で急激に起こっている変化とは? 『塾講師が言わない子どもを苦しめない受験戦略』(蓮池林太郎・セルバ出版)から再編集してお届けします。

塾講師が言わない子どもを苦しめない受験戦略
蓮池 林太郎
セルバ出版
2025-11-27


■指定校推薦や総合型選抜の枠が増えている
*変革を遂げる大学受験市場
大学の入試方法は「一般選抜」「学校推薦型選抜」「総合型選抜」の3つが主流です。

一般選抜はおもに学力試験を通して合否を決める、もっともオーソドックスな選抜方法です。

学校推薦型選抜は高校での成績などを材料として、大学の求める条件を満たした学生が受け合否を決める選抜方法です。学校推薦型選抜はさらに、指定された高校の生徒だけが出願できる指定校推薦と、どの高校の生徒でも出願できる公募推薦に分けられます。

最後の総合型選抜は聞き慣れない方もいるかもしれませんが、かつてのAO入試と呼ばれるもので、学力だけでなく小論文や面接や意気込み、個性や特性など、その名の通り総合的に学生を評価し選抜する入試方法になります。

一般選抜が高校3年の1月から3月にかけて行われるのに対し、学校推薦型選抜や総合型選抜は3年の秋から年末までに実施されます。生徒やその親にとっては、日ごろの成績や個人の能力を多角的に評価してくれる傾向の学校推薦型選抜と総合型選抜に魅力を感じることでしょう。大学側にとっても、早くに学生を確保できるという意味合いにおいて、2つの入試方法にメリットがあります。

そして着目すべきは、近年MARCHレベル以下の大学が、一般選抜による入学者の割合を減らし、学校推薦型選抜や総合型選抜の枠を増やす傾向にある点です。

いわば大学による学生の青田買いということになるわけですが、ここから読み取れる大学の意図としては、単に学力が高いだけでなく、大学に対して明確な志望を抱いている将来有望な学生を採用したいというのがあるのでしょう。学力検査では測ることのできない、学生の潜在的本質的能力を、コツコツと積み上げてきた実績や面接でのやり取り、小論文に込められる熱意などを通して見定めたいのです。

向こう5年10年で、さらに一般選抜以外の選抜方法が重視されていくといわれています。この流れを踏まえると、大学進学までの戦略もアップデートの必要性を感じます。

学校推薦型選抜と総合型選抜に向けた対策に力を入れる高校が増えていくことでしょう。一般選抜に特化した教育カリキュラムを組む高校は、一部の上位校だけに限られていくかもしれません。

そうなると親としても、子の性格や適性を見ながら、どちらのタイプの高校に行くべきかを戦略的に考えていく必要が出てきます。

学校推薦型選抜や総合型選抜は早期に決着がつく点が魅力ではあるものの、逆にそれが懸念材料となることもあります。合格が決まると、ほかの受験生が一般選抜に向けて切磋琢磨しているのをわき目に、解放感から遊びに浸ってしまう生徒もいます。そこで明確に学力の差がついてしまう、怠け癖が定着してしまうリスクは見逃せません。

大学入学後の成績に響き、必修単位が取れなかったり、留年になってしまったりで、就職にも悪影響を及ぼしてしまう可能性があります。現代の選抜方法の傾向を知り、きちんとメリットとデメリットを把握しながら、戦略を立てる意識は欠かせません。

■廃れていく日本型雇用
*ジョブ型雇用が与える影響は甚大
終身雇用や年功序列といった、日本型雇用を象徴するワードを耳にしなくなって久しくなりました。終身雇用は幻想とでもいうように、大企業でも早期退職や人員削減が活発になっています。

これを書いている直近の話題を拾うと、事業悪化に伴う再建のため日産自動車は国内外で2万人規模の早期退職の募集を2025年より開始。
パナソニックホールディングスは黒字を維持していながらも、2025年5月に国内で5000人規模の人員削減を発表しています。

