![]() ポイントとなったのは、ブランディングディレクターの深澤了氏が提唱する「採用ブランディング」という考え方。リクナビやマイナビなどの採用メディア中心の戦いから抜け出し、自社の強みを見極めブランドとして打ち出すことで、大手にも負けない採用を行うことを言います。 取り入れた会社はどう変わったのか? 著書『人が集まる中小企業の経営者が実践している、すごい戦略 採用ブランディング 新版』(深澤了・WAVE出版)から再編集してお届けします。 ■新卒採用0人企業が2カ月で7人に! SES(システムエンジニアリングサービス)は、IT企業をクライアントとして、技術者を派遣するサービスです。 SESで検索すると、「SESから脱出せよ」「人生が台無し」「ブラック企業に駐在」など、ネガティブなワードが続出します。よい印象をもっている人は少なく、不人気な仕事として採用自体が難しい業種で、中途採用もうまくいかず新卒採用も0人という事態に悩むA社がありました。 「このままじゃダメだ」と採用ファーストの考えを社長が強く意識したことで、採用担当から現場の人間までが勢ぞろいし、大人数での採用ワークショップが開催されました。 そこで自社の強みを整理したところ、 ・カフェのようなオープンな職場 ・世の中より時間がゆっくりしている といった、一般的には堅苦しく映るIT企業のイメージを覆す雰囲気や、 ・前職がまったくITでない人も大歓迎 など、スーパーのレジ打ち、美容師などの前職の経験も活きたという意見も多数。 SESと聞いて抱くマイナスの業界イメージを覆すA社の実態が明らかになり、社員が一丸となって採用ブランディングの手順を着実に踏んでいきました。 自社の理念に沿って採用フローを決めていったA社は、旧ツイッター(現在はX)を採用フローに加えました。社長を筆頭に採用担当も入れて4〜5人がアカウントを持ち、日々ツイートすることにしたのです。 その結果、2019年の新卒採用結果は、前年度0人から7人へと飛躍し、そのうち2人は旧ツイッターからの採用となりました。もちろん旧ツイッターもXも広告費やイベント参加費などが一切かかりません。SNSが採用に果たす効果も実証されたわけです。 さらにその翌年の2020年、2021年共に、20名の採用(第二新卒者を含む)を達成しています。 採用人数の数字もさることながら、採用ブランディングの効果を示したもうひとつはそのスピードです。 採用ブランディングを実施しはじめたのが2019年6月なので、費やしたのは約2カ月。夏が終わる時点で7人の採用が決まりました。採用ブランディングは、採用の本質に沿うため、確実な成果が短期間に出るのです。 ■採用の理想形、リファーラル(紹介)が半分以上の奇跡 採用ブランディングには、短期的メリットと長期的メリット、ダブルの効果があります。 A社のように導入して即効果が表れるのが、「短期的メリット」。採用ブランディングの考え方で採用を継続することでもたらされる好循環が「長期的メリット」です。 長期的メリットとは、採用にリファーラルがおこっていくことを指します。採用では、最少の費用で優秀な人材を獲得できるのが特徴です。 入社した社員が「うちの会社いいよ。あなたに向いてるよ」と後輩や知人、最適と思われる人に声をかけてくれることほど、楽で信用のおける採用はありません。 採用ブランディングで入社した人は、理念に共感して入ってきているので、会社への愛着度が高い。愛着が高い人は、活躍人材になり得る人物です。その人がいきいきと働く姿は周囲にも伝わり、「入らないか」と勧められた人は、「この人がいるなら」とその姿に背中を押されるのです。 不動産投資会社のB社は採用ブランディングを早くから導入し、最先端の採用活動を進めている会社です。採用ブランディングを継続していることで、採用の理想形、リファーラルのサイクルを見事に実現しています。 2019年は7人の採用のうち3人がリファーラルでした。採用の長期的メリット、リファーラルサイクルが生まれるのも、採用ブランディングの特長です。 また、B社ではリファーラルの奇跡と同時に7人の内定を出し、7人全員が承諾。100%の承諾率を出しました。 ほかの企業の選考を離脱してまでB社へ来た人、300億円規模の一部上場企業を蹴って来た人。 不動産投資も不人気の業種ですが、大手企業を断ってまで第一志望となるのは、採用ブランディングにより理念が真っすぐに強く届いているからにほかなりません。 ■地方のホテルに海外の大学から応募者の奇跡 C社は全国でホテル事業や飲食業を展開している、創業90年を超える(当時)地方の老舗企業です。採用ブランディングを導入する前は、地元の私立大学を中心に採用活動をおこない、内定を出していました。ホテル事業の展開は順調で、全国30店舗超えも目前、ミャンマーなど海外へのホテル建設も決まり、会社の成長に人員数が追い付かない状況でした。 ところが、地元の学生は「ここから出たくない」という希望が強く、全国転勤、まして海外勤務などしたくないと内定辞退が相次いだため、採用方法を一新することにしました。 当時、現場の活躍社員を集めた採用チームから、自社の強みを抽出すると、 (1)地元で90年続く安定感。伝統と歴史。 (2)口コミで高い評価を受け、ヘビーユーザーが多数いる商品力。 (3)ホテルグループ、全国への出店ラッシュや海外進出などに見られる将来性。 の3つに集約されました。 採用したいターゲット像は、早稲田大学商学部卒で地元の高校でラグビー部出身。地元に帰って貢献したい気持ちと、グローバルに活躍したい気持ちのせめぎ合いの中で就職活動に邁進する姿をイメージしました。 