![]() 宇宙の分野で広がり続けるビジネスの可能性を、イメージしやすいよう漫画、アニメで大人気の『ONE PIECE』(尾田栄一郎・集英社)になぞらえて考えます。「宇宙×音」「宇宙×メンテナンス」のビジネスの種とは? 著書『「稼げる仕組み」が1時間でわかる 宇宙ビジネス超入門』(佐々木亮・PHP研究所)から再編集してお届けします。 ■「宇宙×音」深い睡眠に一役買う音楽の力 麦わらの一味で音楽家を務めるブルックは、陽気なリズムで仲間の士気を一瞬で引き上げます。宇宙でも、その効果は侮れません。 長期滞在クルーの生活ログを分析したところ、宇宙飛行士の宇宙滞在中のコルチゾール(ストレス指標)が上がりやすいことが報告されています。 このストレスを緩和させるために期待されているのが、音楽です。実際に宇宙飛行士たちは、オリジナルのプレイリストを非番に楽しむために持って行っているとも言われています。 好きな音楽を楽しむことは、宇宙医学的な側面でも非常に重要なことがわかります。地上でも「ヒーリングミュージック」の効果は検証されています。実際に私も睡眠導入の音楽や、作業に集中するとき自然音などを流すことが多かったりします。 そのため、ESA(ヨーロッパ宇宙機関)は宇宙での音楽の活用を推進していたりもします。音楽を聴くことの直接的な結果はまだ出ていない様子ですが、地上の実験から類推すると違和感のない取り組みです。音楽に限らず、そばにいてくれる感覚を持たせてくれるPodcastも実は宇宙では重要な存在になりうるのかもしれません。 音を楽しむ、その象徴的な出来事としてカナダのクリス・ハドフィールド宇宙飛行士による「SpaceOddity」の演奏も有名な事例です。彼が無重力でギターを抱え、デヴィッド・ボウイの名曲をカバーした動画は5000万回を超えて再生(2025年10月現在)され、宇宙生活に文化的彩りを添えたと言えるでしょう。 また、宇宙にいながら演奏をしているというシチュエーションに、地上にいる私たちも心踊らされます。 *宇宙でも騒音ストレスはある 宇宙飛行士が滞在しているISSの船内では、常時稼働するファンや機械音がすごく、クルーの集中力を奪うと言われています。 飛行機内を想像するとわかりやすいかもしれません。ISSは大きな実験施設であるだけでなく、ISS内の空気を制御するなど、宇宙飛行士が生きるために必要な生命維持を担う機械が常に稼働しているので、その音の大きさは想像できます。大学に泊まり込みで研究をするときに、何度か実験用の巨大設備がある部屋で寝たことがありますが、あれがずっと続くと思うとゾッとします……。 NASAの音響ガイドラインは周波数帯ごとに許容レベルを設定しています。静かな居住空間を確保するためのファン設計やアクティブノイズキャンセルの実装を推奨してるといい、音楽だけでなく音に対する対策もしっかりされているんです。 「宇宙は真空だから音なんて関係ない」と思っていても、実はそうではないということがよくわかります。 ■「宇宙×メンテナンス」整備技術が進化を大きく助ける 麦わらの船大工フランキーがサニー号を改造・修理するように、宇宙でも“整備士魂”が必須です。宇宙での修理の実例は多くありますが、その中でも私が一番好きなのは、ハッブル宇宙望遠鏡の修理にスペースシャトルに乗った宇宙飛行士たちが向かった事例です。 ハッブルが1990年に打ち上げられた直後、望遠鏡の縁がわずかに歪んでいることがわかり、画像がぼやける事故が判明します。このままではせっかく開発した望遠鏡が最大の力を発揮できないため、NASAは修理に向かうという決断をしました(意思決定に3年もかかりましたが)。1993年に修理に向かい、眼鏡にあたる補正光学器「COSTAR(コスタ)」と新型カメラを装着。 飛行士は軌道上で観測機器をまるごと引き抜き、交換する“宇宙ドック作業”で望遠鏡を救いました。 *地球外にもロードサービスが誕生 ハッブル宇宙望遠鏡の修理ミッションで磨かれた「宇宙で作業する力」は、人が手で行っていた仕事から、ロボットへと受け継がれてきました。