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さまざまな業種で倒産件数過去最多のニュースが飛び込んでくる昨今、資格を取得して独立しようと考える人は増える一方です。しかし、経営コンサルタントで士業(特定行政書士)でもある横須賀輝尚氏によれば「資格を取れば人生安泰」という神話は20世紀で終わり、「努力次第で成功できる」というのも正しくないといいます。氏の著書『資格起業家になる!成功する「超高収益ビジネスモデル」のつくり方』(日本実業出版社)から、正しい「資格起業法」について再構成してお届けします。

資格起業家になる!
横須賀てるひさ
日本実業出版社
2006-12-25


■資格業にありがちな理由の欠如
どんな仕事でも、なぜその仕事をやるのか、常に明確にしておく必要があります。これは一貫性と似ていますが、事業を行う理由、つまりは大義名分です。資格業が稼ぐことにためらうのは、この大義名分に欠けているからでもあります。

はじめからビジネスで大きく稼ぎたいと思っているわけでもなく、また広めたい商品があるわけでもない場合、そして起業自体が大きな動機のような場合は、さまざまなところで迷いが出てきてしまうのです。

資格業以外の業種は、画一化されていないビジネスが多く、柔軟な発想があり、一貫性も大義名分もある商品を扱っています。

しかし資格業は、最初から業務の内容が決められているので、その仕事に大義名分がありません。

 「中小企業を活性化したい」
 「起業家の支援をしたい」
 「円満な相続をお手伝いしたい」

このように、何でも構いません。必ず大義名分をつくって、一貫性を持つことが重要です。そうすれば、あなたが資格業をしていることが、客観的にもわかりやすくなるのです。大義名分と一貫性があれば、どんな状況であれ、お客さまに支持され、応援されます。

■資格起業の大きな落とし穴
資格業で起業する人の多くは、「起業ありき」と言ってよいでしょう。なぜ資格を取るかというと、「独立したいから、独立に有利になるから」と考えています。もちろん、スキルアップのためもあるでしょうが、最終的に自分でビジネスをはじめるために、資格を取ることが多いと思います。

しかし、資格業で起業するということを、今一度よく考えてください。

「資格がないとできないことがあるわけだから、資格のない人より有利なのでは?」

実は、これが大きな間違いなのです。「資格で起業」するということは、「仕事の幅を極めて狭くしてビジネスをはじめている」ことにほかならないのです。

資格業でビジネスをはじめると、資格業の仕事以外は一切しなくなるのです。仕事の幅を広げているようでいて極めて狭くしているのです。

これを「職域の問題」と呼んでいます。

たとえば、「起業に関すること」をテーマにそこから考えられるビジネスは何かを考えてみましょう。コンサルティング、セミナー、起業家向け教材制作、ビジネスパートナーのマッチングビジネス、各種ビジネス向けのデスク、イス、法人用スマホの販売など、挙げればキリがありません。

ところが、行政書士を例に考えると、「会社の設立手続き」か、あってもひとつか2つの許認可手続きです。このように、資格業での起業は自らの首を絞めてしまっているのです。

仕事の幅が増えたような錯覚をしてしまいますが、実は狭くなっていることに気がつかなければなりません。ソニーが「ラジオだけしか売らない!」と言っているような感じです。どうでしょう、違和感がありませんか?

まずこの自ら職域を狭めているという点を理解しましょう。

■「販売型」と「受注型」
さらに、資格業の仕事の性質も押さえなければなりません。

私は、世の中のビジネスを大きく2つに分けています。販売型ビジネスと受注型ビジネスです。簡単にいえば、「ものを売って完結するビジネス」と、「注文を受けてから何かを制作し、それを納品するようなビジネス」です。

前者は時間がかからず、自分でコントロールしやすいビジネスです。なにより同時にたくさんの数をさばけるので、売上も上げやすくなります。一般の物品販売をイメージすればよいでしょう。

