![]() この記事では、著書『人が集まる中小企業の経営者が実践している、すごい戦略 採用ブランディング 新版』(深澤了・WAVE出版)から、採用ブランディングにおける「理念」の重要性を中心に、再編集してお届けします。 ■採用にはブランディングが必要になる コロナ禍以降、新卒採用は大手企業を中心に募集を増やしています。リクルートワークス研究所が行っている新卒採用見通し調査では、コロナ禍以降、毎年10%〜15%の企業は前年よりも募集を増やすと回答しています。採用難を見越して、多くの企業が内定出しの数を増やしていると予測されます。 既存の採用形式の選考では、他社との差別化は困難になり、集まった母集団の中から選ぼうとしても、そもそも母集団が集まらないという状況になっています。 今後、労働人口の減少が加速すれば、人材の獲得はますます難しくなり、パイの取り合いは一層激しいものになります。メディアを中心とした採用活動が成り立っていた企業も苦戦を強いられる状況になるはずです。これから来る時代に向けて、今こそ既存の採用フローを見直すべき時期なのです。 そこでポイントとなるのが「採用ブランディング」という考え方です。 「ブランディング」という言葉を耳にしたことがある方は多いでしょう。なんとなく知ったつもりでいたけれど、実はよくわからないという方も多いと思います。採用ブランディングをお話しする前に、「ブランディング」について整理しておきましょう。 ブランドとは「焼印をつけること」を意味するburnedからbrandという言葉が生まれたとされています。放牧している家畜が自分の所有物であることを示すために、自製の「焼印」を付けていた歴史から、「識別するためのしるし」という意味を持つようになりました。 商品や会社の希少性、信頼性を認知してもらうための証がブランドであり、そのブランドを形成するために必要な考え方がブランディングです。 ブランディングは「コピーやデザインが媒体間で統一されたプロモーション」と捉えられている傾向がありますが、これは本来の意味とはずれています。デザインをプロモーションするのはブランディングの一側面でしかありません。 ブランドをつくるためにはどうしたらいいか、そのための施策や考え方などすべてを指した言葉がブランディングなのです。 ブランディングという概念があるのは、企業は継続性を持たなければいけないからです。定期的に売上を上げ、継続性のある会社として存続させる。そのために、自社が提供する商品やサービスがほかとは異なる価値を持ち、顧客の信頼に値する証として「印」をつけることは、長きに渡って差別化され、認知度を高めるうえで極めて有効な手段だからです。 「企業は人なり」――かつて松下幸之助が言ったように、会社を存続させるための最たる要因は“人”ですから、会社存続は採用にかかっています。採用こそ中長期的な成果が求められるものなのです。 「人が入ったからいいよね」と一過性の仕事と捉えてしまうのは大問題。採用した人が活躍し、会社の質が向上し、業績アップをもたらし、認知度もアップ、一層よい人材が入社する、といった好循環を起こす採用でなければなりません。 継続的発展をもたらすために、採用にこそブランディングが必要なのです。正しい理解と方法によってブランディングを採用に応用できれば、規模や知名度にかかわらず、採用を成功させることができます。 採用ブランディングとはまさに、本質的なブランディングを採用シーンで実践するための考え方であり、具体的に実行するための方法論にほかなりません。 ■採用活動のベースは「理念への共感」 「とにかくたくさんの人を集めてくればいい」「必要な人数を採用できればいい」――採用とはそういうものではありません。とくに正社員の採用とは自社の発展を共に実現する“同志”を見つける作業なのです。 しかし、いきなり同志になる人は少ないでしょう。まして知名度のない会社ではなおさらです。まずはファンになってもらい、自社のことをよく知ってもらう必要があります。 会社のファンになってもらうには、共感を呼ぶ想い=理念が必要になります。理念とは、会社がなんのために存在し、社会に対して何をするのかが表されたものなのです。 理念が必要と言いましたが、新しくつくりだしましょうということではありません。会社の始まりは、創業社長の熱い想いあってのもの。言語化されていなくても、どの会社にも必ず理念があるのです。そこを改めて社員全員が再確認し、理念を前面に出した採用フローを組み、理念に共感し、ファンが増えていく採用方法を構築していく。それこそが、「同志発掘」という本来の目的を実現する本質的採用です。 採用ブランディングでは、そのために理念を深掘りし、応募者が理解できる採用方法に落とし込み、伝え続けることを徹底して行っていきます。 ■理念を前面に出せば採用競争に勝てる ブランド論の第一人者であるケビン・レーン・ケラーは、ブランドを形成するには「強く・好ましく・ユニークな」イメージが重要だと述べています。採用もまた、応募者の頭の中につくられるイメージによって結果が大きく変わります。 採用の目的は、会社を共に発展させる同志を見つけること、そして同志とはまずはファンであり、理念に共感している人であると前述しました。つまり、採用を成功させるための「強く・好ましく・ユニークな」ブランドイメージは「理念」を基軸につくられていくべきなのです。 創業者の想いが詰まった理念は唯一無二のものです。理念を徹底的に追求して、きちんと伝わっていく採用フローならば、必ず差別化が起こり、会社が求める人材を獲得できるのです。 社長を筆頭に、採用に関わる社員全員が理念を共有し、理念に基づいて「自分の言葉で語れる」状態をつくることが成功への近道。理念共感採用の第一歩となります。 日本マクドナルドの大赤字を3年でV字回復させた功績を持つ、日本マクドナルドホールディングス社長兼CEO(当時)のサラ・L・カサノバ氏は、まさに自身が理念に惚れこんで入社し、会社を救うほどの活躍人材となった好例です。 カナダの小さな町で生まれ育ったカサノバ氏は、地元にはないマクドナルドへ行くのが何よりも楽しみな子だったそうです。 大学院で入りたい会社についての課題論文では、マクドナルドカナダの社長に何回もアポを取って会ってもらい、インタビューしたほどの大ファンぶり。マクドナルドが働きたいと思った唯一の会社だった彼女は、夢を叶え見事な活躍を果たし続けています。 カサノバ氏をここまでのファンにしたのは、創業者レイ・クロックが大切にしていた理念「クオリティ(Q)、サービス(S)、クレンリネス(清潔さC)」がマクドナルドに体現されていたからでした。 清潔でモダンで、笑顔がある空間。そこに魅力を感じ続けられたのはカサノバ氏だけではありません。ファンが減少した理由は、「価格を強調したプロモーションが増え、お店の楽しさやQSCのバランス崩壊でマクドナルドらしさを失っていたことにある」と気がついたカサノバ氏は、理念に立ち返るため、当時の全従業員12万人のトレーニングを開始。徹底した理念の浸透を図りました。 理念に基づいてプロモーション、お得なメニューの復活、国内約2900店舗の92%を改装するなど、さまざまな施策を打ち出した結果、消費者から支持されて脅威の業績回復を成し遂げたのです。 理念が明確に打ち出されているからこそ、そこに触れた人はファンになるのです。とくに社長は自分の理念ひとつで、事業を興し継続してきた人ですから、想いを一番熱く語れる人物です。 理念共感採用を実現するには、キラーコンテンツとして、社長は重要な役割を担うことになるので、ぜひ前面に立ってほしいと思います。理念こそ、自社を唯一の存在にして、採用市場で勝つことができる奥義なのです。 深澤了 ブランディングディレクター・クリエイティブディレクター 【関連記事】 ■ブラックと評判のSE業界で新卒採用を0人から7人へと急増させた「採用ブランディング」の絶大な効果 (深澤了 ブランディングディレクター) https://sharescafe.net/62991785-20260207.html ■リクナビ・マイナビに頼らない、中小が勝てる「採用ブランディング」の極意 (深澤了 ブランディングディレクター) https://sharescafe.net/62987486-20260205.html ■「地獄への道は親の愛情で舗装されている」受験トラウマを負った医師の正直な思い (蓮池林太郎 医師) https://sharescafe.net/62970196-20260129.html ■110万円の家賃を払う板野友美さんとヤクルト高橋奎二さんの判断が正しい理由。(中嶋よしふみ ファイナンシャルプランナー) https://sharescafe.net/62674731-20250930.html ■世帯年収1560万円の共働き夫婦は、9540万円の湾岸タワーマンションを買えるのか? その1・生活費は年間800万? (中嶋よしふみ ファイナンシャルプランナー) https://sharescafe.net/61186482-20240125.html ■プロフィール 深澤了 ブランディングディレクター・クリエイティブディレクター 早稲田大学商学部卒業後、山梨日日新聞社・山梨放送グループに入社。広告代理店でCMプランナー/コピーライターとして活躍。株式会社パラドックスを経て、2015年にむすび株式会社を設立。 ブランド戦略からプロモーションまで一気通貫でサポートし、これまで1000社以上の採用活動に携わる。従来、「企業」「商品・サービス」のみだったブランド論に「採用ブランディング」という新理論を構築し、多くの企業の採用成績向上に貢献。早稲田大学ビジネススクール修了(MBA)。著書に『どんな会社でもできるインナー・ブランディング』(セルバ出版)など、ブランドに関する書籍・執筆多数。 公式サイト https://www.musubi-inc.co.jp/member/fukasawa/ シェアーズカフェ・オンラインからのお知らせ ■シェアーズカフェ・オンラインは2014年から国内最大のポータルサイト・Yahoo!ニュースに掲載記事を配信しています ■シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家の書き手を募集しています。 ■シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家向けに執筆指導を行っています。 ■シェアーズカフェ・オンラインを運営するシェアーズカフェは住宅・保険・投資・家計管理・年金など、個人向けの相談・レッスンを提供しています。編集長で「保険を売らないFP」の中嶋が対応します。 |


