![]() この記事では、蓮池氏の受験の経験談を通じ、受験におけるプレッシャーについて子ども側の視点から考えてみたいと思います。著書『塾講師が言わない子どもを苦しめない受験戦略』(蓮池林太郎・セルバ出版)から再編集してお届けします。 ■地獄への道は親の愛情で舗装されている *いまも夢に見るトラウマ 家庭での教育方針や受験戦略について話すなかで、私は恨みや虐待といった不穏なワードを少なからず使いますが、これは決して大げさな話ではありません。どんな家庭にも起こり得るのです。 親がよかれと思ってやった、愛情ゆえの教育が、子どもを地獄に突き落とす可能性はあります。私はこのことをあえて強い言葉で「地獄への道は親の愛情で舗装されている」と表現したいと思います。 それというのも私自身、学生時代のスパルタ教育が心の傷として刻まれ、いまも悪夢としてうなされるほどのトラウマとなっているからです。 私は情報収集が趣味なのもあって、子どもの教育計画、とくに将来やってくる受験に対する戦略について勉強してきました。 集めた情報や自分なりに確立した戦略論を、本を通してアウトプットしているくらいですから、かなり熱が入っているといえます。どうしてこうも受験戦略に対して熱心になれるのかといえば、私自身がかつて受験で苦しい思いをし、いまもうなされることがあるからです。子どもたちに私のようなトラウマを抱えてほしくないのです。 ■現実から逃げようとした学生時代 私の母は教育熱心で、小学5年生くらいから私は中学受験対策塾に通うようになりました。偏差値は50半ばから後半くらいの成績で推移し、第一志望の私立中高一貫校の合格判定は毎回E判定でした。とにかく勉強が苦痛でしかなく、悪い点を取ってしまったときは親に叱られるのが嫌で絶望していました。 国語のテストで悪い点を取ってしまったときは、答案用紙を便器に流して詰まらせてしまったこともあります。毎日遅くまで勉強の日々。苦痛に耐えたのに、親の期待に応えることもできず、この苦しみからいつ解放できるのだろうと子ども心に思ったものでした。 辛くも第二志望の私立中高一貫校に合格し、受験からの解放感を味わったのも束の間、英語学習がゼロからスタートし、中学受験の算数とはあまり関連がない数学が始まり、「いままで頑張ってきた受験勉強はなんだったのだろう?」と愕然とした記憶があります。 中学3年生くらいまでは「周りに遅れないようにしよう」「せっかく入ったのだから落ちこぼれないようにしよう」と、必死な思いで勉強を続けました。塾や家庭教師のおかげもあり、選抜クラスに入れる程度の成績は出せたものの、高校1年生あたりから雲行きが怪しくなってきました。努力の量は変わっていなかったのに徐々に成績が下がり始めたのです。 頑張りが結果に結びつかない、報われない現状に、私のプライドは傷つき、自己肯定感は失われました。おまけに何かと親に楯突く年頃です。親の叱責に歯向かうようになり、学業にも背を向け、現実逃避をするようになりました。 その逃避先となったのがアルバイトです。コンビニスタッフから始まり、ファミレスの皿洗い、カラオケの店員などを経験しました。勉強そっちのけどころか、学校にも滅多に行かなくなってしまいます。とくにカラオケのキャッチは天職かというくらいうまくいって、ほかの先輩キャッチの方々と比べてもぶっちぎりの営業トップでした。 アルバイトざんまいの高校2年生は、勉強から完全解放されて毎日が楽しく、しかもお金が入ってくるのですから最高です。苦痛を感じながら必死に勉強机に向かっても、なかなか結果の出ない勉強と比べたら雲泥の差でした。戦略的に立ち回るビジネスのコツを学べたのは、その後の人生の大きな糧となりました。 しかし社会のことを知れば知るほど、このまま大学へ進学せず正社員になっても、高い給料は望めず、できる仕事の範囲が限られることも悟るようになりました。「心を入れ替えて真面目に勉強しよう」と一念発起したのが高校3年生になってからでした。 周りはすでに受験モード、しかも高校2年生の間は何も学業を積めていません。かなり不利な状況からの受験生活スタートでした。元来の勉強嫌いです。案の定、苦しみの日々でした。中学受験に続く2つ目のトラウマとなっているのがこの大学受験生の時期です。 予備校には行かず、一人暮らしのアパートで孤独に勉強しました。自己流だったため効率は非常に悪かったのでしょう。思ったように成績が上がっていかず、本当に苦しい思いをしました。それでもなんとか現役で大学医学部に合格し、医者を志す道を切り拓くことができました。 中学受験と大学受験、両方の苦しみの時代は、いまだに悪夢として見るくらい、私の心に深い傷を残しています。頑張っても成績が上がらない、報われない日々はプライドをずたずたに傷つけ、自信は低下していく一方です。 もし中学受験をしていなかったら。そう思うことも少なくありません。