![]() 著書『チームワークの大原則「あなたが主役」で組織が変わる』(辻秀一・WAVE出版)から、再編集してお届けします。 ■「指示」と「支援」の黄金比を見つける あなたは、近しい人やチームメイトの行動に「やめよう!」と言えますか? 逆に、ご自身のお子さんや部下の行動に、ダメだとばかり言っていませんか? 一旦振り返って、ご自身が近しい人たちやチームメイトの心を本当の意味で配慮しているのか、普段から部下やお子さんの心を配慮していると自信を持って言えるのか、彼ら彼女らを少しでも機嫌のよいフローな状態に導き、Do It(行動)できるように接しているのか、と自問自答してみましょう。 あなたの声かけに「指示」しかなく、「支援」がなければ、それはハラスメント傾向にあるということになります。ただし、ハラスメントになることを恐れて部下などに指示すらしていないのであれば、指示も支援もない無関心な野放し状態です。なお、そもそも指示がなく、支援しかしていなければ、カウンセラーのようになります。 つまり、「指示」と「支援」の二軸を意識できていなければ、機嫌がいい状態で行動する「Flow Do It」は実現できておらず、周りのパフォーマンスもよくならないので、結果、チームは機能せず、エクセレントチーム(素晴らしいチーム)をつくることはできないでしょう。 団体のように周りとのパフォーマンスへの相互責任がなく、一人一人がただ作業のように周りに無関心のまま仕事やプレイを続けるようになってしまうのです。これは人が集まっただけの団体的な「残念なチーム」と言えます。 あなたの人生において、「指示」と「支援」のバランスはどのような割合になっていますか? また、周囲の人に対してはどのようなバランスで「指示」と「支援」を行っていますか? もちろん、相手や状況によってバランスは変わるでしょうし、同じ相手でも時期やタイミングによって変動するものだと思います。ここで、総じてどのくらいの割合で他者との関係を築いているでしょうか? 自分自身を振り返って考えてみてください。 ビジネスとプライベートで大きく異なる場合は、それぞれを分けて見つめてみましょう。 例えば、ビジネスでは「指示:支援=4:6」、プライベートでは「指示:支援=7:3」といった具合です。あるいは、ビジネスでは指示が9割で圧倒的に多く、プライベートでは支援が8割で優勢といった感じかもしれません。数字で「10対0」から「0対10」の範囲で具体的に表現してみると、より明確にイメージしやすくなります。 これには正解はありません。大切なのは、この視点で自分自身を見つめることです。 さらに、ご自身の理想のバランスについても考えてみてください。例えば、「指示3割、支援7割」や、「指示5割、支援5割」のように、どのような割合が自分にとって理想的かを明らかにしてみましょう。 そして、なぜあなたはそう思うのでしょうか? 理想にも正解はありませんが、それを考えることは、周囲との接し方や自分の生き方についてのビジョンを描く手助けとなります。ぜひ、この機会に深く見つめ直してみてください。 ■チームをフロー状態に導く3つの要件 さて、ここでわたしの専門である「非認知脳」による、周りの心をフローに導く支援力についてお話ししましょう。 支援力のある人にはどのような特徴があるのでしょうか? 支援力があれば、指示とのバランスを適材適所でマネジメントできるはずです。 なぜなら支援力がなければ、心に配慮し、相手に適したサポートの強弱を適切に調整することが難しくなるからです。ここでは、支援力のある人、つまり相手を機嫌よくフロー状態に導ける人の要件を3つにまとめてお伝えします。 (1)自分自身がご機嫌でフロー状態であること 支援力の基本は、まず自分自身がご機嫌でいることです。 機嫌よくいるだけで、周りにとって支援になります。そのためには、いつでもどこでも自分で自分の機嫌を取る「非認知思考」のライフスキルが重要です。このスキルこそが、チームワークや周りへの責任の原点となります。 (2)ご機嫌に導く声かけを行い、それが上手であること 相手を機嫌よく導く声かけができること、そしてその声かけが上手であることも支援力の重要な要素です。 やるべきことややり方についてなど、通常の「認知的な指示」の声かけは、職場や社会でよく飛び交っていることでしょう。しかし、ここで求められるのは「心に配慮した声かけ」です。 そのためには、まず自分自身の非認知的な心がけである「ライフスキル」が土台になります。「心がけなくして声かけなし」という大きな鉄則があるのです。自分自身が機嫌よくなるために非認知スキルを意識していれば、自分の感情に気づいたり、ご機嫌の価値を考えたり、自分の目的や好きなことを振り返ったり、自分のあり方を見つめる習慣が身についているはずです。 そうすれば、それが自然と他者の心に配慮した声かけとして現れるのです。 例えば、隣に目標に囚われて進捗状況に苦しんでいる仲間がいれば、「一度、目標だけに囚われず、目的を考えてみたら?」