東京の大企業で、グローバルに活躍することを目指すよりも、地元から目指したほうが早く海外で働くことにつながり、仕事を通じて「自分の世界」をつくってほしいという想いで採用コンセプトとスローガン、採用フローを決め、役割分担まで落とし込んでいきました。 C社では採用ブランディング後、内定を出した人数が明らかに増えています。また狙い通り、地元から他県の大学に進学した人を採用できています。地元に戻りたいという学生の気持ちにヒットしたわけです。 さらに顕著な変化は、2016年に導入してから、海外の大学からの応募者が出てきたことです。「地元から世界に」というグローバルな活躍を奨励する想いが、見事に結果に結びついたことを物語っています。 採用ブランディングのワークショップをした当初、メンバーには「首都圏や関西圏に進学した人が、本当に地元に帰ってきたいと思うだろうか」という懸念がありました。しかし、採用ブランディングの効用を信じ、臆することなく自社の理念や強みを基軸にしたコンセプトを採用にぶつけた結果、理想に近い学生を採用することができたのです。 ■1週間で6000人のエントリーの奇跡 埼玉にある従業員50人の専門商社D社を採用ブランディングさせていただいたときの話です。D社は働く人の主体性を重んじる会社で、やる気のある人は早くから活躍できるのが特徴でした。 とにかく社長との距離が近く、中期経営計画の策定を社員に任せるほど懐の深い社長。そこまで主体性を重視していることがD社の強みでした。「主体性をとにかく重んじる」という強みから、コンセプトをつくり、採用スローガンは「あんたの商社」に決定。 コンセプトにふさわしい採用フローを考えた結果、採用フローを自ら設計できるという形にしました。採用フローから主体性を発揮してもらおうという狙いです。題して「あなたが選ぶ採用フロー」。 ・説明会に参加 ・飲み会に参加 ・経営会議に参加 ・社長のかばん持ち 自分が参加したい選考形態を、ここから選べるというものです。 同時に行われる1次面接も、HPに掲載されている先輩から、自分が面接してほしい人を選べるという形をつくりました。 そして、リクナビの特集記事にも出稿し、注目を集めました。その結果、1週間で6000人がエントリー。掲載初日、D社の採用担当の方から、「深澤さん、1日で500人以上応募がきているのですが、どうしたらいいですか!?」と、困惑の電話がかかってきたほど大成功の採用フローとなりました。 当時採用担当者は1名だったため、6000人のエントリー対応にアタフタ。社長は嬉しい悲鳴で、当初は1、2名採用できればいいと考えていたところを、その年は5名の採用を決めました。採用フローがしっかりコンセプトに紐づいていたので5名とも理想の人材でいまやエース社員として働いています。 深澤了 ブランディングディレクター・クリエイティブディレクター 【関連記事】 ■リクナビ・マイナビに頼らない、中小が勝てる「採用ブランディング」の極意 (深澤了 ブランディングディレクター) https://sharescafe.net/62987486-20260205.html ■「地獄への道は親の愛情で舗装されている」受験トラウマを負った医師の正直な思い (蓮池林太郎 医師) https://sharescafe.net/62970196-20260129.html ■「教育」という凶器で我が子を痛ぶらないために親が持つべき「全体最適」の受験戦略 (蓮池林太郎 医師) https://sharescafe.net/62967661-20260128.html ■110万円の家賃を払う板野友美さんとヤクルト高橋奎二さんの判断が正しい理由。(中嶋よしふみ ファイナンシャルプランナー) https://sharescafe.net/62674731-20250930.html ■世帯年収1560万円の共働き夫婦は、9540万円の湾岸タワーマンションを買えるのか? その1・生活費は年間800万? (中嶋よしふみ ファイナンシャルプランナー) https://sharescafe.net/61186482-20240125.html ■プロフィール 深澤了 ブランディングディレクター・クリエイティブディレクター 早稲田大学商学部卒業後、山梨日日新聞社・山梨放送グループに入社。広告代理店でCMプランナー/コピーライターとして活躍。株式会社パラドックスを経て、2015年にむすび株式会社を設立。 ブランド戦略からプロモーションまで一気通貫でサポートし、これまで1000社以上の採用活動に携わる。従来、「企業」「商品・サービス」のみだったブランド論に「採用ブランディング」という新理論を構築し、多くの企業の採用成績向上に貢献。早稲田大学ビジネススクール修了(MBA)。著書に『どんな会社でもできるインナー・ブランディング』(セルバ出版)など、ブランドに関する書籍・執筆多数。 公式サイト https://www.musubi-inc.co.jp/member/fukasawa/ シェアーズカフェ・オンラインからのお知らせ ■シェアーズカフェ・オンラインは2014年から国内最大のポータルサイト・Yahoo!ニュースに掲載記事を配信しています ■シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家の書き手を募集しています。 ■シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家向けに執筆指導を行っています。 ■シェアーズカフェ・オンラインを運営するシェアーズカフェは住宅・保険・投資・家計管理・年金など、個人向けの相談・レッスンを提供しています。編集長で「保険を売らないFP」の中嶋が対応します。 |