これに対して後者は、サービスの内容によって、営業のしやすさは違いますが、時間も、そして労力も大幅にかかるものが多いのです。

資格業は完全に受注型ビジネスです。時間と労力がかかります。また、お客さまに100%決定権があることを知らなければなりません。

たとえば、受注型ビジネスとしてウェブサイトの制作を仕事にしている場合はどうでしょう。「私が制作すれば、毎月100万円以上の売上が得られます」と営業し、実際にそのサービスを提供できることがお客さまに理解されれば、受注できる可能性はあります。営業力が高ければ高いほど、サービスの受注が増えるのです。

ところが、資格業の仕事は違います。会社をつくる、営業許可を取る、相続手続きをする、社会保険の手続きをする、決算申告をする……どんなに営業力が高くても、お客さまのタイミング次第なので、仕事が獲れないときは100%獲れません。営業力は関係ないのです。

建設許可や産廃業の許可、相続手続きなど、行政書士の仕事はたくさんあります。しかし、おそらく他の追随を許さない実績を誇る営業のプロが、世界一魅力的なプレゼンテーションをしたとしても、仕事は獲れないと思います。それは、アピールされた側に許可を取る必要がない、あるいは相続手続きをする必要がないからです。

そのため、どんなに営業力を持っても、獲れないときは獲れないのです。そういった仕事の獲り方は、砂漠で一粒のダイヤを見つけるようなものです。

■実はハードルが高い「資格を取って独立」
繰り返しになりますが、資格業の仕事は、お客さまのタイミングに左右され、営業力で勝ち取れるものではない、受注型で、時間のかかる極めて稼ぎにくいビジネスなのです。

起業ありきだったビジネスの素人が、受注型で仕事の獲りにくいビジネスをはじめるから、ほとんどの資格業の人が食べていけないのです。そもそもビジネスの素人にとっては不利なのです。

起業して1年、月商がはじめて100万円を大きく突破したとき、私は収入が上がったのでうれしかったのですが、こうも思ったのです。

「来月はどのくらい稼げるかわからないし、受注に比例する忙しさ。そんな状況で人を入れるのは相当なリスク、なんて稼ぎにくいビジネスなんだ」

それまで、資格業の仕事を獲るために頭をフル回転させてきたわけですが、ここで資格業の限界に気づいたのです。そして考えに考え、資格にこだわってこだわって、最終的に資格にとらわれずに考えることをはじめました。

「資格業の仕事を獲ることにこだわらず、後から資格業の仕事が入ってくる仕組みでもいいのではないか?」

そう考えるようになったのです。「稼ぎにくいところより、稼ぎやすいところからはじめる」。この発想から、私は法定業務に縛られず、自分に固有のスキルやキャリアを活かすことのできる、資格起業家という道に辿り着きました。資格業であっても、大事なのは「なぜその仕事をしているか」なのです。


横須賀輝尚 パワーコンテンツジャパン株式会社 代表取締役 特定行政書士


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■プロフィール 横須賀輝尚 パワーコンテンツジャパン株式会社 代表取締役 特定行政書士
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士業専門の経営コンサルタント。パワーコンテンツジャパン株式会社 代表取締役、特定行政書士。Gensparkインダストリーアンバサダー。
2007年に日本では初めてとなる士業向けに経営スクール「経営天才塾(現LEGALBACKS)」を創設し、2023年現在、全国3000名以上の士業から相談を受け、その相談数は優に2万件以上を超える。
主な著作に「会社を救うプロ士業 会社を潰すダメ士業」(さくら舎)、「資格起業BIBLE」(技術評論社)などがあり、25冊20万部超の著者。2023年から士業のための生成AI・ChatGPT活用研究を開始。
最新刊「『ムダ仕事』も『悩む時間』もゼロにする GPTsライフハック」を2024年11月に技術評論社より刊行。週刊ダイヤモンド、毎日新聞などメディア掲載も多数。

公式サイト:https://yokosukateruhisa.com/
X:https://twitter.com/yokosuka_ai  @yokosuka_ai
YouTube:https://www.youtube.com/@40lawyers50/

資格起業家になる!
横須賀てるひさ
日本実業出版社
2006-12-25


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