NASAは、無人のロボットアームで古い衛星に近づき燃料を入れ直したり、宇宙空間で骨組みを組み立てたりする計画を進めてきました(代表的な計画の一つは、のちに中止が決まったOSAM-1です)。 一方で、民間ではすでに実績が出ています。ノースロップ・グラマンのサービス衛星「MEV-1」は2020年、運用が終わりかけていた通信衛星「Intelsat-901」に後ろから取りつき、姿勢や軌道を代わりにコントロールして、約5年分の“延命”を実現しました。要するに、故障車を路肩まで運ぶロードサービスの宇宙版が、ビジネスとして動き始めているのです。 宇宙での整備技術には、技術進化を大きく助ける可能性が秘められています。たとえば私が研究していたX線天文学という分野でも、20年かけて3機の巨大人工衛星を打ち上げ、ようやく稼働にこぎつけた装置があるのですが、3機のうち2機目の人工衛星の打ち上げは、整備不備による失敗でした。もしも宇宙圏内で整備することができていたら、今の天文学のレベルに20年早く到達できていたことになります。 もしもそんな世界になっていれば、今はさらに次世代の装置の開発に着手できていて、もっと詳細な宇宙の姿が明らかになっていたかもしれません。宇宙の整備には、それだけの潜在的なインパクトがあるのです。 佐々木亮 理学博士 【関連記事】 ■宇宙で手術はできるのか?広がる「宇宙×医療」ビジネスの世界 (佐々木亮 理学博士) https://sharescafe.net/62965060-20260128.html ■無重力でサッカー・掃除はできる?「宇宙×○○」で無限に広がるビジネスの可能性 (佐々木亮 理学博士) https://sharescafe.net/62964738-20260127.html ■未経験OK?「宇宙サラリーマン」という働き方――身近に広がる宇宙ビジネス (佐々木亮 理学博士) https://sharescafe.net/62962385-20260126.html ■110万円の家賃を払う板野友美さんとヤクルト高橋奎二さんの判断が正しい理由。(中嶋よしふみ ファイナンシャルプランナー) https://sharescafe.net/62674731-20250930.html ■世帯年収1560万円の共働き夫婦は、9540万円の湾岸タワーマンションを買えるのか? その1・生活費は年間800万? (中嶋よしふみ ファイナンシャルプランナー) https://sharescafe.net/61186482-20240125.html ■プロフィール 佐々木亮 理学博士 専門は、宇宙物理学・X線天文学。独立行政法人理化学研究所、アメリカ航空宇宙局(NASA)の研究員を経て、現在、サイエンスライター、株式会社ディー・エヌ・エー AI事業の事業責任者、中央大学非常勤講師など。Podcast「佐々木亮の宇宙ばなし」を2020年から毎日配信している。旬の宇宙トピックスを親しみやすく解説する内容で注目を集め、Apple Podcast日本ランキング3位を達成。第3回JAPAN PODCAST AWARDSで、Spotifyネクストクリエイター賞受賞、UJA科学広報賞2025大賞受賞。著書に『やっぱり宇宙はすごい』(SBクリエイティブ)やAI関連の書籍などがある。 シェアーズカフェ・オンラインからのお知らせ ■シェアーズカフェ・オンラインは2014年から国内最大のポータルサイト・Yahoo!ニュースに掲載記事を配信しています ■シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家の書き手を募集しています。 ■シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家向けに執筆指導を行っています。 ■シェアーズカフェ・オンラインを運営するシェアーズカフェは住宅・保険・投資・家計管理・年金など、個人向けの相談・レッスンを提供しています。編集長で「保険を売らないFP」の中嶋が対応します。 |


