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「英語を覚えたいけど、楽にペラペラになれる方法はないのかな…?」

そんなことを夢見たことのある人に朗報があります。「とある飲み物」を飲むだけで、まるでドラえもんに出てくるひみつ道具、暗記パンのように外国語が上手になる――という研究結果が、昨年(2025年)のイグノーベル平和賞を受賞したのです。

イグノーベル賞とは、人々を笑わせて考えさせた研究に対して与えられる賞であり、ノーベル賞のパロディ的な位置づけにあります。

飲むだけで外国語が上手になる、その飲み物とは……「お酒」です。

確かにお酒を飲むことで、人は饒舌になりますが、同時に忘れっぽくもなりますし、同じ話を繰り返してしまうことさえあります。

本当に、お酒を飲むことで英語がうまくなるのでしょうか。そして、一体お酒がどのような影響を与えるのか。今年こそは英語をもっと上達させたい…という方のために、この研究結果について、英語の苦手を解消する専門家として解説します。

※この記事は飲酒を推奨するものではありません。試す場合は節度を持って自己責任で行ってください。

■イグノーベル平和賞を受賞した、お酒で外国語が上達する驚きの研究
この実験は、オランダ語を外国語として学んでいる、ドイツ語がネイティブである学生50人を対象に行なわれました(2017年に書かれた論文です)。

50人の学生たちは2つのグループに分けられ、片方には1杯のウォッカベースのお酒、もう片方には水が与えられました。それを飲んだ上で、オランダ語で2分間「動物実験」をテーマにして、賛成なのか反対なのか話をするように指示が出されたのです。

その音声を、オランダ語のネイティブスピーカー2名が評価しました。その結果として、発音・ボキャブラリー・文法・理解しやすさなどの9項目でチェックされた総合評価の点数が、しらふの人たちは56.65点だったのに対し、お酒を飲んだグループは61.53点であり、高い評価を得たのです。

そして、具体的にどの側面でポイントが高かったのか、「発音」「文法」「ボキャブラリー」「議論の質」という4項目に関して評価が行なわれましたが、実は全ての項目でお酒グループの方が点が高かったのです(ただし、統計的に有意差が認められたのは「発音」だけであり、他の3項目に関しては誤差の可能性を否定できません)。

また、同時に算数の問題を解くという課題もありました。全13問のうちの正解数は、水を飲んだグループは平均10.80問なのに対して、ウォッカのグループは平均9.84問であり、成績がやや低くなる傾向もありました。

■アルコールが外国語を上手にさせるメカニズムとは?
一体なぜ、アルコールを飲むことで外国語が上手に聞こえたのでしょうか?

この研究で興味深い点は、自身のスピーチに対する自己評価は特に変わっていなかったことです。また、自尊感情や自信といったメンタル面についても特に変化は見られませんでした。つまり、アルコールを飲むことで気が大きくなったり、根拠のない自信が強まったりしたわけではありませんでした。

本人が「うまく話せた気がする」などと特に感じることなく、でも実際に外国語が上手になっていた(ネイティブスピーカーにそう判定された)のです。

このような現象を引き起こした原因として考えられるのは、アルコールが持つ「緩める」作用です。お酒は心理的な緊張も、身体的な緊張も低下させるわけですが、そこから2つのポイントが今回の研究から導き出せます。

1つは「筋肉の力み」が減ることにより、発音が上手に聞こえるようになったこと。実際に、アルコールが特に緩める筋肉として、顔や口の周りに影響が出やすいことが知られています。ですから、外国語の発音がしやすくなったと考えられます。昔行なわれた別の研究においても、英語のネイティブスピーカーに少量のお酒を飲ませて未知のタイ語を発音させたら、より良く聞こえたという結果が出ています。

■お酒が外国語を話す上でのブレーキを外してくれる
そしてもう1つのポイントは「自己監視」の低下です。

人は通常、自分自身をモニタリングしています。例えば、日本語で普段話をする時にも「この言い方でうまく伝わるかな?」とか「失礼にならない言い方をしよう」などと言葉を選びますよね。そのような自己監視が、アルコールによって低下します。それが外国語を話す上でプラスに働いたと考えられるのです。

