unnamed
「絵文字をつけたのに、なぜか距離ができた」「『!』で明るくしたつもりが、相手に“圧”として伝わっていた」――チャットやSNSが仕事の標準ツールになった今、世代間でのメッセージのやりとりにおいて、こうしたすれ違いが頻繁に発生しています。世代が離れていても、メッセージのやりとりを通じて良い関係性を築くコツとは?

戦略的タメ口 結局、コミュ力の高い人がすべてを手に入れる』(堀田秀吾・WAVE出版)から再編集してお届けします。



■メッセージ上の世代間ギャップとタメ口
*絵文字の多用はNG
かつて、顔文字や絵文字は若者の間で流行し、メッセージに温かさや親しみを加えるための手段として使われていました。これらは、ことばだけでは表現しきれない感情やニュアンスを伝えるため、特にラポート・トーク(親密な関係を築くための会話)の一環として活用されていました。

しかし、現在の10代や20代にとって、絵文字や顔文字は必ずしもその役割を果たしているわけではなく、むしろ世代間の感覚の違いを象徴するものとなっています。

もともと、顔文字や絵文字は若者の文化として登場しました。しかし、上の世代が、若者に合わせようと積極的に使い始めたのです。

これは、世代間の距離を縮めるための努力として、あるいは自身の若さの演出として、若者のスタイルに寄せる行動でした。

親や職場の上司が若者とのコミュニケーションを円滑にするために、あえてカジュアルな感じを演出するために顔文字や絵文字を多用し始めたのです。

しかし、ここで逆転現象が起こりました。上の世代が過剰に(実際の若者が使う以上に!!)絵文字や顔文字を使い始めたことで、その文体がむしろ「おじさん/おばさん臭い」と若者に感じられるようになったのです。

真似をしようとして本物以上にその特徴が強く出てしまうことを「過剰矯正」と呼ぶのですが、まさにその好例です。

この現象は、言語や表現の流行が世代間でどのように変遷していくかをよく表しています。

若者の文化が上の世代に取り入れられると、それが逆に「若者らしさ」を失い、若者自身がそのスタイルを避けるようになるのです。

今の10代や20代は、過剰な絵文字や顔文字を使うことを避け、よりシンプルで洗練されたメッセージを好む傾向があります。句点の「。」でさえ使わないのがトレンドです。若者が送るメッセージはよりクールでミニマリストなスタイルへとシフトしているのです。

結局、コミュニケーションのツールやスタイルは、世代ごとに独自の変化を遂げていきます。これからも、世代を超えたコミュニケーションの変化は続いていくでしょう。

若者のことば遣いを上の世代が取り入れることで、新たなスタイルが生まれる一方、若者たちはさらに新しい表現を模索し続けるのです。それが、国境を問わず、そして、時代を問わず、世の中で起こり続けている言語の現象なのです。

■「!」は無言のプレッシャーを生み出す
最近のメッセージのやりとりでは、感嘆符(ビックリマーク)「!」の使い方が意外な悩みの種となっているようです。

絵文字を多用するとキラキラしすぎに感じる一方、何もつけないとメッセージがそっけなく見えてしまう。そんなときに便利なツールとして、ビックリマークを使う人も多いのではないでしょうか。

最近では、ビジネスメールでもビックリマークを見かけるようになりました。しかし、ビックリマークは、一部の人には「圧」を感じさせる要素になっているのです。

ビックリマークが「圧」を感じさせる理由は、メッセージを受け取った側が、そこから「過剰なアピール」や「元気すぎる」という無言のプレッシャーや暑苦しさなどを受け取るからのようです。

例えば、「ありがとう!」とビックリマークを添えたメッセージは、嬉しさや感謝の気持ちを伝えるために便利です。しかし、それが頻繁に使われると、相手にとっては妙な圧力を感じさせることがあるのです。

特に内向的な人や控えめな表現を好む人には、ビックリマークが過度な強調と感じられることもあるようです。

■「!」の多用を避けて、心の距離を調節する
改善策としては、まず、すべての人がビックリマークをポジティブに受け取るわけではなく、むしろ圧力と感じる場合があることを意識しておきましょう。

特に、相手があまりビックリマークを使わない人であれば、こちらもそれに合わせてメッセージのトーンを調整する必要があるでしょう。

また、ビックリマークを使う頻度や場面を見直すことも効果的です。すべてのメッセージにビックリマークをつけるのではなく、本当に強調したい場面に限定することで、その効果をより効果的に伝えることができます。

例えば、「ありがとう!」と特別な感謝を伝えたいときだけにビックリマークを使い、それ以外はシンプルな表現に留めることで、相手にとっても自然で心地よいコミュニケーションが生まれるでしょう。

メッセージのやりとりは、相手に合わせた柔軟な対応が求められるものです。心の距離を調節するためには、ビックリマークの多用はとりあえず避けておくことが無難なようです。

■句点をつけないメッセージが好まれる理由
最近、若者の間では、メッセージに句点の「。」を使わない傾向が広がっています。句点があると、圧を感じるという人までいます。どうして避けられるようになったのでしょうか?

まず、若者はメッセージを「会話の延長」として捉えており、口語的な表現を重視するため、あえて句点を省くことが多いのです。

対面の会話では、文を句点で区切ることはなく、自然な流れで話します。句点を入れると、どうしても文章感や正式感が出てしまいます。ですから、メッセージでも句点を入れない方が、会話がより普段通りでカジュアルに感じられ、相手との距離感を縮める効果が期待できるわけです。

また、メッセージは「文書」ではないので、句点はいらないと考えている人も多いようです。

これに加え、効率性も句点を使わない理由に関わっています。若者は、メッセージをできるだけ手軽に短時間で送信したいと考えており、句点を省くことで、ごくわずかですが、手早くやりとりが進められます。

さらに、情報過多の現代においては、簡潔で無駄のないメッセージが好まれるため、句点を省略することで、文章がよりコンパクトになり、視覚的にも読みやすくなります。

■句点は冷たい印象を与える
一方で、句点を使わないことには心理的な理由もあります。句点をつけることで、メッセージが文法的に「完結」してしまい、相手に冷たい印象を与えることがあるからです。

特に親しい友人同士では、句点が会話のリズムを断ち切るように感じられるため、あえて使わない方が、会話がスムーズに進むのです。句点のないメッセージは、より柔らかく、相手にフレンドリーな印象を与える手段として機能しています。

このように、若者がメッセージで句点を避けるのは、口語的な親しみやすさ、効率性、そして感情的なニュアンスを考慮した結果と言えるでしょう。

句点を省略するスタイルは、世代ごとに異なるコミュニケーションの価値観を反映しており、デジタル時代ならではの表現の進化を象徴しています。

とはいえ、フォーマルな場面では句点を使い分けるスキルも依然として重要です。このような、ことばの捉え方の変化を理解しつつ、相手に合わせたメッセージの書き方を意識することで、より良いコミュニケーションが築けるのではないでしょうか。

■年上が年下に「それな!」と送られても悪い気はしない?
年下からのカジュアルなメッセージに対して、年上の人がどのように感じるかが話題になることがあります。

「それな!」や「うええええ」といったメッセージが、若者の間では感情を手軽に伝える手段として使われています。

職場や日常のやりとりでも、こうしたカジュアルなことばが飛び交うようになってきましたが、これを年上の人がどう受け取るかは、意外と世代や状況によって違いがあります。

40代のある女性は、職場の年下の同僚から「それな!」といったカジュアルなメッセージが来ても、むしろ親しみを感じて嬉しいと思うことが多いと言います。

短いメッセージやスタンプに敬語とタメ口が混ざっている場合、年齢を感じさせないように、逆に気を使ってくれているのだなと好意的に受け取るそうです。

一方で、タメ口がトラブルの原因となるケースも存在します。例えば、東京の白金高輪駅で発生した事件では、被害者と加害者の間で「タメ口」がきっかけのひとつとして挙げられています。

被害者が大学時代にタメ口を使ったことで、年上であった加害者の怒りを買い、それがトラブルの引き金になったといわれています。

このケースでは、年次や立場の違いが絡み合い、「タメ口」が敬意の欠如と受け取られ、深刻な対立に発展した可能性が示唆されています。

こうした対照的な事例を見ると、年下から年上に対してタメ口を使うことの影響は、ポジティブにもネガティブにもなりうるということがわかります。

メッセージの文脈や相手の性格、関係性によって、同じ「それな!」ということばも、親しみを表現するものとして受け取られる場合もあれば、逆に不快感を与えてしまう場合もあるのです。

短文のメッセージやスタンプでのやりとりでは、相手がカジュアルなやりとりを歓迎するかどうかを見極めることが重要です。

現代のコミュニケーションは、テキストメッセージやSNSを通じたやりとりが主流になっており、ことばのニュアンスや敬意をどのように表現するかが難しくなっています。

特に短文メッセージでは、顔の表情や声のトーンといった非言語的な情報が欠けているため、受け取り方は相手次第です。若者にとってはカジュアルなタメ口が「親しみ」を意味していても、年上の相手がそれをどう感じるかは予測しにくいものです。

結局のところ、「それな!」のようなカジュアルな表現がうまく受け入れられるかどうかは、双方の信頼関係や相手への理解がどれだけあるかにかかっています。

年下が年上に対して親しみを込めてタメ口を使う場合でも、その意図がしっかり伝わるように、相手の反応を見極めながら柔軟に対応することが大切です。コミュニケーションの手段
が増える現代だからこそ、お互いの意図を理解し合う工夫が求められているのです。


堀田秀吾 明治大学法学部教授・言語学博士


【関連記事】
■年下上司から年上部下にタメ口はどこまでOKか?信頼関係を築く会話術 (堀田秀吾 明治大学法学部教授)
https://sharescafe.net/62891626-20251228.html
■自然とタメ口がこぼれるフラットな職場の雰囲気は物理環境で作れる (堀田秀吾 明治大学法学部教授)
https://sharescafe.net/62889752-20251227.html
■【年明け内定辞退の衝撃】新卒就活の現場を揺るがす「オヤカク」への向き合い方(河本英之 人材コンサルタント)
https://sharescafe.net/62869078-20251219.html
■110万円の家賃を払う板野友美さんとヤクルト高橋奎二さんの判断が正しい理由。(中嶋よしふみ ファイナンシャルプランナー)
https://sharescafe.net/62674731-20250930.html
■世帯年収1560万円の共働き夫婦は、9540万円の湾岸タワーマンションを買えるのか? その1・生活費は年間800万? (中嶋よしふみ ファイナンシャルプランナー)
https://sharescafe.net/61186482-20240125.html


■プロフィール 堀田秀吾 明治大学法学部教授・言語学博士
熊本県生まれ。シカゴ大学言語学部博士課程修了。ヨーク大学ロースクール修士課程修了・博士課程単位取得退学。
専門は、司法におけるコミュニケーションの科学的分析。言語学、法学、社会心理学、脳科学などのさまざまな分野を横断した研究を展開している。
テレビ番組のコメンテーターのほか、雑誌、WEBなどでも連載を持つ。
著書に『ハーバード、スタンフォード、オックスフォード… 科学的に証明された すごい習慣大百科 人生が変わるテクニック112個集めました』(SBクリエイティブ)『ハーバード、スタンフォード、科学的に証明された時間をムダにしない人の習慣』(アスコム)、『考えてはいけないことリスト』(フォレスト出版)などがある。




この執筆者の記事一覧

このエントリーをはてなブックマークに追加
シェアーズカフェ・オンラインからのお知らせ
シェアーズカフェ・オンラインは2014年から国内最大のポータルサイト・Yahoo!ニュースに掲載記事を配信しています
シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家の書き手を募集しています。
シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家向けに執筆指導を行っています。
シェアーズカフェ・オンラインを運営するシェアーズカフェは住宅・保険・投資・家計管理・年金など、個人向けの相談・レッスンを提供しています。編集長で「保険を売らないFP」の中嶋が対応します。