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「今年こそ、新しいことに挑戦したい」
「仕事のパフォーマンスをもっと上げたい」

新年を迎えると、誰もがそんな前向きな思いを抱くものです。しかし同時に、こんな違和感を抱えてはいないでしょうか。

「今年こそ、ちゃんとやりたい」
「もう一度、前向きに頑張りたい」

新年を迎えると、そんな思いが自然と湧いてくるものです。しかし同時に、こんな違和感を抱えていないでしょうか。

・やる気はあるのに、カラダが動かない
・前向きなことを考えようとすると、なぜか不安になる
・理想の自分を思い描くほど、気が重くなる

精神科医として多くのビジネスパーソンと接する中で、特に年始はこの「理想と現実のギャップ」によるメンタルの不調を訴える方が増えると感じます。ここで大事なことは、「頑張れない自分」を責めないことです。

動けないのはあなたの意志が弱いからではなく、脳がこれまでの習慣に従って、無意識にブレーキをかけているだけかもしれません。

■「変わりたい」のに動けないのは、脳の正常な反応
脳は、物事が「正しいかどうか」を論理的に判断するよりも前に、すでに出来上がっている神経回路(パターン)に従って、自動的に心身へ指令を出します。

条件反射で有名なバブロフの犬を思い出してください。「ベルの音」を、エサを与える時に繰り返し聞かせることで、音だけで唾液が出る神経回路を作っているのです。

例えば、長期間のプレッシャーや緊張にさらされてきた人は、脳が「これ以上負荷をかけないように」と、無意識にブレーキを優先するモードに入りやすくなります。その状態で無理に「今年こそ変わるぞ!」と強い指令を出しても、脳内の古いパターンが引き止めようとして、結果的に「やる気はあるのに動けない」という状態が生まれてしまうのです。

これは怠けではなく、脳がこれまでの経験に基づいてあなたを守ろうとしている、ある意味で「正常な反応」と言えます。

■「脳への「入力情報」をかえて、コンディションを整える
では、新年のスタートダッシュを切るためにはどうすればいいのでしょうか。ポイントは、無理に自分を変えようとするのではなく、脳への「伝え方」を変えることです。

脳の仕組みは、パソコンのタイピングによく似ています。
間違ったキー(「migi」と打ちたいのに「mini」)を叩いている限り、望む結果(「右」)は画面に出てきません。脳も同様に、入力された言葉どおりに反応します。

今日から取り組める、脳のブレーキを緩めるためのステップをご紹介します。

1. 「安心感」をセットにして過去を清算する
過去の神経のパターンをそのままにして、強いプレッシャーを伴う未来の目標設定は、脳の警戒を強めてしまいます。理想の状態を思い描くときは、まずは「過去の神経回路」を改善する必要があります。

そうすることで、過去のプレッシャーが消えて、リラックスした状態で未来の「心地よい状況を考える」ことができます。そうしてはじめて安心感や楽しさが現実になると思えてきます。

脳がその方向を「安全で進んでいい場所」だと認識するのです。

2. 言葉の「上書き保存」を習慣にする
あなたが、英語の「pencil」を、「ナイフ」と覚えていたとします。
それは、「pencil」=「ナイフ」という神経回路が構築されているということです。

間違いに気づいて、あなたは「pencil」=「えんぴつ」と覚え直すにはどうしますか?

そうです。何回も口に出したり、書いたりして、上書きすればよいのです。

それと同じように、ネガティブな口癖や思考を、意識的にポジティブな言葉で上書きしてみましょう。

・「今まで変われなかった」と思っていたら、「今までどんどん変わってきた」と上書きする。
・「失敗した」と思っていることは、「成功した」と上書きする。
・「変われるかな?」と思ったら「簡単に変われる」と上書きする。

■「自分を責めるよりも、脳に正しい方向を伝える
新年は、「自分を変えなければ」と思いやすい時期です。どんな言葉で、どんなイメージで、どんな感情を伴って、
自分は脳に指令を出しているのか。そこに目を向けたとき、変化はすでに始まっています。

頑張れない自分を責める必要はありません。
体が動かないのは、あなたが怠けているからではなく、脳が今までの過去のネガティブな指令に忠実に従ってきただけなのです。

今年はぜひ、「もっと頑張る」よりも、過去の脳の神経回路を正しい方向にかえる一年にしてみてください。今日から「今までどんどん変わってきた」を口癖にしてくださいね。


西川晶子 精神科専門医・産業医・医学博士・公認心理師


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■プロフィール 西川晶子 精神科専門医・産業医・医学博士・公認心理師
早稲田大学大学院(心理学修士)を修了後、外務省に入省。その後、スタンフォード大学大学院にてコミュニケーション学修士号を取得。国際協力の現場でメンタルケアの重要性を再認識したことを機に、より直接的に人を癒やす道を志して滋賀医科大学へ学士編入学。卒業後、医師となってからは、精神科医として臨床に携わり、産業医として「働く現場」の快適な環境づくりをサポートしている。現在は、認知心理学と脳科学の知見を統合し、脳への「入力情報」をかえて、コンディションを整える独自のメソッドを共同開発中。「もっと頑張りたい」とか「頑張れない」と思う人々の心の安定性と快適さを引き出し、しなやかなパフォーマンスの発揮を追求している。

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