特に外国語を話す際には、もっと基本的なところで、文法や発音などを意識しながら話そうとしがちです。

「うまくやろう」とか「間違えないようにしよう」などとつい考える人が多いのですが、そのような意識はスムーズな発言を邪魔してしまいます。ですから、アルコールの影響でそういう細かいことを気にしなくなることによって、算数の成績を引き下げてしまうことにもなりますが、外国語に関してはより上手に聞こえたわけです。

なお、今回の論文では検証されていませんが、もう1つ可能性として考えられるのが「言語不安」の低下です。先ほど自己監視の例として「間違えないようにしよう」という意識が働くと言いましたが、そこで「間違えたらどうしよう…?」などと不安や恐怖を感じてしまうのが言語不安というものです。

そのような心配は、外国語を話す上で大きなブレーキになります。私はこれを「英語コミュ障」と呼んでいますが、英語になった途端に自然体で話すことができなくなってしまうのです。しかしアルコールによって不安が一時的に軽減されることで、より自然に外国語が使えるようになることは十分に考えられるのです。

■お酒を飲まなくても一瞬で英語が上手になる方法とは?
しかし、お酒には当然デメリットもあります。飲みすぎると注意力や集中力が低下してしまいますから、外国語どころか母語でもきちんとした会話ができなくなってしまうかもしれません。また、緩みすぎてしまうことになりますので、ろれつが回らなくなってしまい、きちんとした発音もできなくなります。

ですからアルコールには、飲みすぎなければ外国語がうまくなるというメリットはあるものの、それも一時的な効果に過ぎません。また、アルコールが体質的、年齢的に飲めない人もたくさんいるわけです。つまり大切なのは、こういった研究の知見を活かすことによって、お酒の力を借りなくても同様の効果を生むようなノウハウを手に入れることではないでしょうか。

私が30年間やってきた英語上達法の独自研究の成果と、1万人以上の学習者の方を指導してきた経験を組み合わせることで、今回ご紹介した論文から導き出せるノウハウをこれから詳しく解説します。

まずは準備体操として、筋肉の緊張をほぐすと良いでしょう。例えば、深呼吸をするだけでも効果があります。簡単にできる方法は、吸うのに4秒、吐くのに6秒かけて行なう「10秒深呼吸」です。

頭の中でゆっくりと「1、2、3、4」と数えながら息を吸い、「5、6、7、8、9、10」でゆっくりと吐きます。これを3セット行なえば、わずか30秒間で緊張を緩め、心も落ち着かせることができます。これをするだけでも、英語を話す時により良いパフォーマンスが出やすくなります。

そして、一番重要なのはメンタルです。「英語コミュ障」になってしまわないためには、一体どんな心構えで話そうとするのが良いのでしょうか。

まず母語である日本語で話す時には、文法や発音などについていちいち考えませんよね。それは、スキルとして既にきちんと身についているからですが、日本語というスキルのことは考えずに、伝える内容にフォーカスして話をするはずです。

しかし英語になると、単語の意味や使い方、文法、発音などのスキルが不足していることが多いため、そこをつい気にしてしまいがちです。つまり自分が使おうとしている英語に対して「自己監視」をしてしまうのです。

そして、それが行き過ぎてしまうと「間違ったらどうしよう…?」といった「言語不安」につながってしまいます。ですからここで大事なのは、考えすぎないことであり、「うまくやろう」とはしないことだと言えます。

■英会話では諦めも肝心?
英語学習はスポーツによく似たところがありますが、スポーツでは素振りや走り込み、筋トレのような「基礎練習」と、実際に「試合」に出てプレーするという2つの側面があります。そうやって捉えると「実際に英語で話す」という英会話は、試合に出ることに相当します。

試合というのは、普段やってきた基礎練習の成果を出す場です。練習したことが本番の試合でも実際にできることもあれば、できないこともあるでしょう。でもそこで、考えすぎたり、不安や緊張を感じたりしてしまうと、うまくできなくなってしまう可能性が高いでしょう。つまり、本番の試合になったら「どうせできることしかできない」と開き直ることが大切なのです。

