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年が明けて、今年の目標を立てた。手帳を開くと、あの日書いた言葉が並んでいる。

「健康に気をつける」「資格の勉強をする」「家族との時間を大切にする」どれも前向きで真面目なものばかりだ。仕事に大きな不満があるわけではない。

給料も、まあ悪くない。それなのに、ふと立ち止まると、胸の奥に小さな違和感が残る。
「この先、どうなるんだろう」

5年後も10年後も、今の延長線上しか見えない。このまま同じ会社で働き続けるのか。それとも、どこかで何かが変わるのか。考えようとすると、視界が霧に包まれたように曖昧になる。

こうした違和感は、多くの人が感じているものではないでしょうか。この不安を解消するには、自分を一つの「会社」とみなし、自身のキャリアについてマーケティング的な戦略を練っていくことが効果的です。

マーケティングの専門家として、マーケティングの観点からキャリアを考えるということについて考えてみたいと思います。

■自分の道は自分で選ぶ時代へ
与えられた仕事をしっかりこなし、多少の無理も引き受ける。安心して任せられる存在になることが、自分のキャリアにつながっていく。これまで多くの人が、そう信じて働いてきました。

しかし今は、自分で生き方や働き方を選択することが前提の時代になっています。実際、総務省の調査によれば、転職を希望する人の数はこの10年で200万人以上増加しています。

また、大企業に勤めていれば生涯安心という時代でもなくなってきました。東京商工リサーチの調査でも、早期退職を募集する企業は増えています。会社は今の役割は決めてくれますが、5年後や10年後の行き先までは示してくれません。

だからこそ今は、自分自身で進む方向を考え、選んでいく必要があるのです。

■人はそれぞれが「自分会社」の社長だ
キャリアは、選択の積み重ねです。より正確に言えば、「自分という資源を、どこにどう配分するか」を決めていくことです。

そう考えると、キャリアは経営判断と同じなのです。時間、集中力、お金など……使える資源は限られています。

だからこそ、自分は人生で何を大切にしたいのかということを軸に、強みをどこで、どう活かすのが効果的なのかを理解し、意思決定する必要があります。

「自分という会社」の社長として、将来実現したいことに対して、次に何に時間やお金を使っていくかを考えていく立場にあるのです。

■キャリアのマーケティングは広告やSNSじゃない
自分会社の社長という視点に立つと、キャリアを「マーケティングする」という考え方が重要になります。

マーケティングというと、広告やSNSを思い浮かべる人も多いでしょう。しかし、それは本質ではありません。

本来のマーケティングとは、自社や市場を理解し、どこでどう戦うかを決めることです。例えば会社で売っている商品には、自社の強みや特徴があり、特定の顧客のニーズを満たしているはずです。

この考え方は、商品やサービスだけでなく、自身のキャリアにも当てはまります。自分はどんな素質や経験を持ち、どのような強みがあり、それをどこでどう活かせるのか。改めて考えることが大切です。

一方で、「キャリアは選べない」「会社員には無理」と思われるかもしれません。確かに、会社員としては環境を選べないと感じがちです。しかし実際には、多くの人は日々、仕事への向き合い方や力の入れどころを選んでいます。

また、終身雇用が前提ではない今、今の会社の中だけでキャリアを考える必要もありません。さらに言えば、キャリアは「働くこと」だけの話でもありません。学びや趣味、社会活動など、人生全体の時間や力の使い方に関わるものなのです。

■キャリアをマーケティングする3つのステップ
キャリアを考えるとき、何から手をつければよいのでしょうか。大きく3つのステップに分けて考えることができます。

STEP1:価値観(何に心が動くのか)
自分は、どんなときに心が動くか。評価や報酬ではなく、時間を忘れて没頭できることは何か。

そこには、自分でも気づいていない価値観や情熱が表れています。キャリアの出発点は、何が正しいかよりも、自分の心がどこに反応しているのかを理解することです。

STEP2:戦略(強みをどこで活かすのか)
年を重ねるにつれて、自分の強みや弱みは少しずつ見えてきます。すべてを伸ばそうとするのではなく、どこで力を発揮し、何をあえてやらないのかを決めることが重要です。

強みが活きる分野に軸足を置くことで、無理なく成果を出しやすくなります。これは重要な戦略的判断です。

STEP3:計画(どのように進めるか)
10年後、20年後、どんな自分でありたいのか、ゴールを描いていきましょう。

そのイメージを起点にして、では1年後にはどんな状態でいたいのか、1か月後には何に取り組んでいるべきか、そして明日は何をするのか。時間軸を細かく刻みながら、具体的に計画していくことが効果的です。

■キャリアは生き方そのもの
キャリアをマーケティングするという考え方は、単に仕事で成功するための話ではありません。生きること全体に役立つ大切な考え方です。

何に心を動かされるのか、どんな強みを持つのかを深く理解し、それに応じてこれからの人生の選択を重ねていく。

そうすることで、どこで働くか、どんな肩書きを持つか以上に、自分自身の心が満たされる、より充実した人生につながるはずです。


木下亮雄 PR・マーケティングコンサルタント 株式会社ユアウィル 代表取締役


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■プロフィール 木下亮雄 PR・マーケティングコンサルタント 株式会社ユアウィル 代表取締役
kinoshita
魅力はあるのに伝わらないという課題を中心に、中小企業や個人事業主200社以上を支援。外資系企業で13年間マーケティングに従事。ベンチャー支援団体ではリードパートナー兼PR・マーケティング担当を経験し、「人の志の実現を支援したい」という想いから株式会社ユアウィル(Your Will=あなたの志)を設立。支援した人事コンサルタントや中小企業診断士などの専門家が次々と雑誌に掲載されるなど、多くの成果を挙げる。 自身も専門家として30冊以上の法人向けビジネス誌や日本経済新聞に寄稿するなど専門分野での発信を行う。商工会議所や大学校などの教育機関では講演活動にも取り組み、実践的なノウハウを提供。近著に『コンサルタント・講師のためのPR戦略』(同友館)

公式サイト https://practical-marketingpr.com/
著書 『コンサルタント・講師のためのPR戦略』https://www.amazon.co.jp/dp/4496057603

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