中学受験がなければ、あの苦しみの日々を経験せずに済みましたし、屈辱を味わうこともなく、いまも悪夢を見るようなことはなかったかもしれません。高校時代に現実逃避することもなく、順調に学校生活を楽しみながら学力を伸ばしていき、もっと楽な気持ちで大学へ進学できたかも……そんなことも感じてしまうわけです。 しかし一方で、高校時代のあの逃避の経験があったからこそ、いまの自分があるとも感じています。高校時代を勉強だけに費やしていたら、アルバイトで社会経験が積めず、経営的な視点を養えず、開業医には向かない医者になっていたかもしれません。 ■親の愛情が与えてくれるもの 親がよかれと思ってやったさまざまな教育は、私にとっては地獄への道でした。 今では親に感謝している一方で、トラウマを抱くことになった経験から、自分の子どもには決して同じことをしてはならないと自戒しています。「地獄への道は善意で舗装されている」といいますが、私としては「地獄への道は親の愛情で舗装されている」と思わずにはいられません。その地獄への道を一旦外れたことが、私のいまの人生にも大きな影響を与えているように思います。 幸いだったのは、私が外向的な性格で、現実逃避の道としてアルバイトへ出たことでしょう。もしもっとシャイな性格だったら、トラウマを克服できず、不登校や引きこもりといった道を歩んでいたかもしれません。まさに地獄へまっしぐらだったことでしょう。もちろん、人生を謳歌するための道づくりも、親の愛情なしではなし得ません。 親が子どものことをどれだけ知り、どれだけコミュニケーションを図り、信頼関係を築けていけるか。ここにかかっています。子どもの得意なことや好きなことを尊重しつつ、子どもにとっての最善のルートを常に模索し歩ませてあげるべきで、時に親自身の願望を抑える努力をしないといけないかもしれませんが、決して必要以上の強制をしてはいけないのです。 トラウマを植え付け、教育虐待を犯してしまったら、家族が崩壊し、人生が崩壊することもあるのです。 蓮池 林太郎 医師・作家・新宿駅前クリニック院長 【関連記事】 ■「教育」という凶器で我が子を痛ぶらないために親が持つべき「全体最適」の受験戦略 (蓮池林太郎 医師) https://sharescafe.net/62967661-20260128.html ■いま、大学受験と雇用システムには同時に変化の波が到来している――求められる戦略のアップデート (蓮池林太郎 医師) https://sharescafe.net/62878648-20251223.html ■最悪の場合、家庭崩壊のリスクも――絶対間違えてはいけない中学受験後のケアとは (蓮池林太郎 医師) https://sharescafe.net/62878639-20251223.html ■110万円の家賃を払う板野友美さんとヤクルト高橋奎二さんの判断が正しい理由。(中嶋よしふみ ファイナンシャルプランナー) https://sharescafe.net/62674731-20250930.html ■世帯年収1560万円の共働き夫婦は、9540万円の湾岸タワーマンションを買えるのか? その1・生活費は年間800万? (中嶋よしふみ ファイナンシャルプランナー) https://sharescafe.net/61186482-20240125.html ■プロフィール 蓮池 林太郎 医師・作家・新宿駅前クリニック院長 1981年生まれ、帝京大学医学部卒業。病院勤務を経て、2009年新宿駅前クリニックを開設。医療法人社団SEC理事長、新宿駅前クリニック院長。 医者としてのキャリアとインターネット分野の知識を掛け合わせ、ホームページ、ウェブメディア、書籍などを通じて、クリニック開業、病院選び、生き方、婚活など独自の視点から情報発信を行っている。これまで10冊ほどの書籍を出版。 2017年からはクリニック開業コンサルティングも提供を開始、100人以上の医師からの相談実績がある。 子どもが5人おり、教育についても独自に情報収集を行い、コスパ・タイパに優れた受験戦略を研究している。 シェアーズカフェ・オンラインからのお知らせ ■シェアーズカフェ・オンラインは2014年から国内最大のポータルサイト・Yahoo!ニュースに掲載記事を配信しています ■シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家の書き手を募集しています。 ■シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家向けに執筆指導を行っています。 ■シェアーズカフェ・オンラインを運営するシェアーズカフェは住宅・保険・投資・家計管理・年金など、個人向けの相談・レッスンを提供しています。編集長で「保険を売らないFP」の中嶋が対応します。 |


