![]() しかし、「1年に1回だけ展示会に出展する営業方法こそ、企業が儲かる体質に変わる秘策だ」と語るのは、展示会営業の専門家で中小企業診断士の清永健一氏。展示会をきっかけに、会社が根本から「儲かり体質」へと生まれ変われるのはなぜなのか、氏の著書『展示会のプロが発見!儲かっている会社は1年に「1回」しか営業しない!』から再構成してお届けします。 ■売上・受注アップを超える展示会営業の成果 展示会に出展する際、多くの企業は「名刺を何枚獲得できるか」「そこから何件の引き合いが来るか」といった目先の数字だけを追い求めがちです。しかし、展示会営業の本質は「準備・当日・フォロー」を一つの流れとして捉え、受注までの動線を一気通貫で設計することにあります。そうすることで、企業を儲かる体質に変えることができる、これこそが展示会営業がもたらす真の果実なのです。 このプロセスを正しく実践している企業はまだ少ないのですが、きちんと取り組めば確実に成果が出ます。単なる売上アップや新規顧客獲得だけではなく、展示会をきっかけとして「仕事に取り組む社員の顔つきが変わった」、「組織の壁が取り払われて意思疎通がスムーズになった」といった、会社が儲かり体質に変わるための土台が作られていくのが、展示会営業なのです。 ■展示会出展で起こる営業スタイルの劇的進化 それでは、展示会営業に取り組むことで起こった、具体的な変化を見てみましょう。固有名詞は架空のものに変えていますが、ご紹介するのは私のクライアントが体験したリアルな事例を組み合わせたものです。 株式会社名井内の鈴木営業部長は、「顧客の要望にいかに素早く、安く応えるか」が勝負だと考えていました。しかし展示会営業を経験したことで、その姿勢は以下のように180度変わることになります。 (1)専門家としての自覚 鈴木部長の名刺には、肩書として単に「営業」と記載されていました。しかし、たくさんの企業が集まる展示会ではアピール力が弱いため、「電子部品コンサルタント」という肩書に変えてみたのです。 最初は照れくささや不安もありましたが、自らをコンサルタントと定義したことによって、顧客に対して堂々と「教える人」のスタンスで臨めるという効果が生まれました。結果として、顧客の言いなりになるのではなく、こちらから積極的な提案を行うようになり、最終的にはより大きな金額の商談へと発展させられる力が身についたのです。 (2)共感力アップで顧客との関係性が変わる さらに展示会当日、鈴木部長は自社の「20年後に実現したい未来」を語るプレゼンを行いました。これは展示会営業における重要なポイントの一つで、商品だけではなく企業の掲げるミッションやバリューをアピールすることによって、その志に共感する顧客とパートナーのような関係性を築く「志プレゼン」という手法です。 最初は、大言壮語ではないかといった抵抗感もありましたが、実際にマイクを握って語り始めると、多くの来場者が足を止めて耳を傾けてくれました。商品説明を受けた顧客からは、商品を気に入ってもらえただけではなく、企業経営そのものを応援する声もかけてもらえて、新しい仲間が増えたような気持ちになったそうです。またこの経験は、鈴木部長だけではなく、出展に参加した全員に「自社の中小企業としての価値」を再認識させ、全体のモチベーションを飛躍的に高める結果につながりました。 ■部門間の壁を壊して経営力アップ 展示会営業の波及効果は、営業部門だけにとどまりません。総務経理部長の高杉氏や開発製造部長の五十嵐氏の視点からも、驚くべき変化が語られています。 (1)セクショナリズムの打破 製造業では珍しくないことだと思いますが、株式会社名井内でも製造部と営業部が対立関係にありました。妥協せず品質の良い商品を作りたい製造部と、とにかく早く商品を顧客へ届けたい営業部は、信念の違いによる衝突を繰り返していたのです。しかし、展示会という一つの目標に向かってプロジェクトチームを組んだことで、変化が起きます。 製造部長の五十嵐氏は、展示会出展で顧客と直に接した経験をきっかけに自ら顧客の声を聞きに行くようになり、良いものを作るだけでなく「顧客がなぜそれを必要としているか」を深く考えるようになったのです。これにより、製造現場が営業の要望を突っぱねるのではなく、共に解決策を考える協力体制が築かれました。 (2)採用難の解消 そして、いま業種を問わず中小企業が最大の悩みに位置づけている採用についても、展示会で驚くべきことが起こりました。ブースの活気を見た若い人から、「採用募集はしていないのか」と声がかかったのです。このことで高杉総務経理部長は、顧客が熱心に商品説明を受け、熱いプレゼンに耳を傾ける様子を多くの人に見てもらえる展示会は、最強の採用ツールにもなりえると考えるようになりました。 さらに感動的なのは、高杉部長が展示会に家族を呼んだ際、12歳の娘から「将来パパの会社で働きたいかも」と言われたエピソードです。