![]() ■「経営のルール」を知らなければ何もはじまらない 起業当初の私を振り返ると、知識も経験もなく、いいところはほとんど見当たらないのですが、ひとつだけ自分を褒めてやりたい行動がありました。それは、法律の本ではなく経営の本を先に手に取ったことです。「経営」というものを起業の時点で学ぶことができたのです。 「生活費に余裕がない。すぐにでも稼がなければいけない。行政書士の先輩は実務の勉強が大事だと言っていたが、起業するわけだから、会社をつくることと同じ意味なのでは?」 そう考えた私は、実務の勉強は後回しにして、経営を学ぶことを優先させたのです。実務は後で調べればなんとかなる、でもビジネスのやり方は先に覚えなければならない。そう考えて経営とマーケティングの基本について、最初の段階から学んでいったのです。 ■経営を知らないままで起業する危うさ 資格業で稼げない一因は、経営を学んでいないためです。経営といっても、MBAのような難しい知識を学べというわけではありません。経営がどう成り立っているかを知らないと、どんなに効果的な営業を行っても成果が出ないのです。 たとえば、ある行政書士が「インターネットを使って集客しよう」と考えて、ウェブサイトを立ち上げたとします。ここでは、相続の仕事を獲るためのサイトをつくったとしましょう。 相続の手続きは、戸籍謄本の取得や書類の作成、それから相続人に押印をもらうなどの作業が発生します。普通、サイトを立ち上げただけではアクセスを集めることは難しいのですが、仮にアクセス数が1日50件程度あったとします。 しかし、問い合わせはありません。「50人も見ているのに、どうして問い合わせがないのだろう」と思って、行政書士は私に次のような相談をします。 「アクセスはあるのに、どうして問い合わせがないのでしょうか」 その行政書士の事務所は埼玉県にあるとします。私はこう答えます。 「そのアクセスのうち、何名が埼玉県に住んでいると思いますか? 行政書士に仕事を頼む場合は、近い人に頼むのがほとんどです。50アクセスのうち、1日1名埼玉県在住の人がいればいいほうでしょう。このような地域のことを考えてみましたか?」 つまり、インターネットという「営業」方法と、「地域」がミスマッチしている可能性が非常に高いわけです。もちろん、インターネットで集客するためのノウハウも重要ですが、地域という経営の要素を知っていないとすれば、問い合わせがないのも納得できます。 経営がどういうものかを知らないと、このようなミスマッチが生じます。ですから、経営がどんな要素で構成されているか、最低限学ばなければなりません。 経営を知らないままで起業するのは、はっきり言って無謀です。サッカーの試合で勝つためにはどうすればよいか? いろいろな意見があるとは思いますが、最低限サッカーというスポーツがどういう要素で成り立っているかを知らなければ、勝つことはできません。つまり、シュート、パス、オフェンス、ディフェンスなどの要素があり、それらを学び、鍛錬しなければならないのです。 素人が試合に出て「ルールもわからないし、パスやシュートのやり方もよくわからない」では、絶対に試合に勝てません。 ■経営の「8要素」を理解しないと戦略は立てられない それでは、経営の「要素」には何があるのでしょうか。私は、経営の要素を大きく3つ、さらに細く8つに分類しています。大分類としては、 (1)売る(営業方法・商品やサービス・地域・客層) (2)管理する(顧客化・財務) (3)育てる(時間・組織) となります。まず、(1)の売ることをさらに分類すると、どうやって売るかという「営業方法」、何を売るかという「商品やサービス」、どこで売るかという「地域」、誰に売るかという「客層」になります。 次の(2)の管理することは、お客さまを管理していかにリピートを増やすかという「顧客化」、お金を管理する「財務」に分けられます。 そして最後、(3)の育てることは、自分を成長させるという意味での「時間」、経営においてその母体となる「組織」に分けられます。 つまり、経営を構成する要素は「商品」「営業」「地域」「客層」「顧客化」「財務」「時間」「組織」となり、これらのすべてを合わせたものが「経営」となるのです。 よい商品があっても、営業方法が悪ければ売れません。お客さまのことを知らなければ商品は売れないのです。 こうした経営のすべての要素を知ってこそ、資格起業家としての戦略が完成するのです。 経営の要素を知り、戦略を構築し、そして集客・販売することが、資格起業家の目指す流れです。 ■「売る」ことの重要性 ただし、「売る」ことを覚えてしまえば、ある程度戦略が欠けていてもうまくいく可能性があります。そのくらい「売る」ことは重要なのです。 特に資格業の場合、扱う商品が法律やその手続きなので、勉強することが強調されがちです。しかしビジネスとして考えれば、それは間違いです。 