確かにもし文法をきちんと考えながらしゃべったら、考えない時よりは正確に使えるかもしれません。しかし、会話の目的は、文法を正しく使うことではありません。言いたいことが相手にきちんと伝わることの方がずっと大切なはずです。ですから、文法の正しさや間違い、発音などをもう気にせずに、どんどんしゃべりましょう。そして、母語である日本語を話す時と同じように、伝えたい内容だけにフォーカスするのです。

これはつまり、間違いに気づいたからといって、そこで恥ずかしがったり、訂正したりする必要もない――ということです。例えば「どこかに行った」と言いたいのに「I go to...」と口から出てきてしまった時に、「Oh, I mean, I went to...」などと過去形にわざわざ言い直していたら、スムーズな会話の流れが邪魔されてしまいますよね。それは端的に言うと「時間のムダ」なんです。

また、反省会を行なうのは試合が終わった後にしてください。少しくらい文法が間違っていても、発音が怪しくても、ジェスチャーを駆使した体当たり英語だったとしても、どうせ伝わりますから大丈夫です。「伝わらなかったらどうしよう…」と心配になる方が時々いますが、もし伝わらなかったら別の言い方を探して、改めて表現すればいいだけですからね。

■一瞬で英語が上手になる方法は地味だった
つまり結論としては、「間違いを気にせずにどんどんしゃべる」べきだということです。このような心構えで英会話に臨むことができれば、それだけであなたは今まで以上にずっとうまく外国語でコミュニケーションが取れるようになります。

ここまでお伝えした心構え/結論に対して「なんだ、大したことを言っていないな」などと、内容が地味に思えたかもしれません。しかし、どんな物事においても大切なのは、必要なことをきちんとやり、不要なことをやらない――という基本を徹底することなのです。

ただし、「不要なことをやらない」というのは実は一番難しい。ついクセで「自己監視」してしまうからこそ、それをやらないようにすることをきちんと意識すべきなのです。ほとんどの日本人英語学習者は、英会話中に自分の足を引っ張るようなことをしてしまうから、スムーズなコミュニケーションができなくなってしまうのです。

ですから、「自己監視」や「言語不安」を緩めるための英会話中の心構えとして「文法などの正しさを考えずに、伝えることだけにフォーカスする」「間違っても気にせずにどんどんしゃべる」「伝わらなかったら、別の言い方をする」ことをぜひ意識してやってみてくださいね。

(なお、本記事でお伝えしたのは、あくまでも英会話という本番の試合中にパフォーマンスを発揮するための心構えです。文法力やボキャブラリー、発音などのスキルを高めたければ、基礎練習をしっかりとやるべきなのは当たり前のことです)


出典 "Dutch courage? Effects of acute alcohol consumption on self-ratings and observer ratings of foreign language skills" Renner et al. (2017/2018)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29043911/


西澤ロイ イングリッシュ・ドクター(英語学習のやさしい“お医者さん”)


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【プロフィール 西澤ロイ イングリッシュ・ドクター(英語学習のやさしい“お医者さん”)】
nishizawa
英語ニガテ病を解消する専門家。獨協大学英語学科卒業。TOEIC満点(990点)。
大学で専攻した言語学に、脳科学や心理学なども取り入れ、英語上達法を30年間独自に研究している。
「英語病」を解消することによって誰でも英語が上達できる独自のメソッドを確立。
著書に「頑張らない英語」シリーズ(あさ出版)、『英語学習のつまずき50の処方箋』(ディスカヴァー21)の他、著書累計18万部を突破。メディア出演多数。
YouTubeチャンネル「イングリッシュ・ドクターの非常識な英語学」が登録者数5万人を突破し、好評を博している。

YouTube https://www.youtube.com/@englishdoctor_roy
公式サイト https://english-doctor.co.jp/

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『頑張らない英文法』(あさ出版) https://www.amazon.co.jp/dp/4860636635/

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