と助言したり、得意だと思っていても人と比べられて苦しんでいる人がいたら、「得意の代わりに自分の好きなことを思い出して、心を一旦リセットしよう」と声をかけたりできるでしょう。 また、タスクに追われて四苦八苦している同僚がいれば、「対応や対策の前に、今の感情を俯瞰してみよう」と伝えるなど、ライフスキルの心がけが浸透している人ほど、こうした言葉が自然と出てくるのです。 (3)自分のフロー体験をもとに、他者を支援する姿勢を持つこと 最後に、自分が「〇〇してもらうと心がフローに傾く」という体験をもとにそれを他者の心のために実践、かつ応用する姿勢が大切です。 この姿勢をわたしは「コーチ力」と呼んでいます。この姿勢は、自分の損得ではなく相手の心を配慮し、フローに導く支援のためのものです。それにより、周りの「生きる」というパフォーマンスの質がよくなれば、結果的に一緒にいる自分もハッピーとなるでしょう。 一見すると遠回りのようですが、これこそがチームが機能している証拠でもあります。それは、自身にフローの価値が育まれていなければ生まれない姿勢でもあります。人間の仕組みであるヒューマンリテラシーをもとに、周りと接していくことが重要なのです。 自分自身の行動と心に責任を持ち、「Flow Do It」の精神で周囲の行動と心にも責任を持って接していく人が増えれば、組織は確実にエクセレントな方向へ変化していくでしょう。 それは、自己を犠牲にした人々の集まりではなく、自分自身を大切にし、ヒューマンリテラシーに従って生きようとする、あなたのような個人から始まった集まり、すなわちチームです。最初はこうした生き方をしたいと思う人々が少数派であっても、まずはあなた自身がBX(脳の変革)を行い、成熟していくことで何かが起こるはずです。 やがて、そのような生き方をしたいという人が集まり、チームの変革が生まれます。どんなチームも最初から完璧だったわけではありません。すべては、自分自身のために始めた一人の「BX」からスタートしたのです。それこそが、チームワークの大原則と言えるでしょう。 辻秀一 スポーツドクター 産業医 株式会社エミネクロス代表 【関連記事】 ■【3年冬で5割内定】就活の早期化が生んだ「内定者の長期フォロー」という新たな課題 (河本英之 人材コンサルタント) https://sharescafe.net/62936434-20260116.html ■【年明け内定辞退の衝撃】新卒就活の現場を揺るがす「オヤカク」への向き合い方(河本英之 人材コンサルタント) https://sharescafe.net/62869078-20251219.html ■展示会をノルマ地獄から熱狂ゲームへ変えるゲーミフィケーション戦略とは (清永健一 中小企業診断士) https://sharescafe.net/62936415-20260116.html ■110万円の家賃を払う板野友美さんとヤクルト高橋奎二さんの判断が正しい理由。(中嶋よしふみ ファイナンシャルプランナー) https://sharescafe.net/62674731-20250930.html ■世帯年収1560万円の共働き夫婦は、9540万円の湾岸タワーマンションを買えるのか? その1・生活費は年間800万? (中嶋よしふみ ファイナンシャルプランナー) https://sharescafe.net/61186482-20240125.html ■プロフィール 辻秀一 スポーツドクター 産業医 株式会社エミネクロス代表 北海道大学医学部卒業。慶應義塾大学病院にて内科研修。慶應義塾大学スポーツ医学研究センター勤務後、人と社会のQOL 向上を目指し株式会社エミネクロスを設立。 応用スポーツ心理学をベースに個人や組織のパフォーマンスを最適・最大化する、自然体な心の状態「Flow」すなわち「ご機嫌」を生み出す非認知スキルのメンタルトレーニングを展開。 オリンピアンやプロアスリート、音楽家や企業の健康経営のサポートやフローカンパニー創りにも取り組む。 著書に『スラムダンク勝利学』(集英社インターナショナル)、『「機嫌がいい」というのは最強のビジネススキル』(日本実業出版社)、『いつもごきげんでいられる人、いつも不機嫌なままの人』(サンマーク出版)他多数。 公式サイト https://doctor-tsuji.com/ シェアーズカフェ・オンラインからのお知らせ ■シェアーズカフェ・オンラインは2014年から国内最大のポータルサイト・Yahoo!ニュースに掲載記事を配信しています ■シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家の書き手を募集しています。 ■シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家向けに執筆指導を行っています。 ■シェアーズカフェ・オンラインを運営するシェアーズカフェは住宅・保険・投資・家計管理・年金など、個人向けの相談・レッスンを提供しています。編集長で「保険を売らないFP」の中嶋が対応します。 |