大胆な言い方をすれば、「仕事ができること」より「仕事が獲れること」のほうが圧倒的に重要なのです。 私自身も失敗した経験があります。私が23歳で行政書士の資格で起業した当時は、仕事もロクに獲れずに、時間とお金を食いつぶしてしまいました。そのとき、先輩の行政書士事務所のお手伝いをする機会がありました。 それまで、行政書士という資格を持っていたものの、実際に本物の行政書士を見たことがなかった私には、願ってもないチャンスでした。ごく一部でも、行政書士の仕事を実地で覚えることができるからです。 行政書士がつくる書類を間近に見た率直な感想としては、「意外と簡単そう」でした。「許認可申請書」といえば、厚さが数センチ以上もある書類を想像していましたが、実際のそれは意外と薄く、調べる方法さえわかれば自分でも作成できそうだということがわかりました。 私はこの経験を通して、仕事を依頼されてもこなせる自信を持ちました。以前は、自分自身が扱える業務すらよくわかっていなかったのですから、その不安を払拭することができたのです。 ところが、これは大きな勘違いだったことに気がつきます。そしてこの勘違いが、私の歩みを遅くしてしまったのです。 「仕事ができる」ことと、「仕事の獲り方がわかる」ことは、天と地ほどの違いがありました。「仕事ができる」ことを、「仕事の獲り方がわかる」ことと勘違いした私は、意気揚々として開業したわけですが、散々たる結果でした。開業初月の売上は2万5,000円。これならアルバイトのほうが稼げます。 こうした私の経験からも、商品よりもまず「売る」ことを覚えていくことが重要であると言えるでしょう。 横須賀輝尚 パワーコンテンツジャパン株式会社 代表取締役 特定行政書士 【関連記事】 ■カネが無いなら「客」を与えよう――資格業駆け出し時に本物の人脈を作る方法(横須賀輝尚 経営コンサルタント) https://sharescafe.net/62895387-20251230.html ■競合との比較に悩みやすい士業は「自分を棚に上げる」のが大事、という話 (横須賀輝尚 経営コンサルタント) https://sharescafe.net/62878838-20251224.html ■資格業で成功したいなら最初の目標は「年収1000万円以上」に設定すべき深い理由 (横須賀輝尚 経営コンサルタント) https://sharescafe.net/62863029-20251217.html ■110万円の家賃を払う板野友美さんとヤクルト高橋奎二さんの判断が正しい理由。(中嶋よしふみ ファイナンシャルプランナー) https://sharescafe.net/62674731-20250930.html ■世帯年収1560万円の共働き夫婦は、9540万円の湾岸タワーマンションを買えるのか? その1・生活費は800万?(中嶋よしふみ ファイナンシャルプランナー) https://sharescafe.net/61186482-20240125.html ■プロフィール 横須賀輝尚 パワーコンテンツジャパン株式会社 代表取締役 特定行政書士 ![]() 2007年に日本では初めてとなる士業向けに経営スクール「経営天才塾(現LEGALBACKS)」を創設し、2023年現在、全国3000名以上の士業から相談を受け、その相談数は優に2万件以上を超える。 主な著作に「会社を救うプロ士業 会社を潰すダメ士業」(さくら舎)、「資格起業BIBLE」(技術評論社)などがあり、25冊20万部超の著者。2023年から士業のための生成AI・ChatGPT活用研究を開始。 最新刊「『ムダ仕事』も『悩む時間』もゼロにする GPTsライフハック」を2024年11月に技術評論社より刊行。週刊ダイヤモンド、毎日新聞などメディア掲載も多数。 公式サイト:https://yokosukateruhisa.com/ X:https://twitter.com/yokosuka_ai @yokosuka_ai YouTube:https://www.youtube.com/@40lawyers50/ シェアーズカフェ・オンラインからのお知らせ ■シェアーズカフェ・オンラインは2014年から国内最大のポータルサイト・Yahoo!ニュースに掲載記事を配信しています ■シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家の書き手を募集しています。 ■シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家向けに執筆指導を行っています。 ■シェアーズカフェ・オンラインを運営するシェアーズカフェは住宅・保険・投資・家計管理・年金など、個人向けの相談・レッスンを提供しています。編集長で「保険を売らないFP」の中嶋が対応します。 |



