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素晴らしいチームとは、どのように作られるのか? オリンピアンやプロアスリートの支援も行うスポーツドクターの辻秀一氏によれば、メンバーの一人ひとりが「Flow Do It(ご機嫌な状態で行動すること)」が重要だと言います。そして、そのような心の状態を作るためには、フローを生み出す言葉を慎重に選ぶ必要があります。チームの最高のパフォーマンスを引き出す言葉選びとは?

著書『チームワークの大原則「あなたが主役」で組織が変わる』(辻秀一・WAVE出版)から、再編集してお届けします。



■フローを生み出す言葉を慎重に選ぶ
どのような声かけがチームを機能させていくのでしょう?

声かけには認知的な行動への「指示」の声かけと、非認知的な心への「支援」の声かけが存在します。あなたの組織には支援の声かけが飛び交っていますか? 支援の声かけは、フローやご機嫌など、心の状態に価値を重んじる人たちから生まれてきます。

さて、わたしたちには、心の状態に大きく影響する「自己ツール」というものが存在します。それを使えば、自分自身の表情や態度、言葉を大切にし、選択することで、心の状態に変化をもたらすことができます。

しかし、日常的に認知脳だけを働かせていると、外界の状況や情報に反応するばかりで、それらの自己ツールは選ばれることなく、表情や態度、言葉は出来事に対するリアクションをするだけになってしまいます。

例えば、嫌なことがあれば態度に出す、嫌いな人がいれば表情に出す、思った通りにいかなければ「最悪……」などとつぶやくことがそれにあたります。

人間には認知脳があり、外界に支配されていて、表現という仕組みがある以上、それは仕方がないことです。わたしたちはその外界での出来事を表情や声に反映させ、わざわざ周りに自分の機嫌の悪さを伝えるという悪循環の中で生きています。これが人間の認知的な働きでもあります。

基本的には外界での現象は変えられませんが、自分自身の表情、態度、言葉によって、自分の心にフローな影響を与え、外界に関係なく、自身のみで変化をもたらすことは可能です。これは、うまくいかない状況を嘲笑したり、笑顔でごまかしたりするわけではなく、次の瞬間の心の状態をご機嫌な方向に傾かせるための習慣です。

わたしたちには自分の心の状態を機嫌よく保つ責任があります。決して、嫌いな人の機嫌を取るために笑顔を向けるのではなく、自分の機嫌をよくするために口角を上げるのです。

そして自分をご機嫌にするために表情や態度を自らの意志で選択するのです。その結果、周りにも好影響を与えることになります。

言葉も同じです。相手のために言葉を選ぶ前に、まず自分自身の心を整えるため、自分の耳の一番近くにある、自分の口から出る言葉を選択しなければなりません。

どんなに「最悪」とつぶやいてもご機嫌にはなれませんし、外界で起こったことを変えられるわけでもありません。

イチローさんや大谷翔平さんがインタビューでゆっくり答えているのは、周りにどう思われるかではなく、自分の心の状態が揺らがず、囚われず、フローに保たれるように、自分自身の耳に入れる言葉を慎重に選択する習慣を持っているからだと思います。

彼らに限らずアスリートたちにとって、マスコミのインタビューは時に非常にノンフローで不機嫌を誘発することがあります。そこで自分を保たないと自分の機嫌を持っていかれてしまいます。

もう何年もアメリカに住んでいて十分に英語で受け答えできるはずなのに、インタビューでは通訳を介して日本語で答えるのは、彼らにとって情報交換のためではなく、自身の心の状態を保ち、自分の耳に入れる言葉としては日本語の方が力を持っているからだと推察されます。

彼らのように、それくらい言葉を大切にし、自分自身の心のために言葉を選択する習慣を持っていることは、非認知脳がしっかり役割を果たしているとも言えます。そんな、自分の心がフロー状態になるような言葉を、「My Flow Words(自分のご機嫌言葉)」といいます。この「My Flow Words」を書き出し、身につけて、意識し、口に出してセルフマネジメントするのです。

わたしがサポートしているオリンピアンやプロアスリートたちももちろん、これらを習慣化しています。

認知脳は、自分以外の人のために、外界の状況に理由をつけて言葉を選びます。目上の人だから敬語を使う、初対面の人だから慎重に話す、家族だからラフに話すなど、認知脳が選択し実行しています。一方、自分自身の心の状態に責任を持つために自身の言葉を選択するのは、非認知脳によるものです。

このように認知脳と非認知脳を分類し、区別しています。

これをリーダーシップの視点から考えると、自身と周りのパフォーマンスに責任を持つ生き方には、自分だけでなく、仲間のためにも言葉を選び、声をかけることも含まれます。それがチームへの視野を広げ、視座を高めることにつながっているのです。まずは自分自身の心がけとして、非認知思考を言葉にしてみましょう。

例えば、

「周りの出来事に囚われているようだから、自分の感情に気づいてみよう!」
「不機嫌の理由が課題解決で一杯一杯だから、ちょっとご機嫌の価値を考えてみない?」
「人と比べて苦しんでいるなら、自分の好きな食べ物を思い出して、気分をよくしてみて!」
「やり方ばかりに振り回されているようだから、どうありたいかを見つめてみよう」
「目標と進捗に追われているから、そもそもの目的を振り返ってみましょう」

など、自分で意識するだけでなく、この思考を言葉として仲間の誰か一人でも、チーム全体にでもいいので、声をかけてみるのです。

恥ずかしいでしょうか? 難しいですか? 自分が非認知思考を意識していれば、自然と声かけはできるようになるはずです。


辻秀一 スポーツドクター 産業医 株式会社エミネクロス代表


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■プロフィール 辻秀一 スポーツドクター 産業医 株式会社エミネクロス代表
北海道大学医学部卒業。慶應義塾大学病院にて内科研修。慶應義塾大学スポーツ医学研究センター勤務後、人と社会のQOL 向上を目指し株式会社エミネクロスを設立。
応用スポーツ心理学をベースに個人や組織のパフォーマンスを最適・最大化する、自然体な心の状態「Flow」すなわち「ご機嫌」を生み出す非認知スキルのメンタルトレーニングを展開。
オリンピアンやプロアスリート、音楽家や企業の健康経営のサポートやフローカンパニー創りにも取り組む。
著書に『スラムダンク勝利学』(集英社インターナショナル)、『「機嫌がいい」というのは最強のビジネススキル』(日本実業出版社)、『いつもごきげんでいられる人、いつも不機嫌なままの人』(サンマーク出版)他多数。

公式サイト https://doctor-tsuji.com/


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