大企業であっても安心できない先行き不透明時代。大企業に勤めれば一生安泰という神話は完全に崩壊したといえるでしょう。2024年には自民党の小泉進次郎氏が総裁選の公約として「大企業の雇用ルール見直し」を掲げ賛否両論を呼びました。

希望退職の形ではなく、経営難などを理由として企業が労働者を解雇できるハードルを下げていく目論みです。再就職支援を徹底するなど、解雇される労働者を守る条件付きではあるものの、日本型雇用を一刀両断するようなこの提案。

「簡単に人を切れるような仕組みはいかがなものか」という批判が出る一方で「人材の流動化が見込め、先行き不安な企業に居続けるジレンマから抜け出せる」といった賛成意見も出ていました。

少し前なら考えられないような制度見直しが、今の日本では提唱されるようになったのです。そのくらい、日本の経済は苦しめられているということでしょう。日本経済の活性剤として、雇用の見直しが頻繁に取り沙汰されるのは当然ともいえます。

経団連は2020年の経営労働政策特別委員会にて、「日本型雇用システムの見直し」と「ジョブ型雇用の推奨」を提言しています。これは終身雇用や年功序列を真っ向から否定する方針といえるでしょう。

採用後に従業員にふさわしい役割を当てていくのが従来の日本型雇用、いわゆるメンバーシップ型雇用でした。これに対しジョブ型雇用は、企業が必要としている専門スキルや資格を有している人材を採用する、最初から役割が決まっている形での雇用方法になります。

このジョブ型雇用が際立つほどに、日本らしい働き方は失われていくことでしょう。年齢は関係ありません。会社への貢献度、能力の高さに準じて、雇用者から被雇用者へ報酬が支払われる仕組みづくりです。

長く勤め会社へこの身を捧げてきた社員を放出する一方で、新卒社員の初任給が上がる傾向にあります。より長く会社へ貢献してくれる、有望な人材を採りたいという企業の意図が汲み取れます。

優秀な人材はキャリアを積むとともに給与も右肩上がりでしょうが、そうでない人材は初任給からほぼ上がらず横ばい、というのが当たり前の時代になっていくのかもしれません。平凡なルーティンワークをこなす30年勤務のベテランよりも、代わりのない専門スキルを有した新卒社員のほうが、給料を取れる時代がやって来ようとしています。

このような変化がいいのかどうかは、平成の失われた30年と同様、長期の観察時間が必要です。少なくとも、ここで間違いなくいえることは、日本の経済が落ちぶれてしまった以上、この流れを止めることはできないということです。

大学時代に単位を取ることだけに躍起になっていた人材よりも、高卒で難関の資格を取得している人材のほうが重宝され上位の企業に勤めることができる、そういった下克上のような採用ストーリーも多発すようになるかもしれません。

学生時代にどういったスキルを磨き、どんな資格を有し、どんな実務に活かせるかが、これからはさらに問われていくことでしょう。


蓮池 林太郎 医師・作家・新宿駅前クリニック院長


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■プロフィール 蓮池 林太郎 医師・作家・新宿駅前クリニック院長
1981年生まれ、帝京大学医学部卒業。病院勤務を経て、2009年新宿駅前クリニックを開設。医療法人社団SEC理事長、新宿駅前クリニック院長。
医者としてのキャリアとインターネット分野の知識を掛け合わせ、ホームページ、ウェブメディア、書籍などを通じて、クリニック開業、病院選び、生き方、婚活など独自の視点から情報発信を行っている。これまで10冊ほどの書籍を出版。
2017年からはクリニック開業コンサルティングも提供を開始、100人以上の医師からの相談実績がある。
子どもが5人おり、教育についても独自に情報収集を行い、コスパ・タイパに優れた受験戦略を研究している。

塾講師が言わない子どもを苦しめない受験戦略
蓮池 林太郎
セルバ出版
2025-11-27

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