![]() 『戦略的タメ口 結局、コミュ力の高い人がすべてを手に入れる』(堀田秀吾・WAVE出版)から再編集してお届けします。 ■複雑化する社内のコミュニケーション *年下リーダー vs 年上部下の関係性で悩む人が続出 年上を尊重することは、日本という国において大切な礼節の一部です。とくに、敬語の使用などは、その尊重を示す良い例です。 しかし、年下の人が年上の人たちをマネジメントする立場になった場合は、いろいろとやっかいな問題が出てきます。年齢差を超えてフレンドリーなコミュニケーションが基本なアメリカでさえ、こういった問題に多くの年下リーダーが直面しているようです。 もちろん、年上部下との会話のなかで「タメ口」を使うことは、「生意気」だと思わせてしまうリスクもあります。しかし、使い方次第では親近感や信頼感を生み出すこともできます。 タメ口は、フレンドリーな雰囲気を醸し出す一方で、上手に使えば、対等な関係性を表現するために役立つ手法です。 相手の年齢や文化的背景を尊重しつつ、適切な場面で使うことが重要です。まずは、相手の反応を見ながら、少しずつフレンドリーな口調を取り入れることが賢明でしょう。 ■ことば遣いで悩む前に、考えるべきこと 年上部下との会話は、話し方に気を付けるのはもちろん、まずは相手の意見や経験に耳を傾け、協力の姿勢を示すことが信頼関係の構築に大きく貢献します。 年上のメンバーに対しては、彼らの経験を尊重し、これまでの知識を活かすよう努めましょう。例えば、「こんなふうに考えているのですが、どう思いますか?」と尋ね、相手のフィードバックを促すのです。 また、過去のプロジェクトや現在の作業スタイルについて質問し、彼らの経験から学ぶ姿勢を示すことで、相手に対する敬意や誠意が伝わります。良い上司は、自分の考えを押し付ける「ボス型」ではなく、相手の立場に寄り添いながら全体の方向性をコントロールしていく「リーダー型」だといわれています。 心理学の研究でも、共感的なリーダーシップは信頼と忠誠心を高め、チームのパフォーマンスを向上させる効果があるとされています。 年上の部下に何かしてもらいたいことがあるときに、命令のように上からのボス目線で行うのではなく、まずはどのように伝えたら相手が抵抗なく受け取りやすいのか、「リーダー型」の目線で考えてみましょう。 年齢差があるマネジメントは、リーダーとしての成長と学びのチャンスです。フレンドリーでありつつも尊重の気持ちを持ちながら、相手に寄り添ったリーダーシップを発揮することで、年齢の壁を越えた強いチームをつくることができます。 ■年下上司から年上部下へのことば遣い 近年、年功序列型の組織形態が変化し、年下の上司と年上の部下の関係がますます一般的になっています。この関係において、タメ口と敬語を適切に切り替えることが、信頼関係を築く上で重要です。 サイボウズチームワーク総研の調査では、年下上司は年上部下のことを、「仕事を任せられる」「信頼できる」と感じている一方で、年上部下は「接しやすい」「話し掛けやすい雰囲気」を年下上司に対して求めています。 この結果を踏まえ、適切なことば遣いがどのように相互理解や職場の円滑な人間関係に寄与するのか考えてみます。 敬語は、相手に対する敬意を示す機能に加え、社会的・組織的な階層を示す手段としての機能があります。しかし、先の調査では年上の部下が最も重要視しているのは「部下の話を聞く」姿勢であり、必ずしも敬語にこだわっていないことが明らかになりました。 打ち解けて話ができる関係のことを「ラポール」といいますが、ラポール形成の観点からも、単に敬語を使うだけではなく、相手の意見を尊重し耳を傾ける姿勢が大切です。 適度なタメ口は心理的な距離を縮める効果があり、タメ口は対等性や親近感を生むことから、年上の部下が求める「接しやすさ」や「話し掛けやすさ」につながります。 と同時に「上から目線だ」と相手に感じさせないためには、相手を不快にしないタメ口の活用が有効であり、形式的な敬語ばかりに依存しない柔軟なコミュニケーションを図ることが重要です。 これによって、相手が意見を言いやすくなり、双方向のやりとりが促進されます。 ■タメ口は「いつから」ではなく、「場面別に」切り替える 敬語とタメ口の適切な切り替えは、信頼関係の構築に直結します。 例えば、重要なミーティングや意思決定の場面では敬語を用いることで、相手に敬意を払う意思を示すと共に緊張感を保ちます。 一方で、雑談やちょっとした相談の際にタメ口を用いることでフランクな関係を築くことができ、年上の部下に対しても「意見を言いやすい雰囲気」を提供できます。 どの段階でタメ口に移行すればいいのか、という疑問を抱く人も多いかもしれませんが、「いつから」ではなく「場面別に」ことば遣いを切り替えることも、相手へのリスペクトを定期的に、かつ継続的にことばで示す上で有効な手段です。 ■アサーションで好印象!年上部下への指示の出し方 ビジネスの現場で年上部下に指示を出す場合、年下の上司は慎重なコミュニケーションが求められます。 ここで有効なのが「アサーション」という手法です。アサーションは、相手の立場や気持ちを尊重しつつ、自分の意思や要求を率直に伝える方法です。年上部下との信頼関係を築き、円滑な協力体制をつくり出すための重要な戦略となりえます。 端的な例としては、まずは相手を持ち上げてから、言いたいことを伝える場合です。例えば、年上の部下に新しいプロジェクトの役割をお願いする際、「このプロジェクトで○○さんの経験が大きな力になると考えています。一緒に頑張っていただけると嬉しいです」と伝えることで、部下に対する尊敬と要望が伝わりやすくなります。 このように、指示を出す際に相手の貢献やスキルを評価する姿勢を見せることは、指示を単なる命令として伝えるよりも効果的であり、相手のモチベーション向上にもつながります。 アサーションを意識することで、年下の上司は自己主張と相手への配慮をバランスよく保ち、年上の部下が快く協力できる環境を整えられます。また、部下も自分が役立てることを実感し、上司への信頼感を持ちやすくなります。 このような柔軟なコミュニケーションは、上司自身にとっても負担を軽減し、より良い職場環境の構築に貢献します。結果として、互いに尊重し合い、組織全体の成果を上げるために一丸となることができるのです。 ■年下からのタメ口を受け付けない人もいる しかし年下上司のなかには、タメ口を使ってみたものの、年上部下が受け入れてくれなかったという経験がある方もいるのではないでしょうか? ことば遣いに対する考え方や期待は個人差が大きく、特にタメ口の使用に対してはさまざまな反応が見られます。 なかには「年齢に関係なく、会社では敬語が普通」と考える人も一定数いることでしょう。こうした意見の違いから生じる不快感を軽減し、スムーズな人間関係を築くためにはどうするべきでしょうか。 ことば遣いは、一方的に押し付けるものではなく、相手の感じ方を大切にするべきコミュニケーション手法です。職場ではそれぞれの人間関係や文化があるため、年上の部下に対しても「このことば遣いで本当に良いのか?」と直接的・間接的に確認しつつ、適切な表現を選ぶことが望ましいのは言うまでもありません。 それを前提とした上で、まず、タメ口を使うシーンや話題を見極めることが重要です。タメ口は親しみを表す手段として有効な一方で、場合によっては馴れ馴れしさや軽視と捉えられることがあります。 先述したように、年下の上司が年上の部下に対して、雑談などのカジュアルな場面でのみタメ口を取り入れ、業務に関する指示や報告の際には基本的には敬語を使うことで、バランスの取れたコミュニケーションが生まれやすくなります。 業務内容に関しては、特に出会って間もない最初の段階では、敬語を基本とすることが無難です。敬語は相手に対する敬意を示し、信頼を築く上での安全なスタート地点となります。 年上の部下も敬語で接されることで「尊重されている」と感じ、関係構築がスムーズになるでしょう。その後、信頼関係ができた段階で、自身の感情や心の声がことばとして漏れてしまったようなタメ口を適宜挟んでいくなど、ことば遣いを柔軟に調整していくことで、相手の受け入れやすい形で親しみを表現することが可能となります。 堀田秀吾 明治大学法学部教授・言語学博士 【関連記事】 ■自然とタメ口がこぼれるフラットな職場の雰囲気は物理環境で作れる (堀田秀吾 明治大学法学部教授) https://sharescafe.net/62889752-20251227.html ■【3年冬で5割内定】就活の早期化が生んだ「内定者の長期フォロー」という新たな課題 (河本英之 人材コンサルタント) https://sharescafe.net/62936434-20260116.html ■子の受験が目的化する親たち――「受験で人生が決まる」の固定観念がわが子を追い詰める (蓮池林太郎 医師) https://sharescafe.net/62876939-20251223.html ■110万円の家賃を払う板野友美さんとヤクルト高橋奎二さんの判断が正しい理由。(中嶋よしふみ ファイナンシャルプランナー) https://sharescafe.net/62674731-20250930.html ■世帯年収1560万円の共働き夫婦は、9540万円の湾岸タワーマンションを買えるのか? その1・生活費は年間800万? (中嶋よしふみ ファイナンシャルプランナー) https://sharescafe.net/61186482-20240125.html ■プロフィール 堀田秀吾 明治大学法学部教授・言語学博士 熊本県生まれ。シカゴ大学言語学部博士課程修了。ヨーク大学ロースクール修士課程修了・博士課程単位取得退学。 専門は、司法におけるコミュニケーションの科学的分析。言語学、法学、社会心理学、脳科学などのさまざまな分野を横断した研究を展開している。 テレビ番組のコメンテーターのほか、雑誌、WEBなどでも連載を持つ。 著書に『ハーバード、スタンフォード、オックスフォード… 科学的に証明された すごい習慣大百科 人生が変わるテクニック112個集めました』(SBクリエイティブ)『ハーバード、スタンフォード、科学的に証明された時間をムダにしない人の習慣』(アスコム)、『考えてはいけないことリスト』(フォレスト出版)などがある。 シェアーズカフェ・オンラインからのお知らせ ■シェアーズカフェ・オンラインは2014年から国内最大のポータルサイト・Yahoo!ニュースに掲載記事を配信しています ■シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家の書き手を募集しています。 ■シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家向けに執筆指導を行っています。 ■シェアーズカフェ・オンラインを運営するシェアーズカフェは住宅・保険・投資・家計管理・年金など、個人向けの相談・レッスンを提供しています。編集長で「保険を売らないFP」の中嶋が対応します。 |


