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タメ口は親しみを感じさせ、相手との距離を縮める有効な手段ですが、職場などの形式的な場では敬語を使うべきか迷う人も少なくありません。円滑なコミュニケーションを実現し、誰もが安心安全な職場の雰囲気をつくるためには、ソフト面とハード面からのアプローチが不可欠です。

今回は、敬語とタメ口を適切に使い分け、生産性の高い集団を生み出す工夫について、『戦略的タメ口 結局、コミュ力の高い人がすべてを手に入れる』(堀田秀吾・WAVE出版)から再編集してお届けします。



■誰もが快適!安心安全な職場のつくり方
*相手との関係性や心の距離感を理解する
これまで繰り返し述べてきたように、タメ口は親しみを感じさせ、距離を縮めるための有効なコミュニケーション手段です。しかし、多くの場面では敬語が重んじられ、タメ口を使うことに抵抗を感じる人が少なくありません。

では、どうすればタメ口も使えるような、円滑なコミュニケーション環境がつくり出せるのでしょうか? これについては、ソフト面とハード面の両方から考えてみましょう。

まずはソフト面から。タメ口を使うためには、相手との関係性の理解が不可欠です。

親しい友人や家族であればタメ口は自然に使われやすいものですが、職場や学校など、形式的な関係が多い場所では、まずは相手がどのようなコミュニケーションスタイルを好むかを見極めることが必要です。

相手が自分との距離感をどう捉えているかを尊重することで、タメ口を使うべきか否かが判断できるようになります。特に、初対面や関係が浅い場合は、敬語から始めるのが当然無難です。

ただ、敬語で話すことが大前提の関係であっても、敬語だけではむしろ慇懃無礼になったりする場合もありますから、自分の感情などに関する部分で上手にタメ口を挟むことで、グッと印象が良い方向に変わったりもします。結局、敬語もタメ口も使い分けが大切だということです。

■「言語行為」にあたる注意は、あえて丁寧に
次のソフト面として、リーダーシップの役割も大切な場合があります。

職場やグループ活動の場では、リーダーがどのようなコミュニケーションスタイルを取るかが、全体の雰囲気に大きな影響を与えたりします。

リーダーが自らタメ口を使い、カジュアルな雰囲気を醸成することで、ほかのメンバーもその雰囲気に合わせやすくなります。

ただ、特に年齢や地位の差がある場合には、上から下へのタメ口の使用が高圧的に感じ取られやすいこともあるので、少し配慮が必要です。

特に、注意などの聞き手になんらかの行動を促すような言語行為(発話自体が挨拶や謝罪など行為の機能を果たすこと)の場合は、あえて敬語で丁寧にお願いする方が効果的だったりもします。

会話の内容、年齢や立場を含めた人間関係に合わせて、自身の感情表現に留めておくなど、聞き手に影響が少ないレベルのタメ口に抑えておく方がいい場合もあります。

■職場のタメ口環境と心理的安全性
また、別のソフト面としては、心理的安全性を確保することも重要です。心理的安全性とは、他者から批判されたり、攻撃されたりする心配がない状態を指します。

例えば、コミュニケーションが不足している職場であれば、上司や同僚がフランクな意見交換を歓迎する姿勢を見せることで、部下やそのほかのメンバーは、安心してタメ口を使い、自由なコミュニケーションを行うことができるようになります。

このような環境をつくるためには、まず「タメ口で大丈夫」「失敗しても大丈夫」というメッセージをリーダー的存在の人が繰り返し発信し、メンバー同士が互いに尊重し合う雰囲気を育むことが求められます。

■オフィスの形がコミュニケーションを活発にする
*リラックスできる環境とフラットな組織構造
次に、ハード面の物理的環境について考えてみましょう。

まず、場所やシチュエーションの工夫は効果的です。例えば、会議室やオフィスのような正式な場では敬語が基本ですが、オフィスの休憩室やカフェなど、カジュアルな空間では自然とタメ口が使いやすくなります。環境自体がリラックスしたものであれば、会話も自然とカジュアルでフランクになりやすいのです。

同様に、飲み会やランチタイムなど、日常的なフォーマルさから解放された時間も、タメ口を使う絶好の機会です。

こうした場を意識的につくることで、普段は敬語が中心でも、タメ口のコミュニケーションを挟みやすくなります。

タメ口を使いやすい環境づくりは、信頼関係や心理的安全性を基に行われるべきものです。そのためには、リーダーシップや場所やシチュエーションの工夫が求められます。形式的な敬語から少しずつカジュアルなことば遣いに移行することで、よりオープンで親密なコミュニケーションが生まれ、結果として、話者同士だけでなく、組織やグループ全体の雰囲気が和らぎ、相互理解が深まるのです。

タメ口が自然に使える環境は、人間関係をより豊かにし、前向きなコミュニケーションを促進する鍵となります。タメ口環境をつくるためには、会話体の構造そのものの改革が必要な場合があります。

伝統的な階層型組織では、上下関係が明確で、それに伴うことば遣いも厳格に求められていることが多いです。しかし、そのような暗黙の了解を見直してコミュニケーションを取ることへの垣根を低くするなど、フラットな組織構造を目指す必要があります。

役職や年齢に関係なく、誰もが自由に意見を言い合える雰囲気をつくることで、タメ口の使用がより自然なものになっていきます。

■オープンスペースや服装で、ことば遣いがカジュアルに
前述した通り、物理的な環境はタメ口の使用に大きな影響を与えます。固定された個人デスクや高い仕切りのあるオフィスでは、フォーマルな雰囲気が漂い、タメ口を使いにくくなります。

対照的に、オープンスペースのオフィスやカフェテリアのようなリラックススペースを設けることで、社員間の自然な交流が促進され、カジュアルな会話が生まれやすくなります(ただし、オープンにしすぎて丸見えにしてしまうと、従業員がプライバシーを守るために周囲を気にして、逆にコミュニケーションが減るというハーバード大学の研究もあります)。

さらに、ドレスコードをカジュアルにすることで、ことば遣いも自然とリラックスしたものになっていくでしょう。

タメ口を使用する環境づくりは、単にことば遣いを変えるだけの表面的な取り組みではありません。組織レベルの話になれば、当該組織の文化や価値観を根本から見直し、より開かれた、創造的で生産性の高い集団をつくり出すための包括的なアプローチにもなり得ます。

その意味では、タメ口環境の構築は、組織のコミュニケーションを根本から変革する可能性を秘めた、挑戦的かつ魅力的な取り組みになるかもしれません。


堀田秀吾 明治大学法学部教授・言語学博士


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■プロフィール 堀田秀吾 明治大学法学部教授・言語学博士
熊本県生まれ。シカゴ大学言語学部博士課程修了。ヨーク大学ロースクール修士課程修了・博士課程単位取得退学。
専門は、司法におけるコミュニケーションの科学的分析。言語学、法学、社会心理学、脳科学などのさまざまな分野を横断した研究を展開している。
テレビ番組のコメンテーターのほか、雑誌、WEBなどでも連載を持つ。
著書に『ハーバード、スタンフォード、オックスフォード… 科学的に証明された すごい習慣大百科 人生が変わるテクニック112個集めました』(SBクリエイティブ)『ハーバード、スタンフォード、科学的に証明された時間をムダにしない人の習慣』(アスコム)、『考えてはいけないことリスト』(フォレスト出版)などがある。




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