![]() 無計画な浪人がもたらす深刻なリスク、親として取るべき冷静な判断とは? 著書『塾講師が言わない子どもを苦しめない受験戦略』(蓮池林太郎・セルバ出版)から再編集してお届けします。 ■コスパ・タイパ・リスパの3指標から考える受験 *3つの指標 子どもたちにはその子なりの性格があり、適性があり、考え方や生き方があります。親は子どもとのコミュニケーションを通して、それらを十分に把握し、それらに沿った教育方針を築いていくことで、苦しみの少ない充実した人生を子どもに歩ませることができます。 と、言葉では簡単に表現することができますが、実行するとなると容易いものではありません。 子どもの性格を把握するだけでも一苦労ですし、1日ごと心身の成長する彼らの思考や好みや得意なものを、親が常にアンテナを張ってキャッチすることもほぼ不可能な話です。 しかしだからといって子どもの思うがままに生きる道を選ばせたり、あるいはほかの成功モデルを子どもに強引に当てはめたりしても、良い結果は得られにくいでしょう。 したがって親の役割としては、適切な「指標」を頼りに、子どもと綿密なコミュニケーションを図り、子どもをよく観察して、その子なりの教育方針と受験戦略をカスタマイズしていくことになります。 かなり現実的かつシビアな3つの指標です。すなわち、コスパ(コストパフォーマンス)、タイパ(タイムパフォーマンス)、リスパ(リスクパフォーマンス)になります。 前者2つのパフォーマンス指標はよく耳にします。コスパは、かけたコスト(金銭)に相当する以上の価値が受けられるかどうか。タイパは、費やした時間に相当する以上の価値が受けられるかどうか。 そして最後のリスパは、起こり得るリスクに見合うだけの価値が期待できるかどうか。この中で直感的にイメージしにくいのは3つ目のリスパでしょう。 これについて簡単に説明します。リスパは、ある「選択」をした際に考えうる結果の「最大と最小の期待幅(リスク幅)」を想定し、その選択がリスクに見合うどうかを見極める指標です。 投資の世界では頻出する用語で、低リスクの金融商品に投資して高リターンを得るために、リスクパフォーマンスを重要な目安としています。 教育の分野においてもリスパは十分に視野に入れておくべきというのが持論です。多くの親たちは、コスパやタイパを重視することはあっても、リスパの視点が欠けていることが多々あります。昨今ではもっと極端で、コスパだけが見られがちで、タイパやリスパが軽視されている風潮もあると感じています。 パフォーマンスが低い例、「低パ」な受験戦略の一つに、無計画な浪人があります。 ■リスクだらけの浪人生活 目標としている大学合格を目指して、大学受験を次年度へ繰り越す「浪人」。パフォーマンス面で十分な吟味が必要であり、無計画に浪人へ突入すると、3つの指標的にかなりの低パフォーマンスとなってしまいます。 浪人するということは、すなわち就職する時期が少なくとも1年遅れることを意味しています。仮に生涯平均年収を500万円としたら、この1年の遅れによって500万円の機会損失を得ることになります。 「500万円を捨ててまで浪人をする価値があるのか」という視点を持たず、「希望の大学に行けなかったから」という理由だけで浪人することは、その先の人生で得られる賃金を犠牲にする可能性があるということです。 まして浪人して予備校に通うとなれば受験勉強のための延長出費がかさみます。心身がみなぎっている若い時期の1年を勉強だけに捧げることにもなります。コスパやタイパの上で、浪人ルートは慎重になるべきです。 リスパ面でも無計画浪人は危険です。浪人するとなったら、現在の学力で受かる大学よりも、1年後にはもっと上の大学へ行けるという自信と覚悟が必要です。 浪人生活は決して生やさしいものではありません。いくつもの我慢が必要であり、遊びたい盛りの若者が乗り越えるにはとても大きな障壁となります。抑制が効かないと、モチベーションが維持できず、無為な時間を過ごしてしまったり、堕落した生活が定着してしまったりします。今より学力が上がるかもしれないが、人生のどん底まで落ちぶれてしまう可能性もある。 それが、浪人という選択をした際に考えうる結果の「最大と最小の期待幅」です。浪人は非常にリスクの高い挑戦といえるでしょう。 子どもに学力の伸びしろを感じていたとしても、「はたして浪人を続けていけるだけの覚悟があるのか」といった生活面や精神面も考慮して、子どもに選ばせる吟味が必要となるわけです。 ときには、「どうしても第一志望の大学に行きたいから浪人したい」と訴える子どもを、「浪人は向いてないから受かった大学に進学すべき」と冷静に説得することも親の役目となることでしょう。それが子どものリスクを大きく低減させる選択にもなり得るわけです。 ■第一志望に行ける浪人生は50% 第一志望の大学に最終的に行けることが叶う浪人生は、全体の50%という結果もあるそうです。1浪だけではなく、2浪や3浪する受験生もいる中でのこの数字です。こういったデータを参考にし、子どもの性格も考慮に入れつつ、計画的に浪人の是非を決めていくべきです。 当然ですが、浪人したら指定校推薦はありませんし、公募推薦や総合型選抜も受けることができる大学は限られており、多くは一般受験で大学進学することになります。 よりリアルな指標で考えるとするなら、現役では日東駒専レベルに受かる程度の学力だったのが、1浪してMARCHレベルに合格できる可能性が高いといった、一段階上の積み上げが期待できるのであれば、浪人する価値はあることでしょう。浪人したとしても1段階上のレベルの大学に受かる可能性が30%以下なら、浪人を選ばず現役進学するのがよいかもしれません。 浪人すると決めても、「2浪は絶対にしない」「1浪して受かった大学に進学する」といった約束を設けるようにしましょう。浪人生活が長引くほど、後戻りはできにくくなります。堕落した生活が定着してしまったり、精神が病んでしまったりといったリスクが上がりますので、リスクパフォーマンスという観点から考えることも大事です。 浪人という選択肢があるかどうかによって、高校から指定校推薦で大学進学するのか、一般受験で大学進学するのかについても影響が出てきます。いずれにしても「浪人は計画的に」を心がけましょう。 蓮池 林太郎 医師・作家・新宿駅前クリニック院長 【関連記事】 ■大卒より工業高校卒の方が安定して働ける?ホワイトカラーが滅びる時代の教育観 (蓮池林太郎 医師) https://sharescafe.net/62975660-20260201.html ■「勉強だけできる人」を社会は必要としない―採用における学歴偏重主義の終焉 (蓮池林太郎 医師) https://sharescafe.net/62975646-20260201.html ■有名大合格を信奉する「失われた30年」世代の親という害 (蓮池林太郎 医師) https://sharescafe.net/62970383-20260130.html ■110万円の家賃を払う板野友美さんとヤクルト高橋奎二さんの判断が正しい理由。(中嶋よしふみ ファイナンシャルプランナー) https://sharescafe.net/62674731-20250930.html ■世帯年収1560万円の共働き夫婦は、9540万円の湾岸タワーマンションを買えるのか? その1・生活費は年間800万? (中嶋よしふみ ファイナンシャルプランナー) https://sharescafe.net/61186482-20240125.html ■プロフィール 蓮池 林太郎 医師・作家・新宿駅前クリニック院長 1981年生まれ、帝京大学医学部卒業。病院勤務を経て、2009年新宿駅前クリニックを開設。医療法人社団SEC理事長、新宿駅前クリニック院長。 医者としてのキャリアとインターネット分野の知識を掛け合わせ、ホームページ、ウェブメディア、書籍などを通じて、クリニック開業、病院選び、生き方、婚活など独自の視点から情報発信を行っている。これまで10冊ほどの書籍を出版。 2017年からはクリニック開業コンサルティングも提供を開始、100人以上の医師からの相談実績がある。 子どもが5人おり、教育についても独自に情報収集を行い、コスパ・タイパに優れた受験戦略を研究している。 シェアーズカフェ・オンラインからのお知らせ ■シェアーズカフェ・オンラインは2014年から国内最大のポータルサイト・Yahoo!ニュースに掲載記事を配信しています ■シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家の書き手を募集しています。 ■シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家向けに執筆指導を行っています。 ■シェアーズカフェ・オンラインを運営するシェアーズカフェは住宅・保険・投資・家計管理・年金など、個人向けの相談・レッスンを提供しています。編集長で「保険を売らないFP」の中嶋が対応します。 |