我が子に自信を持って勧められる会社になれる、この会社で働くことを誇りに思える、これこそが数字には表れない展示会営業の最大効果と言えるかもしれません。 (3)投資対効果の高い教育 企業では様々な研修が行われていますが、多くの場合は会議室の中だけで終わってしまいます。しかし、展示会営業を目的とした研修は、実際の展示会という本番があるためか、取り組む社員の目の色が違うのです。期間の限られた出展を成功させるという目標は非常に明確で、キャリアの浅い若手にも力の入れどころが分かりやすいのでしょう。一度コンサルティングを受けて手順をマスターすれば、次回からは自社だけで取り組むことができますので、育成ノウハウの蓄積手段としても優れています。 ■展示会営業は希望をもたらす このように、株式会社名井内は展示会への挑戦を通じて、わずか半年で5社の新規顧客を獲得しました。しかしそれ以上に価値があるのは、土台が強化された自社の未来に、社長や社員がワクワクしているという状態です。展示会営業は単なる営業手法ではなく、顧客目線の思考力が強化され、社員のセルフイメージが高まり、部門間の壁を越えた一体感が生まれ、優秀な人材の採用や定着にもつながります。これらの要素が複合的に絡み合うことで、会社の体質そのものを変えることができるのが、最大の特徴なのです。 この変化を例えるとしたら、文化祭の準備のようなものでしょう。普段は別々の教室で過ごし、接点の少なかった生徒たちが、「最高の出し物を作ろう」という一つの目標に向かって放課後に集まり、議論し、工夫を凝らす。その過程で、それまで知らなかった仲間の良さに気づき、クラス全体が一つになっていく。そして当日、来場者の歓声を聞いたとき、全員の顔に達成感が溢れる。展示会営業も同じように、ビジネスという舞台を通じて会社を一つのチームに変える魔法のような力を持っているのです。 清永健一 株式会社展示会営業マーケティング代表取締役 中小企業診断士 展示会営業(R)コンサルタント 【関連記事】 ■ひと手間加えるだけで4500倍伝わる、中小企業の最新メルマガ術 (清永健一 中小企業診断士) https://sharescafe.net/63019125-20260218.html ■展示会をノルマ地獄から熱狂ゲームへ変えるゲーミフィケーション戦略とは (清永健一 中小企業診断士) https://sharescafe.net/62936415-20260116.html ■来場者から「ぜひ来てください」と言われてアポにつながる展示会後のフォロー術 (清永健一 中小企業診断士) https://sharescafe.net/62863222-20251217.html ■110万円の家賃を払う板野友美さんとヤクルト高橋奎二さんの判断が正しい理由。(中嶋よしふみ ファイナンシャルプランナー) https://sharescafe.net/62674731-20250930.html ■世帯年収1560万円の共働き夫婦は、9540万円の湾岸タワーマンションを買えるのか? その1・生活費は800万? (中嶋よしふみ ファイナンシャルプランナー) https://sharescafe.net/61186482-20240125.html 【プロフィール 清永健一 株式会社展示会営業マーケティング代表取締役 中小企業診断士 展示会営業(R)コンサルタント】 神戸大学経営学部卒。展示会を活用した売上アップの技術を伝える専門家。支援先企業からは、集客・受注・売上が大幅に増加したと好評の声が多数あがる。「日経MJ」、「NHKラジオ総合第一」など取材多数。支援実績は1300社超。ほぼ毎週東京ビッグサイトに出没している。 NHKラジオ総合第一で展示会の未来について言及するなど、展示会業界活性化にも尽力。展示会活用に関してテレビ等出演のほか、行政、公益法人、金融機関などで講演多数。 著書『最新版 飛び込みなしで新規顧客がドンドン押し寄せる展示会営業術』、『展示会のプロが発見!儲かっている会社は1年に1回しか営業しない』など合計7作はいずれもamazon部門1位を獲得。奈良生まれ、東京在住。 公式サイト https://tenjikaieigyo.com X:https://x.com/tenzikai @tenzikai シェアーズカフェ・オンラインからのお知らせ ■シェアーズカフェ・オンラインは2014年から国内最大のポータルサイト・Yahoo!ニュースに掲載記事を配信しています ■シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家の書き手を募集しています。 ■シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家向けに執筆指導を行っています。 ■シェアーズカフェ・オンラインを運営するシェアーズカフェは住宅・保険・投資・家計管理・年金など、個人向けの相談・レッスンを提供しています。編集長で「保険を売らないFP」の中嶋が対応します。 |



