![]() 子どもが不安定な時代を生き抜くため、親が持つべき教育観にはどのような変化があるのでしょうか? 著書『塾講師が言わない子どもを苦しめない受験戦略』(蓮池林太郎・セルバ出版)から再編集してお届けします。 ■ホワイト企業崇拝にも陰り *「ゆるすぎる」環境が若手人材を遠ざける 長時間労働、低賃金、ハラスメントの横行、過剰なノルマなど、劣悪な労働環境で従業員を酷使する企業を「ブラック企業」と呼びます。このブラック企業の呼び名が広く知られるようになったのは2000年代のことです。働き方改革が推進されるようになり、ブラック企業の撲滅は着々と進んでいます。 その一方で、ブラック企業とは対極にある「ホワイト企業」という言葉も浸透してきました。多くの就職希望者が、ブラック企業を避け、ホワイト企業に就職することを目標に、情報収集や就業活動に精を出すようになりました。 しかしこのホワイト企業への過度な憧れにも変化が見られています。働き方改革の一環で企業は新卒社員を丁寧に扱いますが、過剰な配慮が逆効果になることもあるようです。 「ホワイトすぎる」労働環境では、やりがいや成長機会が乏しく、有望な若者が辞めてしまうケースが増えています。いかに給料が良くて、定時で帰れる健全な職場であっても、仕事に面白味を感じなければ若者は辞めてしまうのです。 挑戦意欲が満たされない仕事は、モチベーションを維持できません。成長することにより、人材としての市場価値が上がりやすい労働環境の方が将来的に転職もしやすくなりますので、そのような企業を求める若者もいます。ホワイトすぎるのも考えものというわけです。 厳しいとブラック企業と批判されるし、ホワイト過ぎても離職されてしまう。非常にさじ加減の難しい話で、企業も頭を抱えているのかもしれません。 また昨今の学生は大企業志向が薄れ、社会貢献度の高い企業やベンチャーへの関心が高まっています。背景のひとつとして、大企業でも人員削減を当たり前のように行うようになったことが挙げられるでしょう。加えて、SDGsなど社会の課題解決を重視する教育の影響もあり、若者は給料よりもやりがいや誇れる仕事を求める傾向が強まっています。 待遇のいいホワイト企業に入ることが、必ずしも幸福の最適化につながるわけではないことを、すでに社会へ出ている先輩たちの姿から若者は学んでいるのかもしれません。 有名な大学に進学したとしても、「ベンチャーに就職したい」と子どもが就職希望先を伝えてくるかもしれません。安定した企業に就職してほしい親としては複雑な心境になりますが、子どもの挑戦を応援する心の余裕はもっておきたいものです。仮にベンチャーがうまくいかなくても、その挑戦を評価してくれる社会へと、すでに舵は切られているのですから。 ■ホワイトカラーは滅びる? *生き残る仕事、奪われる仕事 「ホワイト」つながりでもうひとつ。大企業でも起こる大量リストラの背景として、AIの台頭があります。世界経済フォーラム(WEF)の2024年の調査では、企業の41%がAIによる業務自動化を理由に人員削減を検討しているとのことです。 自分たちの代わりにてきぱきと働いてくれる、人間以外の代替者がいる。しかも人間とは違い、24時間動かすこともできる。この存在は経済社会にとって無視できず、企業が人間をたくさん擁する必要性を感じなくなるのも無理な話ではありません。 人間はあまり働くことなく、人工知能をもつロボットがすべてを担う、そんなSFアニメで見たような世界が遠からずの未来に待ち受けているのかもしれません。 AIに奪われる仕事というのも、AI技術の進化にともなって日々更新を続けています。2025年7月にマイクロソフト社が9000人のレイオフを実施しました。その多くは営業職なのだそうです。その一方でAIへの投資を強化していくと発表しています。世界を代表する巨大企業を筆頭に、ほかの企業でもレイオフは増える兆しとなっています。 対象となっている職種は営業職や事務職が中心のようです。つまり、AIに取って代わられやすい、ホワイトカラー職と呼ばれる職種から、着々と人間は仕事を奪われているのです。 現場で手足を動かし、自身の持つ技術を臨機応援に発揮するブルーカラー職のほうが、圧倒的に需要の崩れは起きないとささやかれています。 これまでの大学を中心とした学校教育は、人材や業務を管理し、パソコンに向かって作業するといった、ホワイトカラー職に従事する人間を量産するものでした。 しかしAIの台頭により、ホワイトカラー職の需要が減っていくとなると、教育方針を根底から変えていく必要も出てきそうです。少なくとも、上位のハイスペックな人間だけがホワイトカラー職にありつける時代となっていくことでしょう。ひょっとすると、工業高校卒で実践的なスキルを身につけた人材のほうが、社会で重宝され、大学卒よりも安定したキャリアを築く可能性すらあります。 学業優秀でも、AIに代替されるスキルだけでは通用しない時代が刻一刻と近づいています。 ■教育の多様化 *ライフと学びの両立 かつてはいい大学に進学していい大学に就職するのが最適解であるようにレールが敷かれていました。しかし社会は多様化し、それにしたがって個人の価値観も多様化しています。企業が求める人材や若者の志向にも変化が訪れています。 それらを投影するようにして、教育でも多様化の気運が高まっています。受験方式が多岐にわたるようになったのはその根拠のひとつといっていいでしょう。 インターネットの進化によって社会のトレンドが大きく動き、情報化社会が極まり、AIがいよいよ世の中を一変させようとしています。しかしそれでもなお揺るがないのは、社会は人と人のコミュニケーションで織りなされている事実です。 社会は人々の理想実現や幸せの遂行のためにあるのですから、人無しでなし得るものではありません。教育の多様化とはいいましたが、これも突き詰めれば理想や幸せを得るための手段が多様化したのだと言い換えることができます。 いい大学に進学していい大学に就職する以外にも、私たちは自己実現が可能となってきています。逆にいえば、ただひたすらに机に向かい、がむしゃらにテキストと付き合っていくようなガリ勉一辺倒なタイプでは、これからの社会を正しく生き抜くのは難しくなっていくことでしょう。 ライフワークバランスが求められる社会が形成されているのと同じ発想で、ライフと学びが両立されるような教育課程を、親たちは意識したいところです。机に向かうだけが教育ではないことを自覚し、子どもを過度に苦しめず、幸福度を高めるための受験戦略を心がける必要があります。 蓮池 林太郎 医師・作家・新宿駅前クリニック院長 【関連記事】 ■「勉強だけできる人」を社会は必要としない―採用における学歴偏重主義の終焉 (蓮池林太郎 医師) https://sharescafe.net/62975646-20260201.html ■有名大合格を信奉する「失われた30年」世代の親という害 (蓮池林太郎 医師) https://sharescafe.net/62970383-20260130.html ■「地獄への道は親の愛情で舗装されている」受験トラウマを負った医師の正直な思い (蓮池林太郎 医師) https://sharescafe.net/62970196-20260129.html ■110万円の家賃を払う板野友美さんとヤクルト高橋奎二さんの判断が正しい理由。(中嶋よしふみ ファイナンシャルプランナー) https://sharescafe.net/62674731-20250930.html ■世帯年収1560万円の共働き夫婦は、9540万円の湾岸タワーマンションを買えるのか? その1・生活費は年間800万? (中嶋よしふみ ファイナンシャルプランナー) https://sharescafe.net/61186482-20240125.html ■プロフィール 蓮池 林太郎 医師・作家・新宿駅前クリニック院長 1981年生まれ、帝京大学医学部卒業。病院勤務を経て、2009年新宿駅前クリニックを開設。医療法人社団SEC理事長、新宿駅前クリニック院長。 医者としてのキャリアとインターネット分野の知識を掛け合わせ、ホームページ、ウェブメディア、書籍などを通じて、クリニック開業、病院選び、生き方、婚活など独自の視点から情報発信を行っている。これまで10冊ほどの書籍を出版。 2017年からはクリニック開業コンサルティングも提供を開始、100人以上の医師からの相談実績がある。 子どもが5人おり、教育についても独自に情報収集を行い、コスパ・タイパに優れた受験戦略を研究している。 シェアーズカフェ・オンラインからのお知らせ ■シェアーズカフェ・オンラインは2014年から国内最大のポータルサイト・Yahoo!ニュースに掲載記事を配信しています ■シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家の書き手を募集しています。 ■シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家向けに執筆指導を行っています。 ■シェアーズカフェ・オンラインを運営するシェアーズカフェは住宅・保険・投資・家計管理・年金など、個人向けの相談・レッスンを提供しています。編集長で「保険を売らないFP」の中嶋が